きんちゃんのぷらっとドライブ&写真撮影

「しんぶん赤旗」の記事を中心に、政治・経済・労働問題などを個人的に発信。
日本共産党兵庫県委員会で働いています。

沖縄新基地問題 地方自治から見る② なりふりかまわぬ二枚舌

2015-04-07 15:05:54 | 平和・憲法・歴史問題について
沖縄新基地問題 地方自治から見る② なりふりかまわぬ二枚舌
専修大学 白藤博行教授に聞く

―翁長雄志沖縄県知事が海底調査の停止を「指示」しました。「調査」名目で何十トンもある巨大コンクリートブロックを多数沈めでサンゴを壊しているという実態が、反対派のダイビングチームの調査などで判明したからです。これに対し、国(沖縄防衛局)は不服を申し立てました。どんな問題があるのでしょうか。

白藤 行政不服審査法の目的は、国民の権利利益を救済し、行政の適正を確保することです。
県の漁業調整規則との関係で身近な例を挙げれば、漁師さんが規則に基づく許可をとって漁業を営んでいるとき、その許可が違法・不当に取り消された場合、不服申し立てを行い、救済を求めることです。

想定はされず
ですから、そもそも行政権(公権力)の行使主体である国が、同じく行政権(公権力)の行使主体である地方公共団体の行為に対し不服申し立てすることは想定されていません。
そこで無理を通す理屈として、国は「一般私人と同様の立場に立って処分の名あて人となった」と主張し、農水相もこれを認めていますが、奇妙な論理です。海底調査が辺野古の海の埋め立てを目的としたものであることは明々白々です。そしてその埋め立てについては、公有水面埋め立て法に基づいて、国は沖縄県の「承認」を得ています。一般私人であれば埋め立て「免許」が必要なところ、行政権の主体としての「国」は、「承認」で済む特権を享受しています。ところが、この公有水面埋め立てを目的とする海底調査の許可については、突如「私人」を強調するのです。たしかに、公有水面埋め立て法と水産資源保護法・沖縄県漁業調整規則の法目的は異なるという理屈もあるでしょうが、埋め立て目的を達成するための一連の過程で、一方では行政権の主体で、他方で私人であるというのは、いかにもわかりにくい使い分けです。なりふりかまわずの二枚舌の対応というしかありません。

調整システム
こんな無理をする狙いは、行政不服審査手続きにもちこみ、その審査中は海底調査停止の知事の指示の効力を停止し、工事を続行することにあります。
本来、国と地方公共団体の関係については、地方自治法に別に調整のシステムがあります。海底調査の許可は、水産資源保護法に基づく沖縄県漁業調整規則に基づき県がこれを行うことになっています。この事務は、都道府県が処理する「法定受託事務」の一種です。国が県の事務処理を違法・不当であると考えれば、地方自治法に基づき、是正を指示したり、なおも県が従わないとき、訴訟を提起することもできる仕組みになっています。
しかし、この国の関与の仕組みを利用することになると、水産資源保護法の適切な解釈・運用の観点から、県の事務処理が適切だったかどうかが問題となるので、防衛局が不服審査の申し立てで述べたような「日米関係への悪影響など外交・防衛上の損害が生じる」という事情をあげ、是正の指示を行うことは難しいとでも考えたのでしょうか。
それにしても、いかにも無理筋の理論を振り回し、不服審査手続きに持ち込んだのも勝手ですが、国が主導した「地方分権改革」の「成果」までをないがしろにする暴論です。
(つづく)

「しんぶん赤旗」日刊紙 2015年4月6日付掲載


国は、公権力と「私人」の使い分けをやって、どうしてもボーリング調査の継続、さらには新基地建設開始をやりたいのでしょうが…。
どうしても無理があります。

沖縄新基地問題 地方自治から見る① 政権の対応は無理筋

2015-04-07 14:30:45 | 平和・憲法・歴史問題について
沖縄新基地問題 地方自治から見る① 政権の対応は無理筋
専修大学 白藤博行教授に聞く



翁長雄志(おながたけし)沖縄県知事が、名護市辺野古での米軍新基地建設のためのボーリング調査に伴う海底作業の停止指示を出しました。これを不服として、防衛省の地方防衛局の一つである沖縄防衛局は農林水産大臣に審査請求と執行停止を申し立て、林芳正農水椙は執行停止を行いました。この事態を地方自治法の観点からどうみるか、専修大学の白藤博行教授(行政法)に聞きました。
(聞き手・中祖寅一)

―難しい法律用語が錯綜(さくそう)し、複雑な状況をいっそうわかりにくくしているところがありますが。
白藤 翁長知事と安倍政権との対立の.現状は、法律論的には専門家でも正確に理解することが難しい状況です。安倍政権の対応があまりに無理筋で、法の想定外のことを積み重ね、まともな説明ができないからです。



あいさつに拍手を送る県民集会の参加者=3月21日、沖縄県名護市

審判4回下す
法的な論点を詳細に検証することは重要ですが、まずは問題の根本構図を押さえましょう。対立の根本は、米軍新基地建設の中止を求める沖縄の民意と、これを全く無視して強権的に進めようとする国との対立です。つまり「工事の中止か続行か」です。この根本問題をしっかり押さえることが重要です。
安倍政権は、仲井真弘多(なかいまひろかず)前知事から得た公有水面埋め立て「承認」、海底調査・岩礁破砕「許可」に基づき、新基地建設を進める「行政の継続性」を主張しています。
しかし、それで工事が続けられるなら、昨年の沖縄での一連の選挙での県民の審判は無意味になります。
県民は、国の新基地建設にも、仲井真前知事の公約違反の「承認」にも反対し、その「承認」を取り消しなさいと意思表示しました。
知事選だけでなく名護の市長・市議選、年夫の総選挙も含めて4回の審判を下しました。仲井真前知事は、もともと「県外移設」を主張して当選しながら、それを勝手に変えたのです。
「一貫性・継続性」を言うなら、県民の民意にこそ一貫性があります。これを否定したら民主主義の否定です。
もともと沖縄に約74%の米軍基地を押し付けている現実を拒否するという民意は、憲法9条に基づくという点でも、はるかに一貫しています。途中で変節した一人の知事の判断で、民意が勝手にゆがめられてはたまったものではありません。そのような前知事の判断をもとにした「行政の継続性・一貫性」論など全く成り立ちません。
「普天間の危険」を取り除き、基地の県内たらいまわし、辺野古への押し付けを断固として拒否する。単なる危険の県内移動はやめて、真に平和な地方自治体として、まっとうな生活や仕事を取り戻すといった県民の思いが根っこにあるのです。前知事によってなされた埋め立て承認や海底調査許可の取り消しを求める民意こそ継続し、一貫しているのです。
憲法に基づく平和と民主主義の当然の表れとして、工事中止・新基地建設中止の要求が出されているのです。これに対し、いかがわしい「法理論」を振りかざし、妨害をはかる安倍政権との対立が基本的構図です。(つづく)

「しんぶん赤旗」日刊紙 2015年4月5日付掲載


法律問題はともかく、問題の根本は「工事の中止か続行か」。
「一貫性・継続性」を言うなら、県民の民意にこそ一貫性があります。