映画「ハケンアニメ!」を観た。
原作を知らないので、タイトルをもろに勘違いしてしまった。「ハケン」は「派遣」ではなく「覇権」であった訳だ。
アニメは世界に誇れる日本の文化だが、徐々にその中心が外国に移りつつある。アニメーターの収入は低く、中には中国からの仕事を受けている人もいると聞く。少し前までは日本が中国に仕事を出していたのに、逆転してしまった訳だ。
アニメーターは長時間労働が当たり前で、業務委託の請負契約だから労働基準法は適用されない。それでもアニメが好きで、アニメの仕事に携わっていたい若者たちは、身を粉にして働く。
そのような状況を踏まえて本作品を観た。吉岡里帆が演じた主人公斎藤瞳はアニメ制作会社の正社員だから、時間外勤務手当などはきちんと支給されているものと信じるが、もしかしたら正社員という名の請負契約かもしれない。経団連会長を出したトヨタやキヤノンでも行なわれていた偽装請負だ。斉藤瞳はまさかそんなことはないと思うが。
さて本作品はひとことで言えば、青春お仕事ドラマである。周囲と衝突したり和解したりしながら主人公が成長し、それにともなって仕事の内容も充実していくという王道の物語だ。本作品には中村倫也演じる王子千晴というライバルが登場するが、それもお仕事ドラマにありがちである。
本作品がユニークなのは、それぞれのプロデューサーの奮闘が描かれていることだ。斎藤瞳の作品には柄本佑の行城、王子千晴の作品には尾野真千子の有科というプロデューサーがそれぞれいて、陰に陽に監督を支える。ふたりのプロデューサーぶりが対照的で、同じく対照的なふたりの監督とともに、四輪となって物語を進めていく。
監督ふたりの演技もよかったのだが、プロデューサーふたりの演技が更によかった。そのおかげで、単なるお仕事ドラマ以上の立体的な作品になっている。特に有科プロデューサーを演じた尾野真千子の演技は完全に主役を凌駕していて、実は有科プロデューサーが主人公だといってもおかしくないほど圧巻の演技だった。
本作品によって日本のアニメーターの実情が広く知られて、その立場が向上することを陰ながら願う。