元首相であった石橋湛山について、日本のマスコミはリベラリストとは評価するが、もっと大事なことを忘れている。それはデフレを生涯の敵と位置づけ、それを訴えたいがために政治家になったのだ。今の日本の経済もデフレからの脱却ができるかどうかに、全てがかかっている。消費税増税に私が反対なのは、それに逆行する危険性があるからだ。敗戦後のどさくさで、多くの経済学者はインフレを心配した。これに対して、湛山だけは違った主張をしたのだった。湛山は「戦後の日本の経済で恐るべきは、むしろインフレではなく、生産が止まり、多量の失業者を発生するデフレ的傾向である。この際、インフレの懸念ありとて、緊縮財政を行うごときは、肺炎の患者をチフスと誤診し、まちがった治療法を施すに等しく、患者を殺す恐れがあると唱えた」(『湛山回想』)と書いている。湛山は緊縮財政がとられるようにことになれば、多くの国民が犠牲になるという危機感を抱いたのである。それを現在にあてはめてみれば、何が大事かがすぐに分かりそうなものである。デフレから抜け出せるかどうかの瀬戸際で、消費税増税が可能なのかどうか、安倍首相は決断を迫られているのである。私は先送りすべきだと思う。湛山が指摘しているように、デフレを恐れるからである。仕事がなくなり、国民が路頭に迷うのがデフレではないか。それほど人間の心を荒廃させるものはない。財務省の官僚の言いなりになるのではなく、国民のために、最後の最後まで熟慮すべきだろう。
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