音楽千夜一夜 第432回
半世紀以上の昔にパリでクーベリックのモーツアルトとマーラーを聴いて一発でやられてしまった。特にマーラーの4番の4楽章でエデイト・マチスのソプラノ独唱が始まって、それこそ天国的な歌声が流れた時には、ある種の戦慄を覚えて涙滂沱として禁ぜずというざまになってしまった。
それ以来、私にとって「マラ4はクーベリック」なのだが、この独逸グラモフォン盤に聞くエリス・モリソンの独唱は指揮者、劇伴は同じ手兵のバイエルン放響ながら、あの日の巴里シャンザリゼ劇場のそれとは比べるべくもない。
Great Voices Of The Opera「オペラの殿堂」は往年の名歌手たちの演奏を集めた40枚組のコンピレーション。第1集、第3集に挟まれたこの第2集テノール&ソプラノ篇もすべてが珠玉の名演であり歴史的記録であり、とりわけフラグスタートやレーマン、カルーソーやキプニス、ジーリなどを一聴すれば今時の人気歌手なにするものぞという気持ちになるに違いない。
モノなどを考えること自体が面倒で考えたふりして「どちらともいえない」 蝶人