あまでうす日記

あなたのために毎日お届けする映画、本、音楽、短歌、俳句、狂歌、美術、ふぁっちょん、詩とエッセイの花束です。

「夢は第2の人生である」或いは「夢は五臓六腑の疲れである」 第77回 

2019-07-09 11:03:54 | Weblog


西暦2019年弥生蝶人酔生夢死幾百夜



目を瞑っても瞑っても、天井に歌麿の肉筆浮世絵が迫ってくるので、寝返りを打って前を見れば、暗闇の中に長い長い廊下が下降しているので、どんどん進んでいくと、突き当って右に折れたので、さらに進んでいくと、左右に6畳間が並んでいて、真っ暗闇で男女が戯れていた。3/1

旅館の鶴屋に泊まると、夜中に必ずと言っていいほどギター侍が出てきて、「拙者なんとかかんとか」というのでクレームが殺到する。私は彼の熱烈なファンなので、「これまた一興」とかなんとかいうて誤魔化してきたが、それも限度のようだ。3/2

夜、東京の街中を久しぶりにタクシーで流していたら、12800円も取られてしまった。花粉症の薬が効いて、ついウトウトしていたらしい。3/3

ラ島最後の日、私らは戦艦から総員退去したのだが、果たしてそれが良かったのか、良くなかったのか、艦長以下2等水兵まで当時の乗組員の生き残りの全員が、新橋の中華料理屋に集まって、ああでもない、こうでもないと総括している。3/4

総員退去の命令を、艦の一番底で聞いた私は、仲間の水兵たちと一緒に、ドリルで大きな窓枠を切り開いて、押し寄せる海水と戦いながら、艦の外側に泳ぎ出ることが出来たのだった。3/5

ある夏の朝、無人島で昼寝していたら、突然素っ裸の男女があほだら教を唱え、踊り狂いながらやって来たので、君等は何者かと尋ねたら、わたしらは神である。ここは神である自分たちの神聖な土地であるから、ねんねぐーなんかしてもらっては困る、というのだった。3/6

カール・ラガーフェルドの後任として、シャネルのデザイナーを命じられた3流詩人のわたしだったが、3つのラインのひとつはロゴへの注力、2つめは旧来の踏襲、3つめは青空に浮かぶモコモコの羊毛のイメージで、なんとかかんとか監修することができた。3/7

船橋の上に仁王立ちになって、行く手をみはるかす私の足元には、いつも私にある種の憧れを抱く女性がいたものだが、あれから何十年も経ったいまでは、振り返っても、振り返っても、誰一人いなかった。3/8

太郎は太郎湖、次郎は次郎湖、三郎は三郎湖からやって来たのだが、3人とも、彼らが実の兄弟であるとは、夢にも思いはしなかった。3/9

ようやっと連休が取れたので、第1日だけを歌会にあて、2日目は完全休養しようと思ったのだが、同人たちはそれを許さず、朝から我が家に押し掛けてくるのだった。3/10

その雑誌の編集部には、たった7人のスタッフしかいなかったが、この7人が物凄い連中で、それぞれが政治経済社会芸術芸能文化全般の最高の専門家だったので、編集長の私はなにもする必要がなかった。3/11

「マエ!お前はこの店の運営をどうするつもりなんだ。馬鹿野郎め!」と私は、その無能な店長を怒鳴りつけてやった。3/12

カラヤン全集のおまけについていた、オペラの歌唱部分だけのCDが、道端に落ちていたので、拾って家で聴いてみると、本篇の録音より面白いので、私は夢中で聴きまくった。3/13

「塩飽」というネームの入ったシャツを捨てようと、町内のゴミ捨て場にやって来たのだが、なんとなく捨てがたくなって、そのまま家に持ち帰ってきてしまった。3/14

退職した職人のミシンを返却するためにローカル電車に乗っていたら、いつの間にか隣にD社の社長だったミズノ氏が座っていて、「ササキ君、ええ仕事やねえ」と羨ましそうに語りかけるのだった。3/14

私は、その在任中に、さまざまな思いを全部こめて製作したDⅤDを、「さよならパーティ」のお土産に手渡したのだが、誰ひとり、礼を云うものはいなかった。3/15

8.15の敗戦の日、ガラスが1枚もない焼け焦げの省線電車が通りかかったので、何気なくのぞきこむと、その中で、無数の民草が、真黒な焼死体となっていた。3/16

私は、幾多の労苦と習練の末、夢を3倍速で見る超絶技術を開発したのだが、せっかくの発明も、夢見る時間がすぐに終了してしまう、という欠陥があったので、結局は宝の持ち腐れになってしまった。3/17

長い牢屋暮らしが続いていたが、私は、ついせんだって向いの牢屋に入った、いわくありげな美貌の女囚が、気になって、気になって仕方なかった。もしかすると、いつのまにか心の片隅で、彼女を愛するようになったのかもしれない。3/18

やっと見つけたカフェでエスプレッソを注文したのだが、なかなか出てこない。ようやっと出てきたが、まるで砂糖水。しかも1杯30万リラだというので、私は怒り狂って、そのイタリア人マフィアを刺し殺した。これではセイさんが主宰するクリエイティブ会議に遅れてしまう。3/19

ダーバンのヨシダ君のグラフィック・デザインは、まことに力強く、ファンタジックなものだった。3/19

本当は会長とサシで対決するはずなのに、この部屋にはダリル伯爵のロボットが鎮座していて、私たちのやり取りを、全世界に同時中継しようとしていた。3/20

ここは全米スポーツ選手専用の墓地で、あのイチロー選手の敷地も予約されていたのだが、去年専任マネージャーが退職してしまったために、仕事が行き詰ってしまったようだ。3/21

雑誌1冊丸ごとタイアップという大儲けの企画が着々と進行し、スポンサーもいっぱい付き、ナガタ、イデ両氏も久しぶりの海外出張を、手ぐすねひいて待ち兼ねていたのだが、私の会社が倒産してしまったので、ずべておじゃんになってしまった。3/22

彼奴を後からはがい締めにして、ぶち殺してやろうと思ったが、いざやろうとすると、そうは簡単に、問屋が卸さないことが、分かった。3/23

花屋の経営が傾いてきたので、花の種類を入れ替えようかと悩んでいるのだが、どの花をどの花に変えたら良くなるのかを、テストしているうちにも、売り上げが急落していくので、もう焦ること、焦ること。3/24

あしたLAに旅立って、もう二度と戻ってこないという彼女と私は、タカダノババの近くの友人の留守宅に忍び込んで、その日のうちに2度、翌日のお昼までに2度と、9時間のうちに合計4度も交わってから、別れた。3/26

バスの中で、若い男女の身の上相談に乗っていたのだが、いつのまにやら超満員になってしまい、息子がどこにいるのか分からなくなったので、非常に焦っている私。3/27

「この夏は北朝鮮の沿海リゾートで」という金正恩委員長肝いりの国際キャンペーンは、見事に成功し、トランプ大統領をはじめ、世界中の有名人やセレブが、わんさと押しかけたのであった。3/28

私たちロボットは、もう人間たちのために戦うのをやめてしまった。それは、いくら敵のロボットを殺しても、それが、世界中のロボットたちの幸せにならないことに、やっと気付いたからだ。3/29

眠っていたら、誰だか分からない女が、傍にいたので、もしかして、交合できるかしら、と思って、ペニスを触ったら、いつものように、グニャグニャ、でもなかったので、ひとしきり、やっさもっさ、やってみたが、はかばかしく、なかったので、気がついたら、女は、いなかった。3/30

私のライバルのアカオ君が、画期的なセキ止め薬を発明したので、私はすべてに投げやりになって、自堕落な暮らしに舞い戻ってしまった。3/31 


 「上司は関係ない佐々木さんが私のクライアントです」と断言せしマツオさん 蝶人


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