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「しんぶん赤旗」の記事を中心に、政治・経済・労働問題などを個人的に発信。
日本共産党兵庫県委員会で働いています。

迫るG20サミット④ 租税回避 多国籍企業にどう対処

2016-09-05 11:16:14 | 国際政治
迫るG20サミット④ 租税回避 多国籍企業にどう対処

欧州連合(EU)の欧州委員会は8月30日、米アップルの法人税に対するアイルランド政府の差別的な優遇措置が違法な補助金にあたるとして、最大130億ユーロ(約1・5兆円)追徴課税するよう指示しました。
特定の企業に対する税優遇措置で、ヨーロッパにおけるアップルの利益に対する法人実効税率は2003年の1%から14年には0・005%へ下落しました。



税逃れについて議論したOECD租税委員会の会合=6月30日、京都市内

12年のG20から
多国籍企業の税逃れへの税源浸食・利益移転(BEPS)対策が、経済協力開発機構(OECD)と20力国・地域(G20)の協力によって取り組まれています。
12年6月19日、メキシコ・ロスカポスでのG20サミットで採択された首脳宣言は、「われわれは、税源浸食と利益移転を防ぐ必要性を再確認し、この分野におけるOECDの継続中の作業を関心をもってフォローする」とうたいます。この宣言を受けて、同月26日~27日に開催されたOECD租税委員会本会合が、BEPSプロジェクトを立ち上げました。G20の合意を実現する技術的受け皿としてOECDプロジェクトが開始されたのです。
12年後半には、スターバックス、グーグル、アマゾン、アップルなどの多国籍企業による租税回避が政治問題化しました。翌年の13年6月にイギリスのロック・アーンで開催されたG8サミットは、「われわれは、税源浸食・利益移転に取り組むため、また、あらゆる多国籍企業が低税率の国・地域に利益を人為的に移転することによって支払う税の総額を削減することを国際的な及び自国の課税ルールが許容又は奨励しないようにするため、共に取り組むことに合意する」としました。
“多国籍企業による税逃れ”という問題に焦点を当てたことは画期的でした。1998年にOECD租税委員会が発表した「有害な税の競争」の報告書と比べても大きな前進でした。同報告書は、タックスヘイブン(租税回避地)についての基本的な要素を挙げ、タックスヘイブンに対する人々の意識を高めたものでした。企業や個人の課税逃れが、税負担を労働や財産、および消費といった分野に移動する傾向を創り出す、などとも指摘していました。しかし、この時の分析は、国際社会が大問題にしている多国籍企業の活動に焦点をあてたものにはなっていませんでした。
13年7月には、「BEPS行動計画」が公表されます。OECD非加盟のG20メンバー8力国が議論に参加しました。15年10月には「最終報告書」が公表されました。
現在、BEPS対策は、実行段階に入っています。多国籍企業の税逃れを防ぐためには、世界のどこかに抜け穴があると実効性はあがりません。BEPS対策には、現在80力国を上回る参加国が近く100力国を超えると見込まれています。

対策には限界が
一方、BEPS対策には限界があります。OECD租税委員会の浅川雅嗣(まさつぐ)議長は、「税率は国家主権の範囲内であり、タックスヘイブンが存在し続けることは前提だ」(6月6日、日本記者クラブでの会見)といいます。つまり、多国籍企業によるタックスヘイブンの利用を阻止することはできないのです。国家が投資を呼び込むために惜しみなく税を優遇するという底辺への競争を防ぐこともありません。
国際協力団体のオックスファムは、極限にまで達している格差をなくすためには、タックスヘイブンの時代を終わらせることが不可欠だと世界の指導者に呼び掛けています。
G20中国・杭州サミットが、この課題にどのような回答を出すのか、間われています。(おわり)(金子豊弘が担当しました)

「しんぶん赤旗」日刊紙 2016年9月3日付掲載


「税率は国家主権の範囲内であり、タックスヘイブンが存在し続けることは前提」とは仕方ないにしても、実際に生産活動をやっている国・地域で再課税することは可能なはず。
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