能天気もここまでくれば笑うしかない。怒る気力すらなくなってしまう。鳩山由紀夫首相の無責任ぶりは、並外れている。普天間基地の県外移設は難しいとほのめかしたと思ったらば、その舌の根も乾かないうちに、またまた前言を翻した。「努力している最中だから」という言葉に逆戻りしてしまったからだ。こんな総理大臣が今までいただろうか。いくらヨイショしたがるテレビメディアでも、もはやかばい切れなくなっている。一番問題なのは、鳩山首相が泥をかぶりたくないということだ。責任を取りなくないのが、見え見えである。できれば、「前政権が駄目だったから」と言い逃れしたいのだろうが、もはやそれもできずに、時間稼ぎをしているだけだ。深刻なのは、鳩山首相の頭には、国の安全保障に対する識見がまったくないことだ。共産中国との海洋資源をめぐる争いについても、まったくの他人事だ。「友愛の海」とか「平和の海」とかいう言葉を口にすれば、解決できると信じている。福田恆存が『日本を思ふ』で書いているように、平和を主張するのは、政治上の消極的な意味しか持たないのである。「命に替へても守りたいもの、或は守るに値するものと言へば、それは各々の民族の歴史のうちにある固有の生き方であり、そこから生じた文化的価値」である。しかし、それに目を向けることなく、平和だけを叫ぶというのは、日本人の道徳観を「甚だ曖昧なものにした」のである。鳩山首相に道徳観が欠如しているのは、守るべき日本の精神文化について無頓着だからであり、命だけに固執するのは、個人のエゴイズムを重視するからだろう。それこそが、鳩山首相を含めた日本の平和運動の問題点なのである。福田恆存が突きつけた批判に対して、鳩山首相がどう反論するのか、ぜひとも聞いてみたい気がする。
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