三無主義

 ~ディスパレートな日々~   耶馬英彦

映画「春に散る」

2023年08月26日 | 映画・舞台・コンサート
 映画「春に散る」を観た。
映画『春に散る』 公式サイト

映画『春に散る』 公式サイト

人は何度でも輝ける―二人の男の再起をかけた感動ドラマ『春に散る』2023年公開

映画『春に散る』 公式サイト

 瀬々敬久監督の作品は結構観ている。古い順に列記してみる。

「ストレイヤーズ・クロニクル」(2015年)
「64 ロクヨン」(前編・後編)(2016年)
「菊とギロチン」(2016年)
「8年越しの花嫁 奇跡の実話」(2017年)
「友罪」(2017年)
「楽園」(2019年)
「糸」(2020年)
「明日の食卓」(2021年)
「護られなかった者たちへ」(2021年)
「とんび」(2022年)
「ラーゲリより愛を込めて」(2022年)

 こうして並べてみると、表現者としての映画監督というよりも、映画の職人さんのイメージである。人の生き様、死に様と人間関係の機微といったところが、得意の範疇だろう。

 本作品はボクシング映画だから、ボクサーの心理については相当調べたと思う。試合中に相手の家族を気にするのは、集中力の欠如だし、何より相手に失礼だ。そんな態度で試合に臨むならボクシングなんかやめちまえと言いたくなるのも頷ける。

 L字ガードは、先般の井上尚弥vsスティーブン・フルトンのタイトルマッチで井上が採用したガードの形だったので、試合を見た人は思い出したのではないだろうか。それ以外にも、窪田正孝のトレーナーが山中慎介だったり、プロライセンスを持つ片岡鶴太郎が仲間だったり、横浜流星が実際にライセンスを取得したりする。このあたりはボクシング好きの好奇心も満たすと思う。
 なんだかんだとボクシングを研究して製作しているところが、流石に瀬々監督だ。ボクシングの基礎が下半身であることも知っているようで、パンチを当てるにはフットワークが必須だというシーンがある。横浜流星をやたらに走らせるのも同じ意味だ。井上尚弥の強さのひとつが、並外れたフットワークにあるのはよく知られていて、彼のステップインとバックステップは驚くほど速い。横浜流星のフットワークもなかなかのものだった。

 山口智子をスクリーンで久しぶりに見たが、この人だけ、違和感があった。ブランクのせいかもしれないが、演技が瀬々演出と食い違っているのだ。どうしてこの人を使ったのか、ちょっと意味がわからない。あるいは違和感を出したかったのか。それにしては不自然だった。

 片岡鶴太郎はとてもいい。やさぐれているけれども優しさを失っていない。その優しさは主演の佐藤浩市と横浜流星にも共通していて、作品の肝になっている。瀬々監督の作品には、優しさを失わない、優しさを取り戻すといったプロットが多いと感じる。本作品も例に漏れず優しさが溢れているし、ストーリーもいい。まったく飽きずに面白く鑑賞できた。

映画「ファルコン・レイク」

2023年08月26日 | 映画・舞台・コンサート
 映画「ファルコン・レイク」を観た。
映画『ファルコン・レイク』公式サイト|2023年8月25日公開

映画『ファルコン・レイク』公式サイト|2023年8月25日公開

映画『ファルコン・レイク』公式サイト|2023年8月25日公開

 しばらくは少女マンガみたいな印象だった。平凡で坦々としたストーリーだが、そこはかとなく青春の機微がある。そんな感じで鑑賞していたのだが、ラスト近くで若者たちが対岸に向けて泳ぎだすあたりから急に雲行きが怪しくなる。
 タイトルの「ファルコン・レイク」を何故か「ファントム・レイク」と間違って憶えてしまっていたのだが、はからずも間違いのタイトルの方が物語の真実に近かったのは、我ながら驚きだった。

 水死した若者の言い伝えがある湖。クロエの口からでまかせなのだが、幽霊のコスチュームを着て写真に映るバスティアンが妙に似合う。そのあたりが伏線だ。言い伝えはクロエの予言だったのだ。バスティアンが素直で性格のいい少年だったので、逆に言いしれぬ恐ろしさを感じる。
 ラストシーンをどのように捉えるかで本作品の評価も変わりそうだが、当方の解釈が間違っていなければ、ホラー映画のジャンルに入れていいと思う。それなりに面白かった。