映画「バービー」を観た。
普通のファンタジー映画ではないが、そんなに大した話でもない。男性社会をストレートに皮肉っているのだが、ストレートすぎてテーマに深みが感じられない憾みがある。
登場する地図がアジアの何処かの国に似ていると物議を醸しているようだが、観た感じでは、騒ぐほどのことではない。男尊女卑の傾向は、世界中でしぶとく残っている。自国が嗤われたと感じるのは、その人にそういう傾向があるからだ。
本作品は男尊女卑の社会をコメディとして笑い飛ばしてみせたかったのだろうが、あまり上手くいっていない。男尊女卑は歴史的に人類に刷り込まれた悪しき精神性であり、その根は深い。女性が勝てば解決するという単純な問題ではないのだ。
ライアン・ゴズリングの振り切った演技も、美貌について悩むセリフをマーゴット・ロビーが言うのは説得力がないという楽屋落ちも、ギャグとしては空振りだった。
とはいえ、マーゴット・ロビーの演技力は相変わらずピカイチで、リアルバービーという無理矢理な設定を力技で役にしたのには恐れ入る。ライアン・ゴズリングのケンはもっとシッチャカメッチャカな役だったが、バービーの相手役として堂々たる怪演ぶりである。この人は「ラ・ラ・ランド」でブレイクした感はあるが、実力は以前から十分で、どんな役もこなせる万能の俳優としてハリウッドで重宝されていると思う。
「ファシスト」呼ばわりされてバービーがショックを受けるシーンは、シュールではあるがシチュエーションコメディとしては一番面白い場面だった。マーゴット・ロビーは十分に美しかったが、日本人をはじめとする黄色人種から見ると、もち肌や肌理の細かさはない。一瞬で興醒めになる可能性もある。肌のアップのシーンはない方がよかった。