先日のニュースで中央線阿佐ヶ谷駅のホームから目の不自由な方が転落し、電車で亡くなったという痛ましい事件を取り上げていた。以前、東京メトロ銀座線外苑前駅でも同様な事件があったが、その後、ホームドアが取り付けられた。さらに鉄道会社では徐々にホームドアを付けるが白杖を見たら周囲の人が助けてほしいとコメントを出している。
よく駅のホームや車内で痴漢や不審物があった場合には『駅職員、警備員に知らせて欲しい』とアナウンスしてはいるが、日中には彼らの姿を見ることが殆どない。もちろん、そういうシュチュエーションならば協力はしたいと考えているのではあるが。
今日、ご紹介したいのは駅員不足の話ではなく、通勤の途中に見るある行為についてである。井の頭線渋谷駅の改札口を出て、地上に降りる長いエスカレーターがある。通勤時間には乗り口がいつも混雑し、割り込まれたり、割り込んだり、トラブルが絶えないポイント。その場所でほぼ毎朝6時半過ぎに目の不自由な若い女性をエスコートする老婦人のことである。
あくまで想像だが、この女性は白杖を持つようになってからは日が浅いようでやたら杖で地面を強く叩く。山手線方向から歩いてくるのが音だけでわかる。井の頭線から降りてくらる通勤客で電車が到着する度に4列くらいが1列になるため、通常でも人をかき分けて乗るのが難しい。
そうした中で老婦人は毎朝女性の到着を待って、エスカレーターに乗るところまで連れて行き、他の乗客にぶつかることなく乗せてあげている。しかし、老婦人はエスカレーターには乗らないのだ。始めて見た時はたまたまかと思ったのだが、次の日もその次の日も老婦人のアシストは続いていたのだ。
側から見ても2人は知り合いではないようで毎朝若い女性はいつもお礼を言っている。わずか数分のことだが、こうして人のために小さな親切を継続できる考え方を大切にしたい。そうすればギスギスした世の中が少しでも良くなり、我先にと考えなくなるだろう。緊急事態解除後は私が1本早い電車に乗るようになったため、この風景は見ることがないが、多分今も変わらず続いているのだろう。