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延々と送電線や青田波 炎火
大皿に海山の幸こどもの日
睡蓮やゆったり過ごす林住期 洋子
梅雨に入る泡やわらかきカプチーノ
薫風やざらめ煎餅五・六枚 薪
欲しいまま夏うぐいすのアリア聴く
誰となく呼んでみたいな五月闇 章子
山彦をすばやく返す若葉どき
採血の針静脈に走り梅雨 正太
夕薄暑ずんずん積る砂時計
甘夏の転がっている別れ道 遊石
蹴飛ばしたカンより出ずる夏の音
スーちゃんが逝った夜や卯の花腐たし 豊春
不景気に染まる街卯の花腐たし
ぐんぐんと若葉の山のせまり来る 歩智
一滴も残らぬ急須一番茶
空豆を捌く御厨野の香 空白
五月風葉を撫でさすリ裏返す
国の未来誰に託さむ若葉寒 稱子
彩の国の文殊菩薩や椎若葉
産卵の目高触れ合ふ若葉影 雲水
街の灯も汽笛も青葉隠れかな