広島土砂災害 問われるもの② 「警戒区域」指定の遅れ
2000年に制定された土砂災害防止法。1999年6月に広島県内で起きた、死者・行方不明者32人をだした土砂災害がきっかけです。広島県には、県が認定した「土砂災害危険箇所」が約3万2000カ所あります。全国最多です。
指定は37・5%
ところが、同法により行政に対策が義務付けられる「警戒区域」「特別警戒区域」が指定されているのは1万2000カ所にすぎません(37・5%)。
今回大きな被害がでた広島市安佐南区の八木、緑井両地区は、指定がゼロでした。
経済的な負担…
なぜ、指定が遅れているのか。
広島大学の土田孝教授(地盤工学研究室)は、「広島県への批判は、一面もっともですが、考えるべき問題もある」と、次のように指摘します。
広島県は、「高度経済成長」期、流入する人口を迎え入れるために、山に近い地域をどんどん宅地開発し、危険なところに住む人がたくさんいます。
「警戒区域」や「特別警戒区域」に指定されると、防災対策が義務付けられ、危険性の周知、避難場所や避難経路も決めていくなど、防災上のメリットは確かにあります。
他方、とりわけ「特別警戒区域」に指定されると、建築制限がかかります。建て替えや新築には規制がかかり、土地は売れなくなり、資産価値が下がります。
こうしたことから、「特別警戒区域」指定を住民が受け入れないということが起きてしまうといいます。
土砂災害防止法では「区域」指定にあたり住民同意は義務付けられてはいませんが、「住民の同意がないと、その後の避難計画作成などがうまくいかない」(広島県土木局砂防課)と説明します。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/43/4f/955bcb10d8a382a845070b2d5e302531.jpg)
応急的な対策も
全国的にも、「土砂災害危険箇所」が約52万5000カ所認定されていますが、「警戒区域」に指定されたのは約38万カ所(72%)にとどまっています。
国土交通省は、今回の災害を受け、「警戒区域」未指定の地域も含め「土砂災害危険箇所」の住民に危険性を周知するよう全国の関係自治体に緊急要請しました。
土田教授は、「土砂災害危険箇所は、インターネットでも公開されています。応急的な対策も含め、急いで取る必要があります」と指摘します。
(つづく)
【土砂災害防止法のしくみ】
都道府県が「土砂災害危険箇所」の地形や地質などを調べ、土砂災害がおきたときの破壊力などを計測。「土砂災害警戒区域」と通常の木造住宅が破壊される危険がある「土砂災害特別警戒区域」とを指定します。
「しんぶん赤旗」日刊紙 2014年9月8日付掲載
高度経済成長期に、宅地開発で山際まで家が建ったというのは広島だけではない事です。また、「警戒区域」「特別警戒区域」に指定されると資産価値がさがるっていうのも、地震と同じことです。
要は、危険に対してどのように備えるか、対策をとるかですね。
2000年に制定された土砂災害防止法。1999年6月に広島県内で起きた、死者・行方不明者32人をだした土砂災害がきっかけです。広島県には、県が認定した「土砂災害危険箇所」が約3万2000カ所あります。全国最多です。
指定は37・5%
ところが、同法により行政に対策が義務付けられる「警戒区域」「特別警戒区域」が指定されているのは1万2000カ所にすぎません(37・5%)。
今回大きな被害がでた広島市安佐南区の八木、緑井両地区は、指定がゼロでした。
経済的な負担…
なぜ、指定が遅れているのか。
広島大学の土田孝教授(地盤工学研究室)は、「広島県への批判は、一面もっともですが、考えるべき問題もある」と、次のように指摘します。
広島県は、「高度経済成長」期、流入する人口を迎え入れるために、山に近い地域をどんどん宅地開発し、危険なところに住む人がたくさんいます。
「警戒区域」や「特別警戒区域」に指定されると、防災対策が義務付けられ、危険性の周知、避難場所や避難経路も決めていくなど、防災上のメリットは確かにあります。
他方、とりわけ「特別警戒区域」に指定されると、建築制限がかかります。建て替えや新築には規制がかかり、土地は売れなくなり、資産価値が下がります。
こうしたことから、「特別警戒区域」指定を住民が受け入れないということが起きてしまうといいます。
土砂災害防止法では「区域」指定にあたり住民同意は義務付けられてはいませんが、「住民の同意がないと、その後の避難計画作成などがうまくいかない」(広島県土木局砂防課)と説明します。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/43/4f/955bcb10d8a382a845070b2d5e302531.jpg)
応急的な対策も
全国的にも、「土砂災害危険箇所」が約52万5000カ所認定されていますが、「警戒区域」に指定されたのは約38万カ所(72%)にとどまっています。
国土交通省は、今回の災害を受け、「警戒区域」未指定の地域も含め「土砂災害危険箇所」の住民に危険性を周知するよう全国の関係自治体に緊急要請しました。
土田教授は、「土砂災害危険箇所は、インターネットでも公開されています。応急的な対策も含め、急いで取る必要があります」と指摘します。
(つづく)
【土砂災害防止法のしくみ】
都道府県が「土砂災害危険箇所」の地形や地質などを調べ、土砂災害がおきたときの破壊力などを計測。「土砂災害警戒区域」と通常の木造住宅が破壊される危険がある「土砂災害特別警戒区域」とを指定します。
「しんぶん赤旗」日刊紙 2014年9月8日付掲載
高度経済成長期に、宅地開発で山際まで家が建ったというのは広島だけではない事です。また、「警戒区域」「特別警戒区域」に指定されると資産価値がさがるっていうのも、地震と同じことです。
要は、危険に対してどのように備えるか、対策をとるかですね。