NHKの大河ドラマ「八重の桜」が明日から放送されるが、NHKがどんな番組にするのか、今から興味津津である。「平清盛」の視聴率がさんざであったので、少しはよくなると思う。しかし、気になるのは、どこまで真実に迫れるかである。主人公の新島八重は、会津戊辰戦争では籠城戦に加わったが、恐いとか可哀想とかの、感傷に浸る暇はなかったのである。「随分戦ト云フモノハ面白イモノデゴザイマシテ、犬死シテハツマリマセン。ケレドモ、戦ウトコロヲ見マスト女デモ強イ心ニナルモノデ、モウ殺サレルトカ思ヒナガラモ、丁度一町程先ノ所デ戦ツテイルノナド見マシテゴザイマスガ、ナカナカ面白イモノデゴザイマス。私ハ弾ガ二ツ中リマシタケレドモ、幸ニシテ死ニマセンデシタ」(『新島八重子刀自懐古談』)。八重は昭和7年6月14日に死去しており、その直前の5月24日、京都付近配属将校の研究会のメンバーに、八重自身が語ったのだった。会津藩士やその婦女子は、死を恐れることを卑怯だと思っていた。それでも、意味のある死を選ぼうとしたのだ。そして、目の前で繰り広げられている出来事について、「ナカナカ面白イモノデゴザイマス」との印象を抱いたのである。その場に居合わせた者しか体験できない、ある種の真実を言い当てている。死が日常的な光景となり、そこから逃げるすべがなければ、悲惨な状況を受け入れてしまうのが、人間なのである。NHKのポスターを見ると、八重がスペンサー銃を手にしている。いつでも応戦できる態勢なのである。平和惚けしたNHKの意図とは裏腹に、日本人が外敵に身構えるのと、それはまったく同じではないか。已むに已まれぬという点では、会津戊辰戦争を語ることは、大東亜戦争を語ることでもあるわけだから。
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