熊本地震 震災関連死を防ぐために
熊本県は、一連の地震による饅災関連死の疑いは16人に上るとしています。震災発生から2週間、エコノミークラス症候群(肺塞栓症)を含め震災関連死を防ぐ上で大切なことは―。阪神・淡路大震災(1995年)で震災関連死に警鐘を鳴らして以来、研究をつづけている神戸協同病院(神戸市長田区)の上田耕蔵院長に聞きました。(西口友紀恵)
神戸協同病院院長 上田耕蔵さんに聞く
―今回、車中泊などによる重症の肺塞栓症の報告が相次ぎ、26日までに入院が必要とされた人は40人。現地の専門家から、入院の必要はないが高リスクの人はその数倍に上るのではないかとの声も出ています。
上田 震度7が2回続くという観測史上例のない激震に遭い、余震も収まらないなか、被災者には想像を絶するストレスがかかっています。その象徴が肺塞栓症の多発ではないでしょうか。幼児や障害児、認知症の家族がいるなど、さまざまな事情を抱え避難所を避けて車中泊を余儀なくされている人、情報が届いていない人などへの注意喚起や援助が大切です。
テントをまわり、健康状態を聞く民医連ボランティアの人たち=4月25日、熊本県益城町(武田祐一撮影)
ストレスも要因
―これまでの震災関連死のなかで、心疾患や脳卒中などの循環器疾患が大きな比重を占めています。
上田 余震が長くつづいた中越地震(2004年)では、震災関連死の約6割は循環器疾患でした。今回、中越地震と同様の傾向になると思われます。
―ストレスはどのように体に異変を起こすのですか。
上田 精神的ショックと過酷な避難生活は、交感神経を緊張させます。血圧を上げ、同時に起こる脱水と相まって血液の粘度が上昇し、心筋梗塞や脳卒中などを起こしやすくします。また免疫力が低下して肺炎が起こりやすくなります。
これまでの震災の例から、震災関連死が地震による直接の死者数と同程度になる危険性もあるとみています。
高齢者への配慮
―関連死をこれ以上増やさないためには?
上田 発生から3週目に入り、ポイントは3点あります。①これまで耐えてきた人も疲労が蓄積し、病気が出てくる時期です。後期高齢者、障害者、持病のある人など高リスクの人を把握してフォローしていくことが大事です。②足腰が弱る(生活不活発病の)高齢者が増えてきます。また物忘れが進みます。体操や歩行は廃用だけでなく肺塞栓症も予防してくれます。③ライフラインの回復に伴い、避難所から家に戻る人が増えます。大半の人の生活場所は在宅となります。
―復興庁によると、東日本大震災の震災関連死の約半数は在宅で発生しています。
上田 避難所などと比べて、在宅で高リスクの人にはどうしても目が届きにくくなります。とくに1人暮らしの高齢者への配慮が必要です。地域を集中的に訪ねるなどして、弱ってきた人をいち早く見つけ、再開した医療や介護サービスなどにつなげることが大事です。
健康は住まいからです。ライフラインの復旧と仮設住宅の早期建設はいうまでもありません。ボランティアによる片付け支援も必要です。
「しんぶん赤旗」日刊紙 2016年4月28日付掲載
震災で助かった命が、エコノミークラス症候群などので失われることのないように、しっかりとケアしないといけません。
避難所だけでなく、地域の見回りが必要ですね。
熊本県は、一連の地震による饅災関連死の疑いは16人に上るとしています。震災発生から2週間、エコノミークラス症候群(肺塞栓症)を含め震災関連死を防ぐ上で大切なことは―。阪神・淡路大震災(1995年)で震災関連死に警鐘を鳴らして以来、研究をつづけている神戸協同病院(神戸市長田区)の上田耕蔵院長に聞きました。(西口友紀恵)
神戸協同病院院長 上田耕蔵さんに聞く
―今回、車中泊などによる重症の肺塞栓症の報告が相次ぎ、26日までに入院が必要とされた人は40人。現地の専門家から、入院の必要はないが高リスクの人はその数倍に上るのではないかとの声も出ています。
上田 震度7が2回続くという観測史上例のない激震に遭い、余震も収まらないなか、被災者には想像を絶するストレスがかかっています。その象徴が肺塞栓症の多発ではないでしょうか。幼児や障害児、認知症の家族がいるなど、さまざまな事情を抱え避難所を避けて車中泊を余儀なくされている人、情報が届いていない人などへの注意喚起や援助が大切です。
テントをまわり、健康状態を聞く民医連ボランティアの人たち=4月25日、熊本県益城町(武田祐一撮影)
ストレスも要因
―これまでの震災関連死のなかで、心疾患や脳卒中などの循環器疾患が大きな比重を占めています。
上田 余震が長くつづいた中越地震(2004年)では、震災関連死の約6割は循環器疾患でした。今回、中越地震と同様の傾向になると思われます。
―ストレスはどのように体に異変を起こすのですか。
上田 精神的ショックと過酷な避難生活は、交感神経を緊張させます。血圧を上げ、同時に起こる脱水と相まって血液の粘度が上昇し、心筋梗塞や脳卒中などを起こしやすくします。また免疫力が低下して肺炎が起こりやすくなります。
これまでの震災の例から、震災関連死が地震による直接の死者数と同程度になる危険性もあるとみています。
高齢者への配慮
―関連死をこれ以上増やさないためには?
上田 発生から3週目に入り、ポイントは3点あります。①これまで耐えてきた人も疲労が蓄積し、病気が出てくる時期です。後期高齢者、障害者、持病のある人など高リスクの人を把握してフォローしていくことが大事です。②足腰が弱る(生活不活発病の)高齢者が増えてきます。また物忘れが進みます。体操や歩行は廃用だけでなく肺塞栓症も予防してくれます。③ライフラインの回復に伴い、避難所から家に戻る人が増えます。大半の人の生活場所は在宅となります。
―復興庁によると、東日本大震災の震災関連死の約半数は在宅で発生しています。
上田 避難所などと比べて、在宅で高リスクの人にはどうしても目が届きにくくなります。とくに1人暮らしの高齢者への配慮が必要です。地域を集中的に訪ねるなどして、弱ってきた人をいち早く見つけ、再開した医療や介護サービスなどにつなげることが大事です。
健康は住まいからです。ライフラインの復旧と仮設住宅の早期建設はいうまでもありません。ボランティアによる片付け支援も必要です。
「しんぶん赤旗」日刊紙 2016年4月28日付掲載
震災で助かった命が、エコノミークラス症候群などので失われることのないように、しっかりとケアしないといけません。
避難所だけでなく、地域の見回りが必要ですね。