韓国総選挙 変革求める人々(上) 政権への厳しい審判
13日に行われた韓国国会(定数300)総選挙は、16年ぶりに与野党の勢力が逆転しました。与党「セヌリ党」は第2党に転落。野党「共に民主党」が第1党となり、「国民の党」「正義党」と合わせ、野党は167議席を獲得しました。有権者は一票にどのような思いを込めたのでしょうか。(ソウル=栗原千鶴 写真も)
「社会を変えたいという、国民の意志が表れた選挙結果だった」と分析するのは慶北大学法学部の金昌禄(キム・チャンロク)教授(55)。「朴橦恵(バク・クネ)政権3年間の失政、李明博(イ・ミョンバク)前政権以来8年も続いた保守政権の下で、民主主義の後退に国民が非常に厳しい審判を下した」と分析します。
朴政権は国民の反対が強い国定教科書の改訂を一方的に進め、在韓米軍による高高度防衛(THAAD)ミサイル配備に向けた議論を米国と開始しました。
13日、ソウル市内に設けられた投票所で投票用紙を受け取るために並ぶ市民ら
※うち7人はセヌリ党への復党を表明
強引さに危機感
総選挙ではセヌリ党内の公認候補決定にかかわり、朴大統領が自分に近い新人を積極的に擁立させる一方、政策や国会運営をめぐって対立した有力政治家を公認から除外。強引なやり方に「危機感を募らせた」という市民の声を地元メディアは報じています。
朴大統領やセヌリ党の政策に期待した層は、裏切られたという思いを抱きました。恵泉女子学園大学(東京・多摩市)の李泳采(イ・ヨンチェ)准教授(44)は「経済政策の失敗も大きかった」と分析します。
青年失業率が2月に12・5%と過去最悪を記録しているにもかかわらず、朴政権は解雇条件の緩和を含む労働法の改定を狙っています。李准教授は労働運動出身の無所属候補が当選したことを挙げ、「現場の労働者、青年、中間層の不安が投票行動に結びついた」と語ります。
「外交問題は争点にならなかったが、投票の判断材料にはなったと思う」とソウル大学の南基正(ナム・キジョン)副教授(52)は分析します。
アジアより米国
2012年の大統領選挙で朴大統領は、北朝鮮との「信頼と平和」を訴え、前政権より柔軟な姿勢が期待されました。政権発足後は「北東アジア平和協力構想」や「朝鮮半島信頼プロセス」などの政策を掲げました。
「米国寄りだった前政権より柔軟で、そこに期待した層が朴大統領を推した。しかし今は北朝鮮に強硬で、アジアより米国重視になっており、裏切られたという状況だ」と南副教授は語ります。
また、今回の選挙結果は「昨年末の『慰安婦』問題に関して、韓国政府には警告であり、日本政府には『もっと考えてほしい』というメッセージだ」と指摘します。
「合意後の韓国政府の態度は、あまりにも高圧的で被害者に寄り添ったものではなかった。一方、日本政府からも合意の真意を疑わせるような発言が相次いだ。両政府ともに選挙結果を謙虚に受け止めて、解決に向けた努力をしてほしい」(つづく)
「しんぶん赤旗」日刊紙 2016年4月17日付掲載
朴槿恵大統領は、「北東アジア平和協力構想」など外交面で期待感がありましたが、国民の生活の問題で後退…。
韓国でも、転換を求める声が上がっています。
13日に行われた韓国国会(定数300)総選挙は、16年ぶりに与野党の勢力が逆転しました。与党「セヌリ党」は第2党に転落。野党「共に民主党」が第1党となり、「国民の党」「正義党」と合わせ、野党は167議席を獲得しました。有権者は一票にどのような思いを込めたのでしょうか。(ソウル=栗原千鶴 写真も)
「社会を変えたいという、国民の意志が表れた選挙結果だった」と分析するのは慶北大学法学部の金昌禄(キム・チャンロク)教授(55)。「朴橦恵(バク・クネ)政権3年間の失政、李明博(イ・ミョンバク)前政権以来8年も続いた保守政権の下で、民主主義の後退に国民が非常に厳しい審判を下した」と分析します。
朴政権は国民の反対が強い国定教科書の改訂を一方的に進め、在韓米軍による高高度防衛(THAAD)ミサイル配備に向けた議論を米国と開始しました。
13日、ソウル市内に設けられた投票所で投票用紙を受け取るために並ぶ市民ら
韓国総選挙の結果 | ||
党名 | 改選前 | 当選議席数 |
セヌリ党 | 146 | 122 |
共に民主党 | 102 | 123 |
国民の党 | 20 | 38 |
正義党 | 5 | 6 |
無所属など | 19 | 11(※) |
合計 | 292(欠員8) | 300 |
強引さに危機感
総選挙ではセヌリ党内の公認候補決定にかかわり、朴大統領が自分に近い新人を積極的に擁立させる一方、政策や国会運営をめぐって対立した有力政治家を公認から除外。強引なやり方に「危機感を募らせた」という市民の声を地元メディアは報じています。
朴大統領やセヌリ党の政策に期待した層は、裏切られたという思いを抱きました。恵泉女子学園大学(東京・多摩市)の李泳采(イ・ヨンチェ)准教授(44)は「経済政策の失敗も大きかった」と分析します。
青年失業率が2月に12・5%と過去最悪を記録しているにもかかわらず、朴政権は解雇条件の緩和を含む労働法の改定を狙っています。李准教授は労働運動出身の無所属候補が当選したことを挙げ、「現場の労働者、青年、中間層の不安が投票行動に結びついた」と語ります。
「外交問題は争点にならなかったが、投票の判断材料にはなったと思う」とソウル大学の南基正(ナム・キジョン)副教授(52)は分析します。
アジアより米国
2012年の大統領選挙で朴大統領は、北朝鮮との「信頼と平和」を訴え、前政権より柔軟な姿勢が期待されました。政権発足後は「北東アジア平和協力構想」や「朝鮮半島信頼プロセス」などの政策を掲げました。
「米国寄りだった前政権より柔軟で、そこに期待した層が朴大統領を推した。しかし今は北朝鮮に強硬で、アジアより米国重視になっており、裏切られたという状況だ」と南副教授は語ります。
また、今回の選挙結果は「昨年末の『慰安婦』問題に関して、韓国政府には警告であり、日本政府には『もっと考えてほしい』というメッセージだ」と指摘します。
「合意後の韓国政府の態度は、あまりにも高圧的で被害者に寄り添ったものではなかった。一方、日本政府からも合意の真意を疑わせるような発言が相次いだ。両政府ともに選挙結果を謙虚に受け止めて、解決に向けた努力をしてほしい」(つづく)
「しんぶん赤旗」日刊紙 2016年4月17日付掲載
朴槿恵大統領は、「北東アジア平和協力構想」など外交面で期待感がありましたが、国民の生活の問題で後退…。
韓国でも、転換を求める声が上がっています。