蝶人狂言綺語&バガテル―そんな私のここだけの話 第411回
- 快気祝いでの本人の謝辞
*1いやあ皆さん、私のような老いぼれのために都合をつけて出席して頂いてどうもありがとう。*2今回はO157というとんでもない悪い奴にやられちゃってね。あやうくあっちの世界へ連れて行かれるところでした。でも神様がね、お前はもうちょっとこっちで音楽をやっていなさいとおっしゃってね、三途の川から戻ってきたような次第です。*3冗談はともかく、入院中は家内や息子たちはじめ皆さん方に非常にご迷惑をお掛けしました。でもお陰様で毎日メロンをおいしく頂きました。本当にありがとう。さっきの息子の話だけど、ベルリン・フィルだの、ウイーン・フィルだのシカゴ交響楽団だの、世界の超一流オーケストラから客演指揮の申込みが殺到して、うれしいことはうれしいのだが、この年で長時間飛行機に乗るのもどうかと思って迷っています。*4まあ私としてはこの愛する地元のファンのために1回でも多くベートーヴェンやブルックナーをお聴かせできたらと、それだけを念願しております。今日はどうもありがとう。
- アドバイス
*1長男の祝辞をうけて登場した老巨匠の快気祝いあいさつである。
- 2さすがに年の功、悠揚迫らぬユーモラスなスピーチで聴衆を楽しませようとしている。
- 3ここは作法通りの謝辞である。メロンは巧まざるユーモア。
*4病後の生き方を改めて宣言して風格あるスピーチを堂々と閉じる。
練習で一度も成功しなかった4回転半を本番でやるとは 蝶人