映画「イビルアイ」を観た。
ジャンプスケアという言葉がある。ホラー映画やビデオゲームなどで突然大音量と衝撃的な映像を流すことで、観客やゲーマーを驚かせようとするものだ。ホラー映画では定番の手法なので、説明を聞いたら思い当たる人も多いと思う。ゲーム「バイオハザード」でも使われていて、かなり怖かった印象がある。
ただ、ジャンプスケアはここぞというときに使うから効果的なのであって、やたらと使うと飽きられてしまう。場合によっては呆れられることもあるかもしれない。
本作品では、ジャンプスケアが多用されていて、2度目からはあまり驚かなくなってしまった。またかと思ってしまうのだ。むしろ無音のシーンのほうが怖かった。
ただ、物語としては非常に面白い。冒頭から何度か流される過去のシーンは、若い家政婦のアビゲイルが語る物語のシーンではあるが、作り話と現実の境界線は曖昧だ。魔女は大昔からいて、不死であったり乗り移ったりして、継続的に存在してきたという話は、民間伝承としてもありそうである。都会よりも辺境で語り継がれる物語だろう。舞台はぴったりだ。
男は理屈でものを考えようとするが、女性は常識を超越したところで理解しようとする部分がある。超常の力を継承するのは女性の方が相応しい。魔女は魔女から生まれるのだ。血が本作品のキーアイテムであり、多義的な意味合いを持つ。吸血鬼みたいな栄養分であったり、血統的な特性であったり、先祖からの家系であったりする。母と祖母の関係が普通の母娘の関係ではないのは明らかだ。不気味さが恐怖心を煽る。
そこはかとなく漂うエロティスムが、人間の底しれぬ欲望を感じさせて、恐怖を増幅する。そのあたりの感性はとても優れていると思う。ホラーだけではなく、世界観として味わいのある作品だ。いくつか謎が解き明かされない場面が残っていて、とても気になる。続編があれば是非観たい。