フランスの作家ジャン=クロード・カリエールとイタリアの中世学者・哲学者・作家でもあるウンベルト・エーコの対談集。
タイトルは電子書籍の普及を意識して「もうすぐ絶滅するという紙の書物について」となっているが、翻訳者によると原題は「本から離れようったって、そうはいかない」ということになるらしい。確かに電子書籍について語り合った部分もありますが、それよりも書物がどのような歴史を辿ってきたか、古書を収集する楽しみ、今後の本のあり方などについて、本に纏わる出来事やエピソードを交えて様々なテーマで語り合っています。
例えば、現在持て囃されている電子書籍については、メディアに依存するために賞味期限が限られてしまうという欠点があります。以前は主流だったフロッピーディスクやCD-ROMなどは、それを読み取る機械そのものが絶滅してしまうと内容の復元が不可能となってしまい、データは永久に失われてしまいます。また仮に機械があっても、その機械を動かす動力源(つまり電源)が無い場合も、内容を確認することができなくなってしまいます。
それに対し、紙は最も保存に適した媒体であり、紙の書物は車の車輪と同じように最も完成されたメディアと言うことができます。博覧強記のフランス人とイタリア人の対話ですが、日本では知名度の低い人物について語られていたりして、少々分かり難い部分もあります。書物に対する様々な見方や面白いエピソードが紹介され、本好きの人にはとても面白い内容になっています。
本の装丁も素晴らしい。内容も本もとても気に入りました。
先週の古新聞の話題ですが、同僚と昼食を食べながら巨人軍のパレードの話をしました。
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「日本一おめでとう」巨人Vパレードに38万人
3年ぶり22度目の日本一に輝いた読売巨人軍の日本シリーズ優勝パレードが25日、東京・日本橋三越本店前から銀座8丁目の博品館前までのコースで行われ、原辰徳監督(54)やコーチ、選手たちが、ファンと喜びを分かち合った。晴天下の沿道には約38万人(主催者発表)が詰めかけた。ナインらは2階建てのオープンバス3台に分乗。幾重にも人垣が取り囲む中、約2・3キロをゆっくりと30分ほどかけて進み、「おめでとう」「最高!」という歓声に笑顔で手を振った。原監督は「ファンの人と間近に接することができ、お互い『ありがとう』という言葉をかけあえた。いろいろな苦労も、この銀座パレードで、来年への英気に変わった気がする」と語った。
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話題になったのは、38万人が巨人のパレードに歓声をあげたという点で、一体どうやってその人数を把握したのかという素朴な疑問です。例えば、野球場やロック会場等、ある程度閉鎖された空間であれば入場券等で人数の把握は可能だし、公園等では入り口でカウントするのであれば人数が判ると思うけれど、パレードのように沿道で見る人達の人数をカウントするのは素人が考えても難しいと思います。おそらく沿道の人口密度と、パレードを行う範囲の面積から割り出した数字ではないかというのが結論になりました。でも、実際はパレードを見る目的でない買い物客や、たまたまそこに居合わせた人達も含まれているだろうし、マスコミは大袈裟な報道を心掛けるので、水増しの数字になっている可能性もあります。正直、せいぜい発表された数字の半分くらいではないかという結論になりました。(それでも多いけれど)精確を期して日本野鳥の会の人達にお願いしてもいいが、眼精疲労と腱鞘炎になるのは間違いない。
昭和の民俗学者・宮本常一の人生を追ったノンフィクション。
貧しい瀬戸内海の島で育った宮本常一は、父から教わったいくつかのルールを守りながら、日本を旅して廻ります。とにかく国内のあらゆるところをひたすら歩いて、様々な土地の人々の生活を記録し続け、昭和の日本人の姿を明らかにしていきます。民俗学者には、研究室で史料・史実を基に研究する人と、現場でのフィールドワークを重視するタイプがいますが、宮本常一は後者の人であったようです。
日本中を旅して歩く彼のような生き方というのも、自分の人生を考える時とても参考になります。些細なことでも、強い意志を持って継続すること。彼が旅行をしながら、何気なく撮った数万枚の昭和の風景のスナップショットが、今では昭和という時代を知る貴重な資料となっているそうです。彼の業績は、これから益々評価されていくのではないかと思います。佐野真一のノンフィクションの中では、最高の一冊だと思います。