小川洋子著「人質の朗読会」
紡がれたひとつひとつの物語に身を沈める。
小川洋子氏の物語を読んでいると
いつの間にか静かに静かにそのことばたちの森の奥深く、または深い淵の底へと引き寄せられてしまう。
『自分の中にしまわれている過去、未来がどうあろうと決して損なわれない過去』
ひとりひとりの人生の
そんな過去のひとコマ…
『それをそっと取り出し、掌で温め、言葉の舟にのせる』
そうして語られる九つの物語。。。
この本を読んだひとは、おそらく皆一様に思うはず。
自分なら何を、自分の中の記憶のどのひとコマにスポットを当てるだろう、と。
自分の歩いてきた長い道のりの中の特別な瞬間とは。
自分の人生にまで深く想いを馳せてしまう一冊である。
さて、わたしはどうだろう。
記憶を全部大事にしまっておきたい性分のわたし。自分の中の雑多な大量の物語をこの先どうしたものか。
物凄く物語を紡ぎたくなる本でありました。