検証アベノミクス② 異次元の金融緩和① マイナス金利 冷え込む消費
2013年4月4日、日本銀行が「量的・質的金融緩和政策」(異次元の金融緩和)を始めて3年になります。アベノミクス(安倍晋三政権の経済政策)の「第1の矢」として鳴り物入りで始まったものの破綻し、混迷の道を突き進んでいます。(山田俊英)
「5分で読めるマイナス金利」―日本銀行のホームページにこう題した一問一答が3月25日から載っています。
「それ(マイナス金利)で消費が悪くなったりしない?」「物価が下がって何がわるいの?」
2月16日から実施されている「マイナス金利付き量的・質的金融緩和政策」への批判を意識した設問が並んでいます。国民の反発、不安がいかに強いかを物語っています。
落ち込む2指標
メディアの世論調査でも「マイナス金利による景気回復は期待できない」61%(朝日新聞2月13~14日実施)、「マイナス金利で景気の好循環は期待できない」66・3%(FNN2月20~21日実施)と批判が圧倒的です。
消費や景気の動向を測る政府の二つの指標が2月に落ち込みました。一つは消費者心理の明るさを示す指標、消費者態度指数が前月比で2カ月連続低下。街角の景況感を示す景気ウオッチャー調査も現状判断指数が2カ月連続で悪化。内閣府は基調判断を「緩やかな回復基調」から「弱さがみられる」へ15カ月ぶりに下方修正しました。いずれもマイナス金利で預金金利が軒並み引き下げられたことが影響したとみられます。
「マイナス金利政策」では、民間銀行が日銀に預ける日銀当座預金の一部に日銀がマイナス0・1%の金利を適用しています。金融機関にお金を預ければ利子が付くのが当たり前ですが、逆に預けた民間銀行から日銀がお金を取るのがマイナス金利政策です。
異次元の金融緩和は、日銀が大量の国債を民間金融機関から買い取り、その代金を払うことによってお金の供給を増やす政策です。市場でお金の量が増えれば、金利が下がって経済活動が活発になる、人々が物価上昇を予想するようになれば消費が増える―ということでしたが、3年間実施しても効果はあがりません。さらに金利を下げることを目的にして導入したのがマイナス金利政策です。
東京都中央区にある日銀本店
預金金利が低下
日銀が1月26日にマイナス金利政策を決定すると、民間銀行はいっせいに預金金利の引き下げに走りました。3メガバンクの1年物定期預金の利率は0・01%。100万円を1年間預けても利子は100円しかつきません。ただでさえ少なかった銀行利子がゼロに近づき、国民はさらに生活を切り詰めざるをえなくなりました。
預金より若干利回りがいいということで買われていた個人向け国債は運用損が出るので一部販売停止。貯蓄性の高さを売り物にしていた一時払い終身保険も保険料が値上げされました。比較的低いリスクで生活資金を運用できる手段にも影響が及んでいます。
お金の流れを追うマネーストック統計(日銀)は2月、現金の平均残高が13年ぶりの高い伸びとなりました。「たんす預金」が広がった可能性があります。
住宅ローンの金利は下がりました。既存のローンを、より金利の低いものに借り換えるという点では消費者に有利です。しかし、物価上昇によって15年の全国新築マンション平均価格はバブル期を上回る4618万円です。実質賃金が増えないので、住宅ローン金利の低下では新規の住宅建設は増えません。
アベノミクスがもたらした生活苦はマイナス金利政策によっていっそう深刻化しています。
(つづく)(この項5回連載です)
「しんぶん赤旗」日刊紙 2016年4月6日付掲載
物価上昇が予想されると、消費者が物を買って景気が良くなると言いますが…。先立つものが無いので逆に買い控えが進んでいます。
金利低下が逆に景気を悪くしています。
2013年4月4日、日本銀行が「量的・質的金融緩和政策」(異次元の金融緩和)を始めて3年になります。アベノミクス(安倍晋三政権の経済政策)の「第1の矢」として鳴り物入りで始まったものの破綻し、混迷の道を突き進んでいます。(山田俊英)
「5分で読めるマイナス金利」―日本銀行のホームページにこう題した一問一答が3月25日から載っています。
「それ(マイナス金利)で消費が悪くなったりしない?」「物価が下がって何がわるいの?」
2月16日から実施されている「マイナス金利付き量的・質的金融緩和政策」への批判を意識した設問が並んでいます。国民の反発、不安がいかに強いかを物語っています。
落ち込む2指標
メディアの世論調査でも「マイナス金利による景気回復は期待できない」61%(朝日新聞2月13~14日実施)、「マイナス金利で景気の好循環は期待できない」66・3%(FNN2月20~21日実施)と批判が圧倒的です。
消費や景気の動向を測る政府の二つの指標が2月に落ち込みました。一つは消費者心理の明るさを示す指標、消費者態度指数が前月比で2カ月連続低下。街角の景況感を示す景気ウオッチャー調査も現状判断指数が2カ月連続で悪化。内閣府は基調判断を「緩やかな回復基調」から「弱さがみられる」へ15カ月ぶりに下方修正しました。いずれもマイナス金利で預金金利が軒並み引き下げられたことが影響したとみられます。
「マイナス金利政策」では、民間銀行が日銀に預ける日銀当座預金の一部に日銀がマイナス0・1%の金利を適用しています。金融機関にお金を預ければ利子が付くのが当たり前ですが、逆に預けた民間銀行から日銀がお金を取るのがマイナス金利政策です。
異次元の金融緩和は、日銀が大量の国債を民間金融機関から買い取り、その代金を払うことによってお金の供給を増やす政策です。市場でお金の量が増えれば、金利が下がって経済活動が活発になる、人々が物価上昇を予想するようになれば消費が増える―ということでしたが、3年間実施しても効果はあがりません。さらに金利を下げることを目的にして導入したのがマイナス金利政策です。
東京都中央区にある日銀本店
異次元緩和の経緯 | |
2012年12月 | 第2次安倍政権発足 |
2013年1月 | 政府・日銀が物価目標を2%とする共同声明 |
3月 | 黒田東彦氏が日銀総裁に就任 |
4月 | 量的・質的金融緩和(異次元の金融緩和)を決定 |
2014年10月 | 追加金融緩和 |
2015年4月 | 物価目標の達成時期を「l6年度前半ごろ」に先送り |
10月 | 物価目標の達成時期を「16年度後半ごろ」に先送り |
12月 | 異次元緩和の「補完措置」を決定 |
2016年1月 | マイナス金利政策の導入を決定(実施は2月)。物価目標の達成時期を「17年度前半ごろ」に先送り |
預金金利が低下
日銀が1月26日にマイナス金利政策を決定すると、民間銀行はいっせいに預金金利の引き下げに走りました。3メガバンクの1年物定期預金の利率は0・01%。100万円を1年間預けても利子は100円しかつきません。ただでさえ少なかった銀行利子がゼロに近づき、国民はさらに生活を切り詰めざるをえなくなりました。
預金より若干利回りがいいということで買われていた個人向け国債は運用損が出るので一部販売停止。貯蓄性の高さを売り物にしていた一時払い終身保険も保険料が値上げされました。比較的低いリスクで生活資金を運用できる手段にも影響が及んでいます。
お金の流れを追うマネーストック統計(日銀)は2月、現金の平均残高が13年ぶりの高い伸びとなりました。「たんす預金」が広がった可能性があります。
住宅ローンの金利は下がりました。既存のローンを、より金利の低いものに借り換えるという点では消費者に有利です。しかし、物価上昇によって15年の全国新築マンション平均価格はバブル期を上回る4618万円です。実質賃金が増えないので、住宅ローン金利の低下では新規の住宅建設は増えません。
アベノミクスがもたらした生活苦はマイナス金利政策によっていっそう深刻化しています。
(つづく)(この項5回連載です)
「しんぶん赤旗」日刊紙 2016年4月6日付掲載
物価上昇が予想されると、消費者が物を買って景気が良くなると言いますが…。先立つものが無いので逆に買い控えが進んでいます。
金利低下が逆に景気を悪くしています。