シリーズ ウソのミックス② 雇用 非正規増で実質賃金下落
安倍晋三首相は政権に就いて以来の3年間で「110万人以上雇用が増えた」とし、2015年には正社員が26万人増えたと強調します。確かに労働者に自営業者などを加えた就業者数は2013年1月の6286万人から15年12月には6397万人に111万人増えました。しかし、役員を除く雇用者数はこの3年間で正規が36万人減ったのに対し、非正規は167万人の増加です。安倍首相はこの1年だけをとって正社員が増えたと言いますが、3年間通してみれば、増えたのは非正規ばかりです。
非正規雇用の労働者は13年1月の1823万人から増え続けて2000万人を突破。16年1月には2037万人に達しました。労働者全体に占める非正規の比率は同期間、35・3%から38%に上昇しました。
朝、職場に向かう労働者=東京都内
正社員就職者は14年半ば以降減
安倍首相は有効求人倍率が「24年ぶりの高い水準」と強調します。有効求人倍率はハローワークで求職者1人当たりに企業から何件の求人があったかを示す統計です。実際に就職が増えたかどうかを示す指標ではありません。
安倍首相は正社員が増えていると言いますが、厚生労働省の統計(一般職業紹介状況)で13年には7万人以上だった正社員の就職者数は14年半以降減り続け、16年1月には6万5000人に。民間信用調査会社、帝国データバンクは14日、正社員採用が「拡大基調に頭打ち」とする調査報告を発表しました。
毎年行っているこの調査(回答1万497社)では「正社員の予定がある」とした企業が16年度の予定で6年ぶりに減少。特に中小企業が厳しい業績の中で採用活動を抑えざ るをえなくなっていることを指摘しました。
過去最高の利益大企業還元せず
賃金についていえば、16年1月の実質賃金指数(2010年平均=100)は81・7。統計でさかのぼれる1990年以来、27年間で最低です。
実質賃金指数は物価変動の影響を除いて賃金水準を示します。低下の原因は名目賃金の伸び悩みと非正規雇用の増加、そしてアベノミクスによる物価の上昇です。
安倍首相が頼みとする大企業の賃上げは、今年、トヨタをはじめ多くが月額1500円前後という低額回答にとどまりました。大企業は14年度、軒並み過去最高の利益をあげました。それを労働者に還元しようとする姿勢はみられません。
正規、非正規による賃金の格差は、2月に厚労省が発表した2015年賃金構造基本統計調査によると、正社員32万l100円(月額)に対し「正社員以外」は20万5100円。正社員の6割程度と、大きな格差があります。低賃金の非正規雇用の増加が賃金水準全体を押し下げています。
さらに、アベノミクスによって日銀が行っている「異次元の金融緩和」政策によって物価が上昇。賃金が実質的に目減りしています。
(山田俊英)
「しんぶん赤旗」日刊紙 2016年3月31日付掲載
「安かろう、悪かろう」と粗悪商品を揶揄(やゆ)することがありますが…。
安い賃金で働かせる。
非正規労働者の場合は、安いと言っても労働の内容は正社員と同じか、上のレベル。
安倍晋三首相は政権に就いて以来の3年間で「110万人以上雇用が増えた」とし、2015年には正社員が26万人増えたと強調します。確かに労働者に自営業者などを加えた就業者数は2013年1月の6286万人から15年12月には6397万人に111万人増えました。しかし、役員を除く雇用者数はこの3年間で正規が36万人減ったのに対し、非正規は167万人の増加です。安倍首相はこの1年だけをとって正社員が増えたと言いますが、3年間通してみれば、増えたのは非正規ばかりです。
非正規雇用の労働者は13年1月の1823万人から増え続けて2000万人を突破。16年1月には2037万人に達しました。労働者全体に占める非正規の比率は同期間、35・3%から38%に上昇しました。
朝、職場に向かう労働者=東京都内
正社員就職者は14年半ば以降減
安倍首相は有効求人倍率が「24年ぶりの高い水準」と強調します。有効求人倍率はハローワークで求職者1人当たりに企業から何件の求人があったかを示す統計です。実際に就職が増えたかどうかを示す指標ではありません。
安倍首相は正社員が増えていると言いますが、厚生労働省の統計(一般職業紹介状況)で13年には7万人以上だった正社員の就職者数は14年半以降減り続け、16年1月には6万5000人に。民間信用調査会社、帝国データバンクは14日、正社員採用が「拡大基調に頭打ち」とする調査報告を発表しました。
毎年行っているこの調査(回答1万497社)では「正社員の予定がある」とした企業が16年度の予定で6年ぶりに減少。特に中小企業が厳しい業績の中で採用活動を抑えざ るをえなくなっていることを指摘しました。
過去最高の利益大企業還元せず
賃金についていえば、16年1月の実質賃金指数(2010年平均=100)は81・7。統計でさかのぼれる1990年以来、27年間で最低です。
実質賃金指数は物価変動の影響を除いて賃金水準を示します。低下の原因は名目賃金の伸び悩みと非正規雇用の増加、そしてアベノミクスによる物価の上昇です。
安倍首相が頼みとする大企業の賃上げは、今年、トヨタをはじめ多くが月額1500円前後という低額回答にとどまりました。大企業は14年度、軒並み過去最高の利益をあげました。それを労働者に還元しようとする姿勢はみられません。
正規、非正規による賃金の格差は、2月に厚労省が発表した2015年賃金構造基本統計調査によると、正社員32万l100円(月額)に対し「正社員以外」は20万5100円。正社員の6割程度と、大きな格差があります。低賃金の非正規雇用の増加が賃金水準全体を押し下げています。
さらに、アベノミクスによって日銀が行っている「異次元の金融緩和」政策によって物価が上昇。賃金が実質的に目減りしています。
(山田俊英)
「しんぶん赤旗」日刊紙 2016年3月31日付掲載
「安かろう、悪かろう」と粗悪商品を揶揄(やゆ)することがありますが…。
安い賃金で働かせる。
非正規労働者の場合は、安いと言っても労働の内容は正社員と同じか、上のレベル。