アメリカの日本文学者ドナルド・キーンの自伝。
自身の生い立ちから軍人としての日本との関わり、コロンビア、ケンブリッジ大学での日々、日本人作家との交友、親しい人達との別れなど、自身の半生を振り返る。60ー70年代の日本の文壇に時々登場する人物として、名前は良く知っていたが、改めて自伝を読むと、いかに日本を愛し、日本の文化活動に貢献してきたかが良く判る。彼が初めて触れた日本人が書いた生の文章が、第二次大戦の日本兵の日記だったというのは意外だった。アメリカ人兵士は日記を書くことはなく、戦場に記録を残すことは機密上あり得なかったらしい。しかし、最前線の日本兵は、自分の生きた証として日記を残した。それが日本という国に興味を持つきっかけになったと言う。戦後、多くの作家と付き合ったが、三島・川端の2人を失ったことが大きく、三島の死は川端のノーバル賞受賞が何か影響を与えたのかもしれないと推測している。
執筆時89歳で、親しい多くの友人を失ったけれど、日本との関わりは、人生を幸せなものにしてくれたと結んでいる。彼は、日本人の秀逸な伝記をいくつか書いているので、機会があれば読みたいと思う。