無言で・・・病棟へ駆けだす、病室にはS君の名前が小さく表示されていて・・・
ふかく頭を下げられた奥さまは静かに 様子を話し始められた。
ベットにじっと横臥しているS君の姿が目にやきついた
「おい、S君 S君 S、S、
俺たい 俺! 俺! しっかりせんか
約束しとったろ? 帰ったらまた囲碁ばするけんって 約束しとったろが・・・」
「・・・・・・」
奥さまがS君の耳元に
「お父さん、Aさんたちの来なはったよ、お父さん、お父さん・・・」
わたしはそばで立ちすくんだままだ
ゆっくりと少し布団をめくられて どうぞと目でうながされた
夫は細くなった肩を両手でだいてS Sと大きな声でよんだ
わたしはそっと右手にふれた・・・
はじめてふれた手は 暖かい、ぬくもりがあった
しかし、握り締めても反応はなかった 細くて やわらかい手・・・涙があふれる・・・
と、動いた すこし目が 瞼が少しだけ 見開かれたような気がした
三人 は目をあわせてうなずいて・・・
左目頭にうすい涙が キラリとみえた
「わかったようですよ」と奥様がうれしそうにつぶやかれて・・・
「心配すんな、俺はまっとるけんね、S・・・」
そして 四月三日、夫の無二の友、 S君は とうとう一人で逝ってしまった
2007年 5月22日と 2007年5月23日にアップしました ”学生時代”・・・2編
http://blog.goo.ne.jp/himawari_008_may/e/7453450244e92a2d5132d1bba15a13c1
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その大切な 友人がとうとう亡くなりました。
4月5五日
清く晴れ渡った青空のもとへ ハラハラと風もないのに散りゆく
さくらのはなびらをお伴に 静かにゆっくりと旅立って逝きました。
S君よ 永久に さようなら・・・享年71才
・・・5年間の厳しい闘病生活、病名もよく分からずまた
治療法も見つからないまま もと看護師だった奥さまの手厚い看病と
子どもたちと孫3人、そして周りの方々のやさしいいたわりの中で
S君は与えられた命を 完全燃焼して お星様になりました。
いま わたしたちは 安らかに お休みなさいと手をあわせるばかりです。
残されたご家族様のお幸せを祈りながら…
ひとりで夜空をながめました、星は見えませんでしたが明るい月の夜でした
ゆっくり眠ってくださいね・・・