検証アベノミクス⑥ 異次元の金融緩和⑤ 国債“爆買い”のリスク
「日本銀行のみが(国債の)最終的な買い手となり、市場から財政ファイナンスとみなされるリスクが高まる」
マイナス金利導入を決めた1月28、29日の日銀金融政策決定会合で審議委員の一人がこう述べて反対しました。
国債を発行する財務省=東京都千代田区
財政赤字穴埋め
財政ファイナンスとは、日銀が国債を買い入れて政府の財政赤字の穴埋めをすることです。戦前・戦中、巨額の戦費をこの方法で調達したため、国家財政が破綻しました。この教訓から、財政法5条は日銀が国債を引き受けることを禁じています。日銀が財政赤字を穴埋めするために大量の国債を買っていると市場からみられれば、国債の信認が損なわれ、価格が暴落しかねません。
黒田東彦日銀総裁自身、以前、「日本銀行による多額の国債買い入れが、内外の投資家から、ひとたび財政ファイナンスと受け取られれば、国債市場は不安定化し、長期金利が実態から乖離(かいり)して上昇する可能性がある。金融システムや経済全体に悪影響を及ぼしかねない」(2013年4月12日の講演)と語っていました。
新規発行国債を直接買っていないから財政ファイナンスではないと麻生太郎財務相、黒田総裁は言い張りますが、異次元緩和で日銀は、新規発行国債の8割にあたる額の国債を民間金融機関から“爆買い”しています。
日銀が保有する長期国債は異次元緩和が始まった13年4月には98兆円でしたが、16年3月には300兆円を超えました。
名目国内総生産(GDP)比は同期間に20%から約60%に上昇する見込みです。いまや日本国債の29・9%(15年9月末での財務省集計)を日銀が保有し、民間銀行(30・5%)を抜いてトップになる勢いです。
異次元緩和は国債市場との関係でも限界が見えています。日銀は長期国債の保有残高が毎年80兆円増えるよう買い入れを進めています。日本の国債市場の規模は約900兆円。日銀が大量の国債を買い占めるため、民間金融機関の取引量が減り、国債市場が不安定化しかねません。
国債市場の取引量が減れば、いずれ日銀が買う国債も枯渇します。国際通貨基金(IMF)は15年8月に発表した報告書で、日銀の今のペースでの国債買い入れは17~18年に限界に達すると指摘しました。日銀は異次元緩和で「17年度前半ころ」までに2%の物価目標を達成するとしていますが、それ以上続けようにも、国債を購入できない事態に陥ることが予想されます。
「出口戦略」なし
さらに大きな問題は、異次元緩和はどうやったら終わることができるか、「出口戦略」がないことです。
京都大学大学院の翁邦雄教授は「日銀のスタンスは量的・質的緩和を可能にするために長期国債市場に大規模なバブルをつくる、というものだ」(『週刊金融財政事情』)と指摘し、「この枠組みを手仕舞うときにバブルが崩壊し、金融システムが不安定化しかねない」と警告します。「出口」について黒田総裁は「時期尚早」と繰り返しています。
岩田一政元日銀副総裁が理事長を務める日本経済研究センターは、異次元緩和からの「出口局面」で日銀が赤字を計上し、同行が政府に納める国庫納付金が最低3年間、場合によっては6年間、ゼロになると試算しました。政府が見込んでいる日銀の国庫納付金は2024年まで毎年5000億円。財政に穴が開けば、その分は国民の負担となります。
異次元緩和は物価高で国民を苦しめ、金融市場を不安定化させています。財政にも危険をもたらしています。根源にあるのは日銀を政権維持の手足に使うアベノミクスです。異次元緩和から撤退し、金融政策を立て直すためにまず必要なことは安倍晋三政権の退場です。
(おわり)
「しんぶん赤旗」日刊紙 2016年4月14日付掲載
国債の発行残高が、GDPをはるかに上回っていることも問題ですが…。せめて民間銀行、民間企業が保有することで安定性が保たれています。
それが、日銀が買い上げるってことになれば、財政赤字やり放題、国債の信用が失われ、しいては日本国の通貨「円」の信用も失われてしまいます。
まさに亡国の政治、財政です。
「日本銀行のみが(国債の)最終的な買い手となり、市場から財政ファイナンスとみなされるリスクが高まる」
マイナス金利導入を決めた1月28、29日の日銀金融政策決定会合で審議委員の一人がこう述べて反対しました。
国債を発行する財務省=東京都千代田区
財政赤字穴埋め
財政ファイナンスとは、日銀が国債を買い入れて政府の財政赤字の穴埋めをすることです。戦前・戦中、巨額の戦費をこの方法で調達したため、国家財政が破綻しました。この教訓から、財政法5条は日銀が国債を引き受けることを禁じています。日銀が財政赤字を穴埋めするために大量の国債を買っていると市場からみられれば、国債の信認が損なわれ、価格が暴落しかねません。
黒田東彦日銀総裁自身、以前、「日本銀行による多額の国債買い入れが、内外の投資家から、ひとたび財政ファイナンスと受け取られれば、国債市場は不安定化し、長期金利が実態から乖離(かいり)して上昇する可能性がある。金融システムや経済全体に悪影響を及ぼしかねない」(2013年4月12日の講演)と語っていました。
新規発行国債を直接買っていないから財政ファイナンスではないと麻生太郎財務相、黒田総裁は言い張りますが、異次元緩和で日銀は、新規発行国債の8割にあたる額の国債を民間金融機関から“爆買い”しています。
日銀が保有する長期国債は異次元緩和が始まった13年4月には98兆円でしたが、16年3月には300兆円を超えました。
名目国内総生産(GDP)比は同期間に20%から約60%に上昇する見込みです。いまや日本国債の29・9%(15年9月末での財務省集計)を日銀が保有し、民間銀行(30・5%)を抜いてトップになる勢いです。
異次元緩和は国債市場との関係でも限界が見えています。日銀は長期国債の保有残高が毎年80兆円増えるよう買い入れを進めています。日本の国債市場の規模は約900兆円。日銀が大量の国債を買い占めるため、民間金融機関の取引量が減り、国債市場が不安定化しかねません。
国債市場の取引量が減れば、いずれ日銀が買う国債も枯渇します。国際通貨基金(IMF)は15年8月に発表した報告書で、日銀の今のペースでの国債買い入れは17~18年に限界に達すると指摘しました。日銀は異次元緩和で「17年度前半ころ」までに2%の物価目標を達成するとしていますが、それ以上続けようにも、国債を購入できない事態に陥ることが予想されます。
「出口戦略」なし
さらに大きな問題は、異次元緩和はどうやったら終わることができるか、「出口戦略」がないことです。
京都大学大学院の翁邦雄教授は「日銀のスタンスは量的・質的緩和を可能にするために長期国債市場に大規模なバブルをつくる、というものだ」(『週刊金融財政事情』)と指摘し、「この枠組みを手仕舞うときにバブルが崩壊し、金融システムが不安定化しかねない」と警告します。「出口」について黒田総裁は「時期尚早」と繰り返しています。
岩田一政元日銀副総裁が理事長を務める日本経済研究センターは、異次元緩和からの「出口局面」で日銀が赤字を計上し、同行が政府に納める国庫納付金が最低3年間、場合によっては6年間、ゼロになると試算しました。政府が見込んでいる日銀の国庫納付金は2024年まで毎年5000億円。財政に穴が開けば、その分は国民の負担となります。
異次元緩和は物価高で国民を苦しめ、金融市場を不安定化させています。財政にも危険をもたらしています。根源にあるのは日銀を政権維持の手足に使うアベノミクスです。異次元緩和から撤退し、金融政策を立て直すためにまず必要なことは安倍晋三政権の退場です。
(おわり)
「しんぶん赤旗」日刊紙 2016年4月14日付掲載
国債の発行残高が、GDPをはるかに上回っていることも問題ですが…。せめて民間銀行、民間企業が保有することで安定性が保たれています。
それが、日銀が買い上げるってことになれば、財政赤字やり放題、国債の信用が失われ、しいては日本国の通貨「円」の信用も失われてしまいます。
まさに亡国の政治、財政です。