あまでうす日記

あなたのために毎日お届けする映画、本、音楽、短歌、俳句、狂歌、美術、ふぁっちょん、詩とエッセイの花束です。

「夢は第2の人世である」あるいは「夢は五臓六腑の疲れである」第107回

2022-02-23 13:17:34 | Weblog

西暦2021年長月蝶人酔生夢死幾百夜

 

状況は瞬時に変化してしまうので、「わたしらは、いつでもいい意味でのダブルスタンダードを心がけていなければ、世の中から取り残されてしまう」と力説したのだが、タナカ氏は、ついに首を縦に振ろうとはしなかった。9/1

 

ぼくはひさしぶりにアマカワくんにあって、そのやさしさにかんどうしたんだが、「ぼく、あしたきみに、なにか、かみさまのことばを、いわなければならないんだ」というと、アマカワくんは、「ああそうなの、まあよろしくね」というたのよ。9/2

 

銀座の旧電通ビルの試写室でルック社のテレビCMを見ていたら、普段は温和なヨシムラ氏が、突如血相を変えて立ちあがって、「このCMに、なんで盲人が出て来るんだ。障害者を冒涜するな!」と叫んで、そのカットをカットさせたので、おらっち「こいつは偉い奴だ!」と、秘かに舌を巻いた。9/3

 

更地というより、荒地になってしまった会社の跡地を、元写真たちが、なにか思い出の品でも落ちていないかと、目を凝らしながら探している。9/4

 

「現代音楽のレコードは、一回こなごなに割ってから、アロンアルファでくっつけて聴くと、とても味わい深いんだ」と、大学時代の友人が教えてくれたのだが、なかなか実行できないでいる。9/5

 

出しものによって大好評の月もあれば、その反対に大不評の月もあり、それがみな売り上げに直結するので、映画館主のおらっちは。、大好きな「ローマの休日」だけを上映することにした。9/6

 

この史上未曽有の大飢饉時代を、我らヒニタタ一族は、身をひとつに寄せ合うようにして、爪を噛み噛み、たった一人の餓死者を出すこともなく、なんとか乗り切った。9/7

 

新型コロナを巡る世界的なパンデミックは、いっこうに収まらず、ますます熾烈を極めていたので、超強力な最新型ワクチンを搭載している我われの戦車は、敵軍の熾烈な集中砲火に晒されていた。9/8

 

政府主催の壮行会では、最初にビールなしのおつまみ、最後にスイトンしか出なかったので、頭に来た若い兵士たちは、次々に退場してタリバンの宴会場に向かった。9/9

 

東京の超僻地に引っ越した我ら夫婦は、近隣の住民のライフスタイルに違和感を覚えながら、自分たちの暮らしを細々と続けていたのよ。9/10

 

この国では、権力者にはむかった者たちは、金魚鉢を象った巨大な水槽に投げ込まれるので、泳げないものは、すぐに死んでしまうし、泳ぎの達者なものが、いくらあがいても、絶対に外には出られないのだ。9/11

 

コロナ最終戦争の段階で、ある希少ワクチンを接種した人だけが生き残れる、ことが分かったので、血を血で洗う物凄い争奪戦が起こっているようだが、おらっちのような下層階級には、てんで関係のない噺だ。9/11

 

その国際映画祭にはじめて出席した大富豪は、最新の映画が見放題なのに感激して、1億円を寄付したことで、その名を知られている。9/12

 

「この会社は腐ってるわ」と彼女がいうので、「その会社にいるボクもかな?」と訊ねたら、「さあそれは分からないわ」と答えたまま、彼女は地下鉄丸の内線の新宿駅の改札口から永遠に姿を消した。9/13

 

もうそろそろ、ここらへんで手を打たないとヤバイ、と思いながら、おらっっちは、何もせず、何も出来ないままで、いたずらに月日が流れていった。9/14

 

3時29分に玄関のチャイムがひとつ鳴ったので、おそるおそる階段を下りてドアを開けてみたが、誰もいなかった。9/15

 

ようやっとクリスチャン・バッハが到着したので、いよいよこれからリヒター選手が演奏を開始するのか、と固唾をのんで見守っていたが、コンサートは、なかなか始まらなかった。9/16

 

朝から晩まで敵将と激闘を続けた挙句、ついに最大の強敵を仕留めたのだが、おらっちには、何の勝利の喜びも湧き起こってはこなかった。9/17

 

芸術のための美的生活を目指して、楽しい共同生活を営んでいた私たちに対して、家主が強制退去を命じたが、おらっちを含めておよそ30名ほどが居残って、しぶとく美的生活を続けているのだった。9/18

 

全国マージャン大会が開催された。東京駅のホームに着くと、いきなりプラットホームのコンクリートが扇のように開かれて、その下には、何百台ものジャン卓が現れた。9/19

 

ふぁちょん大博士の下で、3年間修業を積んだおらっちは、朝寝して宵寝するまで昼寝して、時々起きて居眠りをしている大博士の代わりに、いま流行のエチカ調ルックスを製作したら大好評でした。9/20

 

その中国人女性のふぁっちょんトークでは、自分が得意とするラインは押さえて、あえて不要不急の不得手なラインを大きく打ち出すと、そのブランドの付加価値が増加するというたので、思い切ってやってみることにしたのよ。9/21

 

だいぶ前に急死した副社長の専用車に乗って、高速経由で彼の自宅に到着すると、美人の奥さんと女中らしき人がお辞儀をして、「おかえりなさいませ」という。副社長が運転手に「このまま彼の自宅まで届けてくれ」と命じたので、余は再び車上の人となった。9/22

 

その武将は、みずからも飢餓状態に陥りながら、小野城の包囲を解こうとはしなかった。9/23

 

私は最近大量生産されるようになったロボットについて研究している者だが、どんなロボットの表情も、また心の中にも、憂鬱と不幸が忍び込んでおり、譬え未来からやって来た猫型ロボットのドラどらえもんが、にっこり笑ったとしても、そこには決して消せない悲しみが漂っていることを見抜いたのであった。9/24

 

妻の実家で開催されている次男の個展を巡って、妻と息子の考え方が微妙に異なるので、はてさてどうしたもんじゃろう、と心穏やかならざる私。9/25

 

彼女は1億円の宝籤に当選したが、そのお金は生徒から集めた給食費の一部だったので、彼女は懲戒免職になり、1億円は学校がぶんどった。9/26

 

米国に遠征試合にやって来た我われは、毎朝食卓に並べられる宝石系のパンやコスモス系のパンを貪り喰うては、試合に臨んだ。9/27

 

ミクシィの少数の友人たちが書いた日記のありかを尋ねているのだが、杳として知れなかった。9/28

 

250人くらい入る大教室で、スタイリストを目指す若い女生徒に向かって、おらっちは1時間半にわたって谷崎の「陰翳礼讃」を論じたが、誰も聞いていない。と思いきや、講義が終わった時、一人だけ「とても面白かった」というて呉れたので、とても嬉しかった。9/29

 

リーマンを卒業して、フリーになってからのおらっちは、雑誌の取材記事から広告制作、専門学校、大学の非常勤講師等々、頼まれればなんでも引き受け、不眠不休で働き続けたので、自分のことを「抜き身の剣」と思うようになったのよ。9/30

 

   自国民を保護するという名目でまた繰り返される他国侵略 蝶人

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