伊勢志摩サミット 問われる課題③ テロ・貧困など焦点
全世界が共通して直面するさまざまな課題に主要7力国(G7)がどのような対応をとるのか、常にサミットで注目されます。
難民に各国苦慮
ISをはじめとする過激組織によるテロ活動は世界各地で続いています。昨年6月のサミット首脳宣言は、テロ組織への対応で米国主導の有志連合を支持し、資産凍結や資金流入の遮断などの対策強化を打ち出しました。
しかしその後もテロは続発。サミット関係国でも11月にフランスの首都パリ、今年3月に欧州連合(EU)本部のあるベルギーの首都ブリュッセルがテロに襲われました。
それを受けて、シリアやイラクでは有志連合がISに対する直接の武力攻撃を強化。民間人も含め犠牲者は増える一方です。
ことにシリア紛争は、ロシアが支援するアサド政権と欧米が後押しする反政府勢力、ISなどが衝突を繰り返し、和平の進展が見通せない状況が続いています。
シリアを逃れた難民は欧州各国に押し寄せ、各国ともその対応に苦慮しています。反難民を掲げる極右が政治的に台頭するなど、内政にもさまざまな影響を及ぼしています。
テロを生み出す土壌の一つとして貧困が挙げられています。国連総会は昨年9月、「持続可能な開発目標」を採択。公正で民主的な経済秩序の構築を公約しました。
極貧や飢餓の根絶から気候変動対策、経済格差の縮小まで17項目の「目標」は途上国、先進国を問わず、2016年から30年末までの世界共通の開発指針になります。採択後、最初のサミットでG7がどう具体化を図るかが焦点です。
また昨年末、国連気候変動枠組み条約第21回締約国会議(COP21)で採択された20年以降の地球温暖化対策の枠組み「パリ協定」は、今年4月に各国の署名が始まりました。
早期発効に向けた署名・批准の推進とともに、先進工業国による温室効果ガス排出削減の努力や途上国支援などで、サミットとして何を打ち出すかも問われます。
ギリシャのマケドニアとの国境近く、臨時難民キャンプで子どもを連れたシリア難民=5月20日(ロイター)
高まる反核世論
さらに、核兵器の全面禁止・廃絶を求める世界世論の高まりにどう向き合うかも重要です。昨年の国連総会でも、核兵器禁止条約の交渉開始におよそ140カ国が賛成。具体化を探る作業部会もジュネーブで始まりました。
G7は核保有国と、その核軍事同盟体制に加わる国々です。4月の外相会合では、初めて米英仏の現職外相が広島の平和記念公園を訪問。今回の首脳会合後には、オバマ米大統領が広島を訪問します。核兵器廃絶を求める世界の大多数の国の声にどう応えるか、注目されます。
(おわり)(金子豊弘、山田英明、山崎伸治が担当しました)
「しんぶん赤旗」日刊紙 2016年5月25日付掲載
シリア難民に苦慮するEU諸国。自らまいた種とも言えますが…
高まる核兵器廃絶の世論にG7諸国は応えなければなりません。
全世界が共通して直面するさまざまな課題に主要7力国(G7)がどのような対応をとるのか、常にサミットで注目されます。
難民に各国苦慮
ISをはじめとする過激組織によるテロ活動は世界各地で続いています。昨年6月のサミット首脳宣言は、テロ組織への対応で米国主導の有志連合を支持し、資産凍結や資金流入の遮断などの対策強化を打ち出しました。
しかしその後もテロは続発。サミット関係国でも11月にフランスの首都パリ、今年3月に欧州連合(EU)本部のあるベルギーの首都ブリュッセルがテロに襲われました。
それを受けて、シリアやイラクでは有志連合がISに対する直接の武力攻撃を強化。民間人も含め犠牲者は増える一方です。
ことにシリア紛争は、ロシアが支援するアサド政権と欧米が後押しする反政府勢力、ISなどが衝突を繰り返し、和平の進展が見通せない状況が続いています。
シリアを逃れた難民は欧州各国に押し寄せ、各国ともその対応に苦慮しています。反難民を掲げる極右が政治的に台頭するなど、内政にもさまざまな影響を及ぼしています。
テロを生み出す土壌の一つとして貧困が挙げられています。国連総会は昨年9月、「持続可能な開発目標」を採択。公正で民主的な経済秩序の構築を公約しました。
極貧や飢餓の根絶から気候変動対策、経済格差の縮小まで17項目の「目標」は途上国、先進国を問わず、2016年から30年末までの世界共通の開発指針になります。採択後、最初のサミットでG7がどう具体化を図るかが焦点です。
また昨年末、国連気候変動枠組み条約第21回締約国会議(COP21)で採択された20年以降の地球温暖化対策の枠組み「パリ協定」は、今年4月に各国の署名が始まりました。
早期発効に向けた署名・批准の推進とともに、先進工業国による温室効果ガス排出削減の努力や途上国支援などで、サミットとして何を打ち出すかも問われます。
ギリシャのマケドニアとの国境近く、臨時難民キャンプで子どもを連れたシリア難民=5月20日(ロイター)
高まる反核世論
さらに、核兵器の全面禁止・廃絶を求める世界世論の高まりにどう向き合うかも重要です。昨年の国連総会でも、核兵器禁止条約の交渉開始におよそ140カ国が賛成。具体化を探る作業部会もジュネーブで始まりました。
G7は核保有国と、その核軍事同盟体制に加わる国々です。4月の外相会合では、初めて米英仏の現職外相が広島の平和記念公園を訪問。今回の首脳会合後には、オバマ米大統領が広島を訪問します。核兵器廃絶を求める世界の大多数の国の声にどう応えるか、注目されます。
(おわり)(金子豊弘、山田英明、山崎伸治が担当しました)
「しんぶん赤旗」日刊紙 2016年5月25日付掲載
シリア難民に苦慮するEU諸国。自らまいた種とも言えますが…
高まる核兵器廃絶の世論にG7諸国は応えなければなりません。