変貌する経済 自動車④ もの言う労働者を排除
「有給休暇は死んでから嫌というほどとれる」「ストのひとつやふたつで腰砕けになるようでは経営者失格」。開けっ広げに経営哲学を語った著書『俺は、中小企業のおやじ』で、スズキの鈴木修会長はそう語ります。
同社では、こうした哲学のもと業界一低い賃金や有給休暇取得に対する嫌がらせが横行。労働者の切実な要求が実現できる労働組合づくりをめざした職場の日本共産党員に対しては、30年以上にわたり差別を続けてきました。
屈辱と隔離政策
スズキで働く日本共産党員7人が原告となったスズキ賃金差別裁判(2000年に第1次、01年に第2次提訴。地裁勝訴、高裁不当判決)の意見陳述は、同社の手口を生々しく記録しています
―溶接作業中に骨折すると、2カ月にわたって床掃除を命じられた。拭いても拭いてもフォークリフトのブレーキ痕が次々発生する。腕はぱんぱんに張り、足や腰はしびれてくる。外来者がくると組長の指示で急いで機械の物陰に隠れなければならない。こんなみじめな思いをしたのは生まれて初めてだった。(久保田修治さん)
―窓一つない実験室に隔離され、朝から晩まで1人で仕事をする。訪れる人は全くなく、事故や急病で倒れても誰も気付かない。死んだ状態で発見されれば差別の実態が社会に明らかになると思い、本気でそうなればいいと何回思ったかしれない。(久米信雄さん)
職場の労働者と共産党員を分断するみせしめのなかでも最大の攻撃が「賃金差別」でした。勤続30年超でも手取りは20万円に届かず、娘の賃金より少ない。子どもの高校の授業料が払えず、近所の人が亡くなっても香典を持っていけない。
自身も現役時代にスズキから差別待遇を受けてきた太田泰久さんは、日本での共産党員差別とインド・マネサール工場で起きた暴力事件は、まともな労働組合づくりを排除するという点で共通していると語ります。
「スズキの職場をよくしようと運動してきたが、インドの労働者がここまで劣悪な状態に置かれているとは知らなかった。会社に加え国家や州政府からの弾圧まである」

マネサール工場前でこぶしを突き上げる労働者たち=4月11日(MSWUホームページより)
鈴木修会長の著書『俺は、中小企業のおやじ』
国家・州からも
マネサール工場の事件で逮捕された147人の労働者のうち、これまでに釈放されたのは1人だけです。なかには、事件当日は工場から300キロ離れた村にいたという人や、事件時には既に退社していた人もいます。
マルチ・スズキ労働組合(MSWU)暫定委員会によれば、逮捕された労働者の多くが留置場内で拷問を受け、組合をやめるよう迫られたといいます。
13年1月には、暫定委員会の委員が、記者会見を始めようとした矢先、ジャーナリストになりすましていた警官によって逮捕。3月には、抗議集会に参加していた労働者と家族が警察隊に襲われ、数十人が負傷し、11人が逮捕されました。
「スズキにはインドの自動車産業を育てたという自負がある」
自動車業界に詳しいジャーナリストは、マネサール工場で起きた事件は、スズキがインドの政財界に持つ影響力抜きには語れないといいます。同時に、この事件は自動車業界全体にとっても画期になると指摘します。
「スズキのインド進出は、途上国の低賃金労働者を使って車をつくるモデルになってきた。それが通用しない時代に入ったのかもしれない」
(つづく)
「しんぶん赤旗」日刊紙 2014年7月29日付掲載
スズキの車は他の軽自動車と比べて安いと思っていましたが、労働者を低賃金で使う、労働組合運動を弾圧する…。
そういった背景もあったのですね。
これって、車の安全性にも影響しそうですね。
「有給休暇は死んでから嫌というほどとれる」「ストのひとつやふたつで腰砕けになるようでは経営者失格」。開けっ広げに経営哲学を語った著書『俺は、中小企業のおやじ』で、スズキの鈴木修会長はそう語ります。
同社では、こうした哲学のもと業界一低い賃金や有給休暇取得に対する嫌がらせが横行。労働者の切実な要求が実現できる労働組合づくりをめざした職場の日本共産党員に対しては、30年以上にわたり差別を続けてきました。
屈辱と隔離政策
スズキで働く日本共産党員7人が原告となったスズキ賃金差別裁判(2000年に第1次、01年に第2次提訴。地裁勝訴、高裁不当判決)の意見陳述は、同社の手口を生々しく記録しています
―溶接作業中に骨折すると、2カ月にわたって床掃除を命じられた。拭いても拭いてもフォークリフトのブレーキ痕が次々発生する。腕はぱんぱんに張り、足や腰はしびれてくる。外来者がくると組長の指示で急いで機械の物陰に隠れなければならない。こんなみじめな思いをしたのは生まれて初めてだった。(久保田修治さん)
―窓一つない実験室に隔離され、朝から晩まで1人で仕事をする。訪れる人は全くなく、事故や急病で倒れても誰も気付かない。死んだ状態で発見されれば差別の実態が社会に明らかになると思い、本気でそうなればいいと何回思ったかしれない。(久米信雄さん)
職場の労働者と共産党員を分断するみせしめのなかでも最大の攻撃が「賃金差別」でした。勤続30年超でも手取りは20万円に届かず、娘の賃金より少ない。子どもの高校の授業料が払えず、近所の人が亡くなっても香典を持っていけない。
自身も現役時代にスズキから差別待遇を受けてきた太田泰久さんは、日本での共産党員差別とインド・マネサール工場で起きた暴力事件は、まともな労働組合づくりを排除するという点で共通していると語ります。
「スズキの職場をよくしようと運動してきたが、インドの労働者がここまで劣悪な状態に置かれているとは知らなかった。会社に加え国家や州政府からの弾圧まである」

マネサール工場前でこぶしを突き上げる労働者たち=4月11日(MSWUホームページより)
鈴木修会長の著書『俺は、中小企業のおやじ』
国家・州からも
マネサール工場の事件で逮捕された147人の労働者のうち、これまでに釈放されたのは1人だけです。なかには、事件当日は工場から300キロ離れた村にいたという人や、事件時には既に退社していた人もいます。
マルチ・スズキ労働組合(MSWU)暫定委員会によれば、逮捕された労働者の多くが留置場内で拷問を受け、組合をやめるよう迫られたといいます。
13年1月には、暫定委員会の委員が、記者会見を始めようとした矢先、ジャーナリストになりすましていた警官によって逮捕。3月には、抗議集会に参加していた労働者と家族が警察隊に襲われ、数十人が負傷し、11人が逮捕されました。
「スズキにはインドの自動車産業を育てたという自負がある」
自動車業界に詳しいジャーナリストは、マネサール工場で起きた事件は、スズキがインドの政財界に持つ影響力抜きには語れないといいます。同時に、この事件は自動車業界全体にとっても画期になると指摘します。
「スズキのインド進出は、途上国の低賃金労働者を使って車をつくるモデルになってきた。それが通用しない時代に入ったのかもしれない」
(つづく)
「しんぶん赤旗」日刊紙 2014年7月29日付掲載
スズキの車は他の軽自動車と比べて安いと思っていましたが、労働者を低賃金で使う、労働組合運動を弾圧する…。
そういった背景もあったのですね。
これって、車の安全性にも影響しそうですね。