第2次世界大戦終結70年 第4部 安倍新談話 波紋と矛盾④ 戦後の国際秩序に挑戦
新談話で何を狙うのか。キーワードとなるのが「戦後レジーム(体制)からの脱却」というスローガンです。
「誤解」言うが
その意味について「靖国」派の若手リーダー格、自民党の稲田朋美政調会長は明確に語ります。
「総理が掲げる戦後レジームからの脱却というその旗、その中核にある憲法改正や安全保障法整備、さらには東京裁判史観からの脱却もまた重要なテーマだ」(1月29日、衆院予算委員会)
安倍晋三首相は国内外の批判を意識して、「戦後レジームからの脱却という言葉が、海外である種の誤解を生んでいる」「戦後レジームからの脱却とは、戦後たくさんの仕組みができて、この仕組みをまさに変えていくこと。まさに内政について言っているわけで、(国際的な)戦後体制に対し挑戦する類いのものでは全くない」(3日、衆院予算委)と述べます。
しかし憲法はじめ戦後の国内政治の枠組み・体制(レジーム)は、天皇制政府・軍部が民主主義を抑圧し侵略戦争を推進したことへの反省のうえに立っています。安倍首相の「言い訳」は自分に跳ね返ります。
ある政府関係者は「米政府関係者と話しても、戦後レジーム=(イコール)欧米のレジームと考えている。戦後レジームを変えることは欧米への挑戦、国際秩序への挑戦となり、レビジョニスト(歴史修正主義)ということになる」と語ります。
憲法や教育基本法などの「戦後レジーム」の骨格は、日本軍国主義の侵略を打ち破り、その解体、民主化を進めるとした連合国の大西洋憲章やポツダム宣言を基礎とし、その履行としてつくられたものだからです。
安倍晋三首相に質問する自民党の稲田朋美政調会長(左)
9条が「補完」
韓国の外交通商部元東北アジア局長・趙世暎(チョ・セヨン)氏は『文芸春秋SPECIAL夏(2014年)』で、東京裁判で昭和天皇の戦争責任が不問にされたことや、戦争指導者の責任も裁判後曖昧にされたことなどに触れながら、日本国憲法の存在の大きさを指摘しています。
「このような(戦後処理の)不完全性にもかかわらず、戦力を保持しない平和憲法を採択することによって日本が再び脅威にならない保障ができたため、日本の国際社会への復帰が容認されたのである。敗戦処理の不完全性が平和憲法の存在によって補完されてなんとかバランスがとれるようになったのが日本の戦後を支えた基本構造である」
アジアにとって、日本の戦後処理、戦争責任の曖昧さを補ったものが日本国憲法、とりわけ9条の平和主義だったことが深く想起されます。(つづく)
「しんぶん赤旗」日刊紙 2015年4月20日付掲載
「戦後レジーム」というと、何か悪いもののような音(いん)、響きがありますが…。その中身は、日本軍国主義の侵略を打ち破り、その解体、民主化を進めるとした連合国の大西洋憲章やポツダム宣言を基礎とし、その履行としてつくられたもの。
それからの脱却というと、まさに世界への挑戦です。
新談話で何を狙うのか。キーワードとなるのが「戦後レジーム(体制)からの脱却」というスローガンです。
「誤解」言うが
その意味について「靖国」派の若手リーダー格、自民党の稲田朋美政調会長は明確に語ります。
「総理が掲げる戦後レジームからの脱却というその旗、その中核にある憲法改正や安全保障法整備、さらには東京裁判史観からの脱却もまた重要なテーマだ」(1月29日、衆院予算委員会)
安倍晋三首相は国内外の批判を意識して、「戦後レジームからの脱却という言葉が、海外である種の誤解を生んでいる」「戦後レジームからの脱却とは、戦後たくさんの仕組みができて、この仕組みをまさに変えていくこと。まさに内政について言っているわけで、(国際的な)戦後体制に対し挑戦する類いのものでは全くない」(3日、衆院予算委)と述べます。
しかし憲法はじめ戦後の国内政治の枠組み・体制(レジーム)は、天皇制政府・軍部が民主主義を抑圧し侵略戦争を推進したことへの反省のうえに立っています。安倍首相の「言い訳」は自分に跳ね返ります。
ある政府関係者は「米政府関係者と話しても、戦後レジーム=(イコール)欧米のレジームと考えている。戦後レジームを変えることは欧米への挑戦、国際秩序への挑戦となり、レビジョニスト(歴史修正主義)ということになる」と語ります。
憲法や教育基本法などの「戦後レジーム」の骨格は、日本軍国主義の侵略を打ち破り、その解体、民主化を進めるとした連合国の大西洋憲章やポツダム宣言を基礎とし、その履行としてつくられたものだからです。
安倍晋三首相に質問する自民党の稲田朋美政調会長(左)
9条が「補完」
韓国の外交通商部元東北アジア局長・趙世暎(チョ・セヨン)氏は『文芸春秋SPECIAL夏(2014年)』で、東京裁判で昭和天皇の戦争責任が不問にされたことや、戦争指導者の責任も裁判後曖昧にされたことなどに触れながら、日本国憲法の存在の大きさを指摘しています。
「このような(戦後処理の)不完全性にもかかわらず、戦力を保持しない平和憲法を採択することによって日本が再び脅威にならない保障ができたため、日本の国際社会への復帰が容認されたのである。敗戦処理の不完全性が平和憲法の存在によって補完されてなんとかバランスがとれるようになったのが日本の戦後を支えた基本構造である」
アジアにとって、日本の戦後処理、戦争責任の曖昧さを補ったものが日本国憲法、とりわけ9条の平和主義だったことが深く想起されます。(つづく)
「しんぶん赤旗」日刊紙 2015年4月20日付掲載
「戦後レジーム」というと、何か悪いもののような音(いん)、響きがありますが…。その中身は、日本軍国主義の侵略を打ち破り、その解体、民主化を進めるとした連合国の大西洋憲章やポツダム宣言を基礎とし、その履行としてつくられたもの。
それからの脱却というと、まさに世界への挑戦です。