検証アベノミクス TPPと農業② うそを重ねて押し通す
安倍晋三政権が説明する環太平洋連携協定(TPP)の利点はもっぱら、企業の海外展開に集中しています。他方、交渉の経緯については情報開示を拒否し、国内への負の影響については恣意(しい)的な試算を発表し、うそとごまかしを重ねてTPPを押し通そうとしています。
「無傷」は皆無
TPPによって、関税を撤廃される農林水産物は、82・3%の品目にのぼります。政府は、米、麦、牛・豚肉、乳製品、砂糖の農産物重要5項目でも28・6%の品目で関税撤廃を約束しました。これだけでも、農産物重要5項目を「除外」または「再交渉」とし、交渉しないよう求めた国会決議に反する最悪の農業破壊協定であることは明らかです。
しかし、政府は関税撤廃の「例外」を確保したと強弁しています。実際は、森山裕(ひろし)農林水産相が国会答弁で認めた通り、関税削減、特別輸入枠新設などを含めると、「無傷」の品目は皆無なのです。しかも、TPP発効後7年たつと、関税が残った品目の扱いも、米国など農産物輸出大国5力国の要求に基づいて見直すことになっています。
署名された協定は、発効時のTPPを示すにすぎません。「生きた協定」といわれる通り、発効後も交渉し続けることになっており、TPPの原則である関税撤廃への道筋がついているのです。
「くらしをこわすTPP反対」と声をあげる人たち=5月11日、国会前
対策含め試算
政府が示した「TPPの経済効果分析」は、国内総生産(GDP)が約14兆円拡大し、雇用が約80万人増加する一方、農林水産物の生産減少額が1300億~2100億円にとどまり、食料自給率は現在の39%が維持されるというものです。
しかし、政府の分析モデルは失業が出ない前提であり、試算の対象は関税率が10%以上かつ国内生産額が10億円以上の農産物19品目、林水産物14品目だけです。その上、関税削減などの影響で価格低下による生産額の減少が生じるものの、国内対策により生産や農家所得が確保され、国内生産量が維持されるといった予測に立っています。
政府の「経済効果分析」は、説得力がないだけでなく、広範な怒りさえ呼んでいます。多くの自治体が、政府が「影響なし」とした米や、試算の対象外にした地元特産品について、独自の試算を行いました。米の生産減少額は、国内対策抜きで試算した8県の合計が最大で224・4億円にのぼります。
「経済効果分析」が「TPPの経済効果は、わが国各地域の企業、事業者、農林漁業者等が、TPPを十二分に活用し、意欲的に事業等を拡大・推進することで現実のものとなる」と述べている通り、政府が示したTPPの経済効果は、TPP自体がもたらすものではないのです。(つづく)
「しんぶん赤旗」日刊紙 2016年5月27日付掲載
政府の試算は、関税の撤廃により農産物の輸入量が増えても、国内の農業生産は減らないって事になっています。
小池書記局長が、日本人が急に大食いにならない限りありえない想定だと批判。
まやかしに騙されてはいけません。
安倍晋三政権が説明する環太平洋連携協定(TPP)の利点はもっぱら、企業の海外展開に集中しています。他方、交渉の経緯については情報開示を拒否し、国内への負の影響については恣意(しい)的な試算を発表し、うそとごまかしを重ねてTPPを押し通そうとしています。
「無傷」は皆無
TPPによって、関税を撤廃される農林水産物は、82・3%の品目にのぼります。政府は、米、麦、牛・豚肉、乳製品、砂糖の農産物重要5項目でも28・6%の品目で関税撤廃を約束しました。これだけでも、農産物重要5項目を「除外」または「再交渉」とし、交渉しないよう求めた国会決議に反する最悪の農業破壊協定であることは明らかです。
しかし、政府は関税撤廃の「例外」を確保したと強弁しています。実際は、森山裕(ひろし)農林水産相が国会答弁で認めた通り、関税削減、特別輸入枠新設などを含めると、「無傷」の品目は皆無なのです。しかも、TPP発効後7年たつと、関税が残った品目の扱いも、米国など農産物輸出大国5力国の要求に基づいて見直すことになっています。
署名された協定は、発効時のTPPを示すにすぎません。「生きた協定」といわれる通り、発効後も交渉し続けることになっており、TPPの原則である関税撤廃への道筋がついているのです。
「くらしをこわすTPP反対」と声をあげる人たち=5月11日、国会前
対策含め試算
政府が示した「TPPの経済効果分析」は、国内総生産(GDP)が約14兆円拡大し、雇用が約80万人増加する一方、農林水産物の生産減少額が1300億~2100億円にとどまり、食料自給率は現在の39%が維持されるというものです。
しかし、政府の分析モデルは失業が出ない前提であり、試算の対象は関税率が10%以上かつ国内生産額が10億円以上の農産物19品目、林水産物14品目だけです。その上、関税削減などの影響で価格低下による生産額の減少が生じるものの、国内対策により生産や農家所得が確保され、国内生産量が維持されるといった予測に立っています。
政府の「経済効果分析」は、説得力がないだけでなく、広範な怒りさえ呼んでいます。多くの自治体が、政府が「影響なし」とした米や、試算の対象外にした地元特産品について、独自の試算を行いました。米の生産減少額は、国内対策抜きで試算した8県の合計が最大で224・4億円にのぼります。
「経済効果分析」が「TPPの経済効果は、わが国各地域の企業、事業者、農林漁業者等が、TPPを十二分に活用し、意欲的に事業等を拡大・推進することで現実のものとなる」と述べている通り、政府が示したTPPの経済効果は、TPP自体がもたらすものではないのです。(つづく)
「しんぶん赤旗」日刊紙 2016年5月27日付掲載
政府の試算は、関税の撤廃により農産物の輸入量が増えても、国内の農業生産は減らないって事になっています。
小池書記局長が、日本人が急に大食いにならない限りありえない想定だと批判。
まやかしに騙されてはいけません。