安全求め続けて JR福知山線事故10年② 遺族の声投げかける
事故で長女の中村道子さん(当時40)を失った藤崎光子さん(75)=大阪市=の胸に光る黄色のリボン形のバッジ。昨年4月、韓国で300人以上の犠牲者を出した客船セウォル、号事故の追悼の思いが込められています。
藤崎さんは同年12月、セウォル号事故の遺族らと兵庫県尼崎市で会い、「真相究明と再発防止がお互いの願いであり、二度と誰も被害者にならないようにする使命が遺族にある」と語り合いました。
この10年間、日航機墜落事故(1985年)や信楽高原鉄道列車衝突事故(91年)をはじめ、多くの事故の遺族らと交流してきました。「遺族の方々との交流では、何も言わなくても気持ちが通じ合うものがあります」
藤崎光子さん
責任追及を決意
藤崎さんは福知山線事故で道子さんの遺体を確認したあと、「安全より利益を優先したJRの責任追及のために、残された人生をささげたい」と決意。遺族らの連携を呼びかけ、「4・25ネットワーク」の結成につなげました。
以来、ネットワークとして何度もJR西日本や関係省庁と交渉、要請し、遺族、被害者の声を届けてきました。
しかし、この10年間、JR西は事故をめぐって隠ぺいや保身、不誠実な言動を繰り返し、遺族の気持ちは傷つけられてきました。
藤崎さんは、「悲しみが癒やされることはありません。毎日、道子がいてくれたらどんなに助かるかということばかりです。道子は私と夫の親の世話をする、と言っていましたから、天国でゆっくり眠っていることはなく、忙しくしているのではないでしょうか」と話します。
事故を防ぐATS―P(自動列車停止装置)の設置を指示する義務を怠ったとして、JR西の歴代4社長が業務上過失致死傷罪に問われた刑事裁判が10年に始まり、藤崎さんらは被害者参加制度を利用して、証拠閲覧や意見陳述、被告人への質問を行ってきました。
裁判では、証人のJR西社員らが「運転士がカーブで大幅に速度超過するとは考えられなかった」などと安全対策の基本を踏み外し、あからさまに歴代社長らをかばう証言に終始。ここまで判決はいずれも被告無罪。事故の核心は隠されてきました。
藤崎さんは、「無罪判決は残念ですが、法廷で歴代社長の声を聞き、私たちの声を直接ぶつけることができたことには意味がありました」と語ります。
「組織罰」導入を
藤崎さんら遺族の有志は昨年3月から企業など組織の責任を問う「組織罰」の導入についての勉強会を、法律の専門家を交えて開いてきました。
藤崎さんは語ります。
「企業名公表や入札制限、検査の厳格化といった是正措置など、組織罰について日本独自のあり方を考えていけたらよいのではないでしょうか。社会の発展とともに司法も変えていく必要があると訴えていきたい」
(つづく)
「しんぶん赤旗」日刊紙 2015年4月25日付掲載
遺族の藤崎さんが、裁判では無罪判決だったけど「法廷で歴代社長の声を聞き、私たちの声を直接ぶつけることができたことには意味がありました」と語っていることに懐の深さを感じました。
企業など組織の責任を問う「組織罰」の導入の取り組みの発展に期待します。
事故で長女の中村道子さん(当時40)を失った藤崎光子さん(75)=大阪市=の胸に光る黄色のリボン形のバッジ。昨年4月、韓国で300人以上の犠牲者を出した客船セウォル、号事故の追悼の思いが込められています。
藤崎さんは同年12月、セウォル号事故の遺族らと兵庫県尼崎市で会い、「真相究明と再発防止がお互いの願いであり、二度と誰も被害者にならないようにする使命が遺族にある」と語り合いました。
この10年間、日航機墜落事故(1985年)や信楽高原鉄道列車衝突事故(91年)をはじめ、多くの事故の遺族らと交流してきました。「遺族の方々との交流では、何も言わなくても気持ちが通じ合うものがあります」
藤崎光子さん
責任追及を決意
藤崎さんは福知山線事故で道子さんの遺体を確認したあと、「安全より利益を優先したJRの責任追及のために、残された人生をささげたい」と決意。遺族らの連携を呼びかけ、「4・25ネットワーク」の結成につなげました。
以来、ネットワークとして何度もJR西日本や関係省庁と交渉、要請し、遺族、被害者の声を届けてきました。
しかし、この10年間、JR西は事故をめぐって隠ぺいや保身、不誠実な言動を繰り返し、遺族の気持ちは傷つけられてきました。
藤崎さんは、「悲しみが癒やされることはありません。毎日、道子がいてくれたらどんなに助かるかということばかりです。道子は私と夫の親の世話をする、と言っていましたから、天国でゆっくり眠っていることはなく、忙しくしているのではないでしょうか」と話します。
事故を防ぐATS―P(自動列車停止装置)の設置を指示する義務を怠ったとして、JR西の歴代4社長が業務上過失致死傷罪に問われた刑事裁判が10年に始まり、藤崎さんらは被害者参加制度を利用して、証拠閲覧や意見陳述、被告人への質問を行ってきました。
裁判では、証人のJR西社員らが「運転士がカーブで大幅に速度超過するとは考えられなかった」などと安全対策の基本を踏み外し、あからさまに歴代社長らをかばう証言に終始。ここまで判決はいずれも被告無罪。事故の核心は隠されてきました。
藤崎さんは、「無罪判決は残念ですが、法廷で歴代社長の声を聞き、私たちの声を直接ぶつけることができたことには意味がありました」と語ります。
「組織罰」導入を
藤崎さんら遺族の有志は昨年3月から企業など組織の責任を問う「組織罰」の導入についての勉強会を、法律の専門家を交えて開いてきました。
藤崎さんは語ります。
「企業名公表や入札制限、検査の厳格化といった是正措置など、組織罰について日本独自のあり方を考えていけたらよいのではないでしょうか。社会の発展とともに司法も変えていく必要があると訴えていきたい」
(つづく)
「しんぶん赤旗」日刊紙 2015年4月25日付掲載
遺族の藤崎さんが、裁判では無罪判決だったけど「法廷で歴代社長の声を聞き、私たちの声を直接ぶつけることができたことには意味がありました」と語っていることに懐の深さを感じました。
企業など組織の責任を問う「組織罰」の導入の取り組みの発展に期待します。