映画「駒田蒸留所へようこそ」を観た。
なんだか嫌な感じだ。
休日の前日に仕事の約束を押し付けるのはブラックである。大事な私用があってもキャンセルを強制される。レクチャーもブリーフィングもなしで、初めての現場に行かせるのは、昭和のセールスマンが無理矢理にやらされていた飛び込み営業と同じだ。転職回数で社員を差別するのは人権侵害である。
ヒロインとその女友達の行動もおかしい。仕事ができないことで人格否定をしたり、不快な言葉を言われると相手を殴る。もはや暴走族と変わらない。レディースのカタギ版だ。
全体のプロットにも違和感がある。組織の存続のために個を捨てたのが立派であるかのような描き方は、お国のために死んでいった若者たちを英霊と讃えるのと同じモチーフだ。誤解を恐れずに言えば、本作品に通底するのは、ある種のファシズムである。
家族のいちばんよかった頃を思い描いて、あの頃を取り戻したいと願うのも、気持ちが悪い。射殺されたどこぞの元総理大臣が「美しいニッポンをトリモロス」とテレビで言っていたのが思い出される。同じ精神性だ。
若い記者の成長物語にも無理がある。物語にリアリティがなくなってしまった。そもそもそんな成長物語をねじ込まなければならないほど、内容がない物語だということだ。通俗的で薄っぺらで、しかもファシズムの匂いがする。嫌な感じは、いまだに消えない。