GDP大幅減 日本経済の現局面② 土台のもろさ明白に
東京工学科大学教授 工藤昌宏さん
4~6月期国内総生産(GDP)の大幅な落ち込みは、個人消費の大幅な落ち込みを主因としたものです。しかし、これを単に消費税増税前の駆け込み消費の反動とみることはできません。
消費税増税の影響がこれほど激しく表れるということは、国民生活が相当疲弊していることを示しています。増税は、疲弊した国民生活にとってことさら重い負担となっており、激しい落ち込みは、このような重石をはねのける力も弱まっているということを示しています。
また、根底には雇用や所得環境の悪さ、年金や医療に対する将来不安が横たわっていると考えられます。このような国民生活の基盤が崩れかかっていることが、国内の生産、投資、雇用、所得の停滞を招くという悪循環につながっているようです。
悪循環が形成されているわけですから、停滞から抜け出すのは容易ではありません。つまり、日本経済は、体力とともに再生力、免疫力までも弱まっているということ、停滞から抜け出せない状態に陥っているということです。
東京港のコンテナ埠頭(ふとう)
背景に構造の変化
さらに問題なのは、体力、免疫力の低下とともに従来の薬が効きにくくなっていることです。つまり、これまでのような景気対策(財政政策、金融政策)の効果が期待できなくなっています。背景には、日本経済の停滞(体力・免疫力の低下)とともに、経済構造の変化(体質変化)があります。
構造変化の第一は、産業構造の変化です。主に大企業を中心に海外に資本を移動させているということです。国内市場が停滞していることが原因の一つです。資本の海外逃避は、国内の投資、雇用を冷え込ませます。
第二は、労働市場の変化です。それを特徴づけるのは、非正規労働者の増大です。低賃金、雇用不安、過重労働をもたらし、景気の圧迫要因となります。
第三は、貿易構造の変化です。輸出が慢性的に停滞し、輸出による経済けん引効果が期待できなくなっているということです。また、輸出が一時的に伸びても、内需が停滞しているために企業は設備投資や雇用の増大に慎重な姿勢を崩しません。
国内の連鎖弱まる
第四に、経済循環の連鎖が弱まっているということです。すなわち、生産、投資、雇用、消費のそれぞれが停滞し、しかも生産現場の海外移転が進展しているために、国内での生産、投資、雇用、消費の連鎖が弱まっているということです。このような状態では、従来のような薬、つまり財政支出や金融政策の効果は期待できません。鎖がつながっていないわけですから、財政支出や金融緩和も波及していかないということです。
2013年度に入ってから、日本経済はプラス成長に転じましたが、原因は、前半は東日本大震災の復興向け財政支出、後半以降は主に消費税増税前の駆け込み消費によるものでした。
しかし、財政支出や異様な金融緩和策、さらには駆け込み消費にもかかわらず、経済の勢いは弱々しいまま、消費税を増税したわけです。今期のGDP速報値は、このような日本経済の土台の脆(もろ)さ、停滞から抜け出せない構造を浮き彫りにしているように思われます。(つづく)
「しんぶん赤旗」日刊紙 2014年8月29日付掲載
消費税増税の影響がこれほど激しく表れるということは、国民生活が相当疲弊していることを示しています。
背景には、日本経済の停滞(体力・免疫力の低下)とともに、経済構造の変化(体質変化)があります。
東京工学科大学教授 工藤昌宏さん
4~6月期国内総生産(GDP)の大幅な落ち込みは、個人消費の大幅な落ち込みを主因としたものです。しかし、これを単に消費税増税前の駆け込み消費の反動とみることはできません。
消費税増税の影響がこれほど激しく表れるということは、国民生活が相当疲弊していることを示しています。増税は、疲弊した国民生活にとってことさら重い負担となっており、激しい落ち込みは、このような重石をはねのける力も弱まっているということを示しています。
また、根底には雇用や所得環境の悪さ、年金や医療に対する将来不安が横たわっていると考えられます。このような国民生活の基盤が崩れかかっていることが、国内の生産、投資、雇用、所得の停滞を招くという悪循環につながっているようです。
悪循環が形成されているわけですから、停滞から抜け出すのは容易ではありません。つまり、日本経済は、体力とともに再生力、免疫力までも弱まっているということ、停滞から抜け出せない状態に陥っているということです。
東京港のコンテナ埠頭(ふとう)
背景に構造の変化
さらに問題なのは、体力、免疫力の低下とともに従来の薬が効きにくくなっていることです。つまり、これまでのような景気対策(財政政策、金融政策)の効果が期待できなくなっています。背景には、日本経済の停滞(体力・免疫力の低下)とともに、経済構造の変化(体質変化)があります。
構造変化の第一は、産業構造の変化です。主に大企業を中心に海外に資本を移動させているということです。国内市場が停滞していることが原因の一つです。資本の海外逃避は、国内の投資、雇用を冷え込ませます。
第二は、労働市場の変化です。それを特徴づけるのは、非正規労働者の増大です。低賃金、雇用不安、過重労働をもたらし、景気の圧迫要因となります。
第三は、貿易構造の変化です。輸出が慢性的に停滞し、輸出による経済けん引効果が期待できなくなっているということです。また、輸出が一時的に伸びても、内需が停滞しているために企業は設備投資や雇用の増大に慎重な姿勢を崩しません。
国内の連鎖弱まる
第四に、経済循環の連鎖が弱まっているということです。すなわち、生産、投資、雇用、消費のそれぞれが停滞し、しかも生産現場の海外移転が進展しているために、国内での生産、投資、雇用、消費の連鎖が弱まっているということです。このような状態では、従来のような薬、つまり財政支出や金融政策の効果は期待できません。鎖がつながっていないわけですから、財政支出や金融緩和も波及していかないということです。
2013年度に入ってから、日本経済はプラス成長に転じましたが、原因は、前半は東日本大震災の復興向け財政支出、後半以降は主に消費税増税前の駆け込み消費によるものでした。
しかし、財政支出や異様な金融緩和策、さらには駆け込み消費にもかかわらず、経済の勢いは弱々しいまま、消費税を増税したわけです。今期のGDP速報値は、このような日本経済の土台の脆(もろ)さ、停滞から抜け出せない構造を浮き彫りにしているように思われます。(つづく)
「しんぶん赤旗」日刊紙 2014年8月29日付掲載
消費税増税の影響がこれほど激しく表れるということは、国民生活が相当疲弊していることを示しています。
背景には、日本経済の停滞(体力・免疫力の低下)とともに、経済構造の変化(体質変化)があります。