日々好日・いちよう

ちょっとした日々の一コマです

熊谷達也著「いつかX橋で」

2011-05-17 | 読書
先週に読み終えた本、熊谷達也著「いつかX橋で」
出たてのホヤホヤの新潮社の文庫本



マタギを主題にした「邂逅の森」で直木賞を受賞して以来
熊谷達也の本は読み続けている。

戦争末期の仙台市、米軍機の襲来を受けて町は壊滅状態になった。
母親と妹と暮らす成績優秀で真面目な17才男子
軍国青年でもある17才は予科練に応募する気になっていたが
母親に軽く否定された夜
大空襲に合い、母親が死に、妹も避難の途中で亡くす。

家は跡形もなくなり、途方に暮れながらも二人を火葬にすべく
火葬場へ持ち込む。
そこで火葬場の人に飯・寝場所と交換に手伝いをする事になる。

この場面が東日本の震災とダブり感情移入が出来る。

母と妹を忘れるように懸命に働く。
街路樹を切り燃料にし、火葬場に帰ると「敗戦」
隠された板袖の下の品々を盗み出奔し
寝場所を見つけて仕事「靴磨き」を見つけて自らを養い出す。

そんな中「嫌なやつ」にさんざんな目に遭わされ
ひょんな事から助け出し、生活をともにし出す。
すぐに生きる方向が違う事に気付き、距離を置くが
また変な具合に助け出す事になり
ついには幸せがそこまで見えているのに全てをおじゃんにしてしまう。

筋書きだけを書くと「変なの!」だが
ついついヤナ奴でも、一時は「いい人」に見える事がある。
最後は「やっぱりな!」第一印象を大事にしたいものだが
痛い目にあった私としては「わかる・わかる」で読んでしまった。

戦後の混乱期はこのような生き方と出会いが一杯あったのだろう。
戦後でなくとも津波にあった地域では、多くの孤児が出来てしまった。
この生真面目な17才ほど生活の術はないだろうし
今の時代はなにをしても生きて行けるとは限らない
親を亡くした子らの行く末が気になるが
力強く生き抜いて欲しいものだ。

・・と雑感が多くなったが、お薦めの1冊です。
X橋は実在する名前で、仙台駅の近くの跨線橋の事だそうだ。
仙台に行ったら是非とも訪ねてみたい。


コメント (2)
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