映画「Journey to the Safest Place on Earth」(邦題「地球で最も安全な場所を探して」)を観た。
驚いた。原子力発電の高レベル放射性廃棄物の捨て場所を探しているのは日本だけだと思っていたが、実は世界各国が探しているのだ。そして更に驚くのは、多くの国が探しているのに、捨てる場所が一箇所も見つかっていないということである。
捨てる場所の条件としては、地震がない、地下水がない、地盤が粘土質で安定しているなどがある。国際原子力機関 IAEA が決めた基準だ。地球上にはこれらの条件をすべて満たす場所が殆どない。その上、確認のためには何十年もかかる数多くのボーリング調査が必要だ。唯一条件を満たすと思われたオーストラリアの南は、オーストラリアの強い反発で断念。最終廃棄場所が決まらない状態で、世界31ヶ国443基の原発が運転され、日々刻々と放射性廃棄物が生み出されている。
もうひとつ驚いたのは、世界各地に日本と同じような原子力ムラがあるということだ。原子力ムラというのは、原子力発電をリスクが多いと知りつつも推進してきた政治家、電力会社、通産省及び経済産業省の役人、それを後押しする御用学者の集まりのことで、いずれの立場の人々も原発で利益を得ている。同じ図式が各原発運転国に存在していて、原子力ムラの人たちはあくまでも原発を継続しようとしている。
ドイツではメルケル政権が福島第一原発事故を受けて脱原発に踏み切り、すべての原発を2022年までに閉鎖することを決めたが、既に生み出されている核廃棄物の処理には依然として頭を悩ませている。未曾有の大事故を発生させた当の日本はどうかというと、原子力ムラの力が強く、現在6基が運転している。つまり高レベル放射性廃棄物を生み出し続けている。
原子力発電は、登場したときから原子爆弾と同じような危険性があることは分かっていた。しかし人類はこれを制御できると考えた。鉄腕アトムなどというキャラクターも生まれている。チェルノブイリや福島第一原発の事故以降の世界の人々の発電についての考え方は、反原発や脱原発に向かおうとする動きと、依然として原発を継続しようとする動きに二分された。継続しようとする人々は、増え続ける核のゴミの捨て場所について、未来に負の遺産を遺そうとしている訳だ。
日本の原発の初期に原発を4基も誘致した敦賀市の市長だった高木孝一が言った言葉をご存知だろうか。原発を誘致すれば国からの交付金と電力会社からの協力金がたんまり貰えることを踏まえて、次のように言ったのである。
「50年後、100年後に生まれる子どもがみんな片輪になるかわからないが、今の段階ではやったほうがよいと思う」
現在の原発推進派の人々も、この無責任を受け継いでいる。