世田谷パブリックシアターで三谷幸喜演出の舞台「エノケソ一代記」を観た。
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喜劇王と言われていたらしい榎本健一は、戦中から戦後にかけて活躍していた人で、リアルタイムで見たり聞いたりしたことはないが、♬ラーメチャンタラギッチョンチョンデパイノパイノパイ♬でおなじみの「東京節」や、♬俺は村中で一番モボだと言われた男♬ではじまる「洒落男」など、聴いたことのある歌は沢山ある。
市川猿之助が愉快な踊りとともに、これらの歌を歌う場面がいくつもあって、とても楽しい芝居だ。流石にその場で踊りながらの歌唱は厳しいようで、あらかじめ録音した自分の歌を再生していたように見受けられた。咎めるつもりではなく、むしろ録音の方が、スピーカーを通して劇場全部に歌が響くのでよかったように思う。
エノケンこと榎本健一の真似をして各地を巡りながら興行するエノケソ一座。「ン」と「ソ」の違いは、本物に対する敬意と、あわよくば間違えて客がたくさん入ってくれればという思惑と、追及された時の逃げ道などが入り混じった目的のようだ。
座長エノケソを演じる市川猿之助、その妻役の吉田羊、エノケソ一座を迎える劇場や学校の人たちをひとりで次々に演じる山中崇など、出演者全員の演技が、とても生き生きとして楽しそうだった。喜劇王の芝居らしく笑う場面がたくさんあるが、やはり喜劇の王道に倣って人情劇でもある。
どうでもいいことだが、ひとつだけ気になった点がある。終演時の横に並んでのお辞儀で、吉田羊さんは膝を曲げてお辞儀をしていた。着物姿の立礼は膝を曲げてお辞儀するものなのだろうか。そういえば、映画「小さいおうち」の黒木華も、同じお辞儀の仕方をしていた。お辞儀の仕方を云々すると韓国文化の好き嫌いにも繋がったりするので深く追及するつもりはないが、気になったので備忘的に記しておく。