照る日曇る日第980回
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才気煥発、博覧強記の戯作作家による詩のようなエッセイのような小説のような、コラージュ写真と文章をコラージュしたような、奇妙な風合いの短編連作集である。
たとえば知人から「パナマ・ドンパチ・ゲイシャ」という名のコーヒー豆を送られた著者の脳内には、かのプルーストが紅茶に混じったマドレーヌを味わった途端に、懐かしいコンブレーの風景が水中花の如く浮かび上がったように、いなそれ以上にさまざまな詩的幻想が渦巻いて、それを文章にしたいという衝動が芽生えるのだが、それは古典的なシュルレアリスム手法の復古的サバイバル版なのかもしれない。
しかし文章も、内容も、「カストロの尼」ならぬ「尻」というお下劣なタイトルも、そのほかの凝りに凝った題名も、赤い表紙や装丁も、おそらく本人がそう思いこんでいるほどには、教養と鑑賞眼皆無の私にはてんで面白くなかったのは残念だ。
されど古稀になっても、こういういっけん前衛風の実験的創作を続けるとは、見上げたポップ根性であるとは言えるでしょう。
安倍稲田菅豊田二階堂小池蓮舫野田見たくなし 蝶人