時間のしずく time drops 

たいせつなもの。すきなこと。

匂い

2010-09-09 | essay
雨の降りそうな匂い。
何処かでもう降りだしている匂い。

「匂い」は、いろんな記憶を呼び覚ます。

いずれやってくる、急に寒くなる季節の変わり目になると、
電車の中で時々おひなさんの匂いのするお爺さんに遭遇することがある。
昔ながらのショウノウの匂いなんだなあ。

知らないお爺さんなのに、なんだかとっても懐かしい気持ちになってしまう。

その大事に着古したコートの背中には、そのひとの人生が詰まっている。
嬉しいこと、悲しいこと、そしてきっとたいせつなひととの幾つかの別れも。

 そのひとが電車を降りて扉が閉まる。

そんな時、決まってわたしはなんだか急にひとりぼっちな気持ちになってしまうのだ。


    


     



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