
『改めて漢字を知る』シリーズ その7。漢字には偏(へん)と旁(つくり)に分けられるケースが多い。その中で偏はカテゴリーを表すケースが多く、例えば魚偏は寿司屋の湯のみに描かれるほど細かく魚の種類を表す。

今回は『けもの偏』について考える。『けもの偏』は魚偏と違い動物であっても付かないものが意外に多い。例えば十二支に出てくる動物を取ってみても犬を含めても猿と猪の3つしかない。(鼠、牛、虎、兎、龍、蛇、馬、羊、鳥)

その理由はあくまで推測だが、『けもの偏』はもとは『犬』から来たもののため、家畜にはあまり使われないのではないか。先ほどの3つ以外には獅(しし、ライオン)、狼、狐、狸、猫、獺(かわうそ)、狒々(ひひ)、獏(ばく)、狢(むじな)などが自然に暮らしている動物が主なものである。

もちろん、犬を表す字として狛(こま)、狆(ちん)、狗(いぬ)などもあるが。

一方で獰猛な動物でも虎、豹(ひょう)、象、鼬(いたち)、犀(さい)などには『けもの偏』が付かない。

また、『けもの偏』の漢字はかなり危ない、ずるいなどの表現にはよく使われる。典型が狡猾、獰猛、狼狽などで熟語で『けもの偏』が付くものにはあまりいい意味がない。ほかにも犯罪、猜疑心、狙撃など物騒な表現にはよく登場する。
やはり、『けもの偏』は人の心を持たないといった意味で使われることが多いのかもしれない。
