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「しんぶん赤旗」の記事を中心に、政治・経済・労働問題などを個人的に発信。
日本共産党兵庫県委員会で働いています。

軍事依存経済 武器生産再開の起源⑤ 米軍は「甘い」と言った

2016-05-10 18:16:20 | 平和・憲法・歴史問題について
軍事依存経済 武器生産再開の起源⑤ 米軍は「甘い」と言った

「防衛力漸増のモデル」を示した経団連防衛生産委員会の「試案」は当時、国民には知らされませんでした。ひそかに「政府関係方面に提出」され、「対米活動のための重要な基礎資料として活用せられ」(経団連防衛生産委員会『防衛生産委員会十年史』)ました。

「旧軍人の郷愁」
後に内容が明るみに出ると、再軍備に関する「経団連試案」と呼ばれ、大きな波紋を広げました。
「徴兵制度を考えなければ、これはとてもできる計画じゃない」(経団連防衛生産委員会の千賀鉄也事務局長=当時)と試案作成の当事者が認めたほど、極端な軍拡構想だったからです。
なぜそれほど大規模な軍拡を考えたのか。千賀氏が二つの理由を明かしています。
一つは、試案作成のスタッフとして参画したのが「旧軍の専門家」だったことです。
試案の作成にあたったのは、防衛生産委員会内の審議室でした。審議室の委員長は経団連の植村甲午郎副会長(当時)。幹事は千賀氏本人でした。
委員には、保科善四郎元海軍中将、原田貞憲元陸軍少将、吉積正雄元陸軍中将が就いていました。さらに、技術参与として多田力三元海軍中将、清水文雄元海軍中将、大幸(おおさち)喜三郎元陸軍中将、福田啓二元海軍中将が参加しました。ほかにも、後に兵器工業会副会長になる菅晴次(かん・はるじ)元陸軍中将、原乙未生(はら・とみお)元陸軍中将が加わりました。
千賀氏は、旧日本軍の軍人が大挙して計画立案に携わったため、「自衛隊(当時は保安隊)はひとり立ちさせるという考え方が強く出てきた」(エコノミスト編集部編『戦後産業史への証言三』)と発言。次のような指摘も行いました。
「要するに、経団連試案は多分に戦時中の動員問題が頭に残っている人が考えたものですよ」
「朝鮮動乱がみなさんの頭のなかにあったに違いない」
「旧軍人のノスタルジア(郷愁)で、戦略的分析が欠けている」
日本の財界が戦後、いかに戦時中の軍部の人脈と思想を受け継いで活動したか。具体的に示す証言です。
しかし、試案が巨大な軍拡構想になった理由は、単なる旧軍人の郷愁だけではありませんでした。米国が関与していたのです。
千賀氏によれば、試案は「米軍ともある程度話合いをした上で」つくられました。話し合いの中で米軍は、日本の大軍拡に向け、ハッパをかけました。
前年の52年に木村篤太郎保安庁長官が「警備五力年計画」をひそかに策定していたことが発覚し、国会で追及を受ける騒動となっていました。
「木村試案」と呼ばれた計画は、5年間で陸上部隊21万人、艦艇14万5千トン、航空機1400機を実現するという内容でした。これに関して米軍は、「甘い」と強調したのです。
「アメリカにすれば、どうもこの程度では甘いという見方です。とくに米軍の日本の出先がそういう考え方です。つねに接触しているからすぐわかる。それで、防衛生産委員会で、木村試案は試案として、それとは別に何か考えてみようということになったわけです」(千賀氏)



市中行進する保安隊=1952年

要求は渡りに船
経団連が試案の作成にとりかかる動機そのものが、米軍の入れ知恵だったことになります。戦後、まだ自衛隊ができてもいない時点で経団連がつくりあげた異様な軍拡構想の根底にも、“自国の戦争の負担を軽くするために日本を活用する”という米国の意図が横たわっていたのです。
軍需産業の再建をもくろむ日本の財界は、渡りに船とばかりに、米国の意図に乗っかって日本政府に大軍拡を勧めたのでした。
経団連防衛生産委員会がいかに米国と密接な関係を築き、軍拡のために奔走したか。千賀氏が述べています。
「防衛生産委員会が動き出した段階でもほとんどアメリカ側との話合いですね。たとえば、(戦闘機)F86とか、T83の生産を日本にやらせるという問題にしても、当時保安庁時代で、航空自衛隊なんてないから、防衛生産委員会に直接(米国から)話があったんです。当時、一万田(いちまた)(尚登〈ひさと〉)さんが大蔵大臣、高碕達之助さんが通産大臣で、われわれは石川一郎(経団連)会長を先頭に立てて、両大臣を説いて回りましたよ」
(つづく)

「しんぶん赤旗」日刊紙 2016年5月7日付掲載


日本の旧軍人のノスタルジアでの軍拡では、アメリカは満足しなかった。
実際にアメリカにとって役に立つものを要求した。
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