闇暴いたパナマ文書 税逃れのツケ貧困層に 富裕層の脅威は民主主義
たった一つの法律事務所からの情報漏えいが、世界の政界、経済界を揺るがしています。いわゆる「パナマ文書」です。世界のジャーナリスト集団が協力して膨大な情報を分析しています。タックスヘイブン(租税回避地)を利用した多国籍企業と富裕層、そして各国の指導者たちの税逃れの一端を明るみに出しました。
A 南ドイツ新聞と「国際調査報道ジャーナリスト連合」が「パナマ文書」の調査結果を発表したのは3日のことだった。5月上旬には、企業・個人リストの完全版が公開される予定だという。
B 一連の機密文書は、パナマの法律事務所、モサック・フォンセカによって作成されたものだ。対象となっている機密情報は、1977年から2015年の約40年間にわたり作成されたもの。記録数は1150万件に達する。税逃れのために設立された法人は21万4488社。200以上の国・地域と結びついている。
C 各国の指導者や富裕層、多国籍企業がそこに富を隠しこんでいるんだね。

「パナマ文書」の出どころとなった法律事務所「モサック・フォンセカ」の看板=4月13日、パナマ(ロイター)
“天国”「と“地獄”
A 各国の税務当局の手を逃れる複雑な仕組みをつくりあげるには、巨大銀行の世界的ネットワークだけでなく、法律事務所や会計事務所の存在が欠かせない。今回の舞台となったモサック・フォンセカは、税逃れのために海外企業設立を専門とする法律事務所で、英ガーディアン紙によると、世界で4番目に大きな法律事務所だという。
C 漏えいした膨大な機密文書もタックスヘイブンの氷山の一角、ということだね。
A タックスヘイブンの特徴は、①全くの無税か名目的な税のみ②効果的な情報交換が行われていないこと③透明性に欠けていること④実質的な経済活動がない―ことだ。
C 悪事を働いてもバレないのか。タックスヘイブンは、富裕層と多国籍企業にとってグローバル資本主義が生み出した“天国”のようなものだね。
A “天国”があるということは、その一方には“地獄”があるということだ。多国籍企業や富裕者による税逃れは、庶民への増税や途上国にツケが回されてしまう。
B 世界各地に活動拠点を有する多国籍企業の場合、関連企業間で取引された生産とサービスの設定価格の操作を使い、タックスヘイブンに利益を移すことで税逃れをおこなう。世界のどこで利益を上げたかを自在に操作することが可能であれば、途上国が貧困削減などに必要な税収を減らすという悪影響をもたらす。
A 国際協力団体のオックスファム・ジャパンは、「租税回避地の恩恵を受けられる裕福な個人や多国籍企業は、各国政府が得られるはずの税収入を、何十億ドルという単位で奪い取っている」「最も貧しい途上国も例外ではなく、途上国諸国が租税回避や脱税行為によって失っている税収入は、毎年1700億ドル」「その結果、4億もの人々が、基本的医療の恩恵にすらあずかることができずにいます」と告発している。
貧困格差解決へ
C 貧困と格差を解決するためにタックスヘイブンにメスを入れる必要があるね。そのためには一人ひとりが立ち上がらないといけない。
A 金融大手シティグループがまとめたある極秘メモは、「富裕層にとっての脅威は民主主義だ」と敵視していた。富裕層にとって「最大の脅威は、富をもっと公平に分配し、所得格差を減らせという政治的要求の高まりだ」として、「高まる富裕層の利潤分配率に反撃して」国民の側が1人1票の力を行使すれば富裕層の王国が危うくなってしまうと、民主主義への嫌悪感をあらわにしていた。
C 国民こそ主権者だ。租税回避を許さないためにも民主主義が不可欠ということだ。
B まずは、情報公開だ。欧州委員会は、域内で活動する多国籍企業で全世界での年間売上高が7億5000万ユーロ(約920億円)を超える場合、納税情報の公開を求める提案を行っている。アメリカでは、パナマ文書に関連した捜査も開始された。
A これに対し日本では、パナマ文書の調査に乗り出すかどうかを聞かれた菅義偉官房長官は会見で「考えていません」と言った。話にならない。
C 戦争法の問題だけでなく、経済民主主義とも相いれないのが安倍晋三政権だということだ。
「しんぶん赤旗」日刊紙 2016年4月26日付掲載
世界にまたがって、膨大な利益をあげる多国籍企業が課税逃れをする一方、税収不足で最低限必要な福祉や教育の享受をうけられない人たちがいるって許されないですね。
たった一つの法律事務所からの情報漏えいが、世界の政界、経済界を揺るがしています。いわゆる「パナマ文書」です。世界のジャーナリスト集団が協力して膨大な情報を分析しています。タックスヘイブン(租税回避地)を利用した多国籍企業と富裕層、そして各国の指導者たちの税逃れの一端を明るみに出しました。
A 南ドイツ新聞と「国際調査報道ジャーナリスト連合」が「パナマ文書」の調査結果を発表したのは3日のことだった。5月上旬には、企業・個人リストの完全版が公開される予定だという。
B 一連の機密文書は、パナマの法律事務所、モサック・フォンセカによって作成されたものだ。対象となっている機密情報は、1977年から2015年の約40年間にわたり作成されたもの。記録数は1150万件に達する。税逃れのために設立された法人は21万4488社。200以上の国・地域と結びついている。
C 各国の指導者や富裕層、多国籍企業がそこに富を隠しこんでいるんだね。

「パナマ文書」の出どころとなった法律事務所「モサック・フォンセカ」の看板=4月13日、パナマ(ロイター)
“天国”「と“地獄”
A 各国の税務当局の手を逃れる複雑な仕組みをつくりあげるには、巨大銀行の世界的ネットワークだけでなく、法律事務所や会計事務所の存在が欠かせない。今回の舞台となったモサック・フォンセカは、税逃れのために海外企業設立を専門とする法律事務所で、英ガーディアン紙によると、世界で4番目に大きな法律事務所だという。
C 漏えいした膨大な機密文書もタックスヘイブンの氷山の一角、ということだね。
A タックスヘイブンの特徴は、①全くの無税か名目的な税のみ②効果的な情報交換が行われていないこと③透明性に欠けていること④実質的な経済活動がない―ことだ。
C 悪事を働いてもバレないのか。タックスヘイブンは、富裕層と多国籍企業にとってグローバル資本主義が生み出した“天国”のようなものだね。
A “天国”があるということは、その一方には“地獄”があるということだ。多国籍企業や富裕者による税逃れは、庶民への増税や途上国にツケが回されてしまう。
B 世界各地に活動拠点を有する多国籍企業の場合、関連企業間で取引された生産とサービスの設定価格の操作を使い、タックスヘイブンに利益を移すことで税逃れをおこなう。世界のどこで利益を上げたかを自在に操作することが可能であれば、途上国が貧困削減などに必要な税収を減らすという悪影響をもたらす。
A 国際協力団体のオックスファム・ジャパンは、「租税回避地の恩恵を受けられる裕福な個人や多国籍企業は、各国政府が得られるはずの税収入を、何十億ドルという単位で奪い取っている」「最も貧しい途上国も例外ではなく、途上国諸国が租税回避や脱税行為によって失っている税収入は、毎年1700億ドル」「その結果、4億もの人々が、基本的医療の恩恵にすらあずかることができずにいます」と告発している。
貧困格差解決へ
C 貧困と格差を解決するためにタックスヘイブンにメスを入れる必要があるね。そのためには一人ひとりが立ち上がらないといけない。
A 金融大手シティグループがまとめたある極秘メモは、「富裕層にとっての脅威は民主主義だ」と敵視していた。富裕層にとって「最大の脅威は、富をもっと公平に分配し、所得格差を減らせという政治的要求の高まりだ」として、「高まる富裕層の利潤分配率に反撃して」国民の側が1人1票の力を行使すれば富裕層の王国が危うくなってしまうと、民主主義への嫌悪感をあらわにしていた。
C 国民こそ主権者だ。租税回避を許さないためにも民主主義が不可欠ということだ。
B まずは、情報公開だ。欧州委員会は、域内で活動する多国籍企業で全世界での年間売上高が7億5000万ユーロ(約920億円)を超える場合、納税情報の公開を求める提案を行っている。アメリカでは、パナマ文書に関連した捜査も開始された。
A これに対し日本では、パナマ文書の調査に乗り出すかどうかを聞かれた菅義偉官房長官は会見で「考えていません」と言った。話にならない。
C 戦争法の問題だけでなく、経済民主主義とも相いれないのが安倍晋三政権だということだ。
「しんぶん赤旗」日刊紙 2016年4月26日付掲載
世界にまたがって、膨大な利益をあげる多国籍企業が課税逃れをする一方、税収不足で最低限必要な福祉や教育の享受をうけられない人たちがいるって許されないですね。