韓国総選挙 変革求める人々(中) 地域主義から新時代
韓国は、選挙で地域主義が色濃く表れます。ところが今回の総選挙では、これまで保守一色だった南東部の慶尚道で、野党「共に民主党」が議席を獲得。政界に衝撃を与えました。
「慶尚道は、保守以外の政党は受け付けないという雰囲気がありましたが、今回の選挙で感じたのは、変化を望む声の強さです」
こう話すのは、李南信(イ・ナムシン)さん(51)です。慶尚北道慶州市から無所属で立候補した人権弁護士、権英国(クォン・ヨングク)氏の選挙対策本部責任者を務めました。
「大統領の一方的なやり方にあきれていた人、生活苦を訴える人、選挙自体を拒否する反応もあった。そんな中で権弁護士は、与党が打ち出せない偏差値重視の学校運営の改善や脱原発、非正規雇用問題の解決などを訴えました」
李南信さん
変化生む契機に
地域住民に話し合いを呼び掛けると、若者や学校に子どもを通わせる親の世代が集まってきました。「民心が揺れていると感じた」といいます。
若者、女性、都心部で票を集め、得票率は約16%。「議席獲得には届きませんでしたが、与党が十数年議席を独占してきた地域で、変化を生み出す契機にはなったのではないか」と語ります。
一方、「共に民主党」の地盤、南西部の湖南地域(光州市、全羅道)でも変化が起きました。同党は光州出身の金大中(キム・デジュン)、廬武鉉(ノ・ムヒョン)両元大統領が発展させた「民主党」の流れをくむ政党で、つねに議席を確保してきました。
しかし今回、同地域で第1党となったのは「国民の党」です。「共に民主党」を離党した議員らが結成した同党が、28議席中23議席を獲得。与党セヌリ党も2議席を獲得し、「共に民主党」は3議席にとどまりました。
この間、地元では党をまとめきれず、分裂状態になったことなどに批判があがっていました。
慶北大学法学部の金昌禄(キム・チャンロク)教授(55)は「野党第1党に対する警告だ」と分析します。国民の党についても「湖南以外の小選挙区では2議席の確保に終わった。与党も野党も全羅道の意志をどう受け止め、どのような政治をしていくのか、国民は見守っている」と強調します。
選挙期間中の10日、ソウル市内で「国民の党」が行った街頭宣伝
地域対立に亀裂
今回の選挙で、1987年の民主化以来続く“保守の慶尚道”と“進歩の全羅道”という「地域対立に亀裂が生じた」と金教授は指摘します。
「時代の変化を感じさせる事態です。その変化を生んだのが20代、30代であるという分析がある。今回の選挙で一番重要なのは、積極的に政治参加するという国民の躍動性が復活し、若い世代の政治意識が成長し、国民の手で政治が変えられるという確信を得たことだといえるでしょう」(ソウル=栗原千鶴写真も)(つづく)
「しんぶん赤旗」日刊紙 2016年4月18日付掲載
韓国でも、保守の地域、革新の地域に関係なく悪政にに対しては批判の声があがり、投票行動に結びついている。
日本でも軌を一にして、野党の共闘が始まっている。
韓国は、選挙で地域主義が色濃く表れます。ところが今回の総選挙では、これまで保守一色だった南東部の慶尚道で、野党「共に民主党」が議席を獲得。政界に衝撃を与えました。
「慶尚道は、保守以外の政党は受け付けないという雰囲気がありましたが、今回の選挙で感じたのは、変化を望む声の強さです」
こう話すのは、李南信(イ・ナムシン)さん(51)です。慶尚北道慶州市から無所属で立候補した人権弁護士、権英国(クォン・ヨングク)氏の選挙対策本部責任者を務めました。
「大統領の一方的なやり方にあきれていた人、生活苦を訴える人、選挙自体を拒否する反応もあった。そんな中で権弁護士は、与党が打ち出せない偏差値重視の学校運営の改善や脱原発、非正規雇用問題の解決などを訴えました」
李南信さん
変化生む契機に
地域住民に話し合いを呼び掛けると、若者や学校に子どもを通わせる親の世代が集まってきました。「民心が揺れていると感じた」といいます。
若者、女性、都心部で票を集め、得票率は約16%。「議席獲得には届きませんでしたが、与党が十数年議席を独占してきた地域で、変化を生み出す契機にはなったのではないか」と語ります。
一方、「共に民主党」の地盤、南西部の湖南地域(光州市、全羅道)でも変化が起きました。同党は光州出身の金大中(キム・デジュン)、廬武鉉(ノ・ムヒョン)両元大統領が発展させた「民主党」の流れをくむ政党で、つねに議席を確保してきました。
しかし今回、同地域で第1党となったのは「国民の党」です。「共に民主党」を離党した議員らが結成した同党が、28議席中23議席を獲得。与党セヌリ党も2議席を獲得し、「共に民主党」は3議席にとどまりました。
この間、地元では党をまとめきれず、分裂状態になったことなどに批判があがっていました。
慶北大学法学部の金昌禄(キム・チャンロク)教授(55)は「野党第1党に対する警告だ」と分析します。国民の党についても「湖南以外の小選挙区では2議席の確保に終わった。与党も野党も全羅道の意志をどう受け止め、どのような政治をしていくのか、国民は見守っている」と強調します。
選挙期間中の10日、ソウル市内で「国民の党」が行った街頭宣伝
地域対立に亀裂
今回の選挙で、1987年の民主化以来続く“保守の慶尚道”と“進歩の全羅道”という「地域対立に亀裂が生じた」と金教授は指摘します。
「時代の変化を感じさせる事態です。その変化を生んだのが20代、30代であるという分析がある。今回の選挙で一番重要なのは、積極的に政治参加するという国民の躍動性が復活し、若い世代の政治意識が成長し、国民の手で政治が変えられるという確信を得たことだといえるでしょう」(ソウル=栗原千鶴写真も)(つづく)
「しんぶん赤旗」日刊紙 2016年4月18日付掲載
韓国でも、保守の地域、革新の地域に関係なく悪政にに対しては批判の声があがり、投票行動に結びついている。
日本でも軌を一にして、野党の共闘が始まっている。