2017年予算概算要求の焦点① 税・財政 社会保障削り軍拡進める
2017年度予算編成に向けた各省庁からの概算要求が8月末に出そろいました。第2次安倍晋三内閣成立以降、概算要求段階から予算編成を行うのは4度目です。その特徴をみます。
一般会計総額は過去最大の101兆4707億円となりました。概算要求の総額が100兆円を超えるのは3年連続です。安倍政権が17年4月に実施を狙っていた10%への消費税率引き上げを先延ばしした結果、20年度の基礎的財政収支の黒字化という安倍政権の財政「健全化」目標の達成はほぼ不可能になりました。加えて19年10月に消費税率を10%に引き上げることによる税収増を当て込んで、歳出の増加に歯止めがかからなくなっています。
2017年度予算概算要求基準に関する政府与党政策懇談会に出席した安倍首相=8月2日、首相官邸(首相官邸ホームページから)
公共事業が中心
要求額を最も増やしたのは国土交通省で、16年度当初予算比9011億円増の6兆8188億円でした。うち公共事業費は16・2%増の6兆183億円です。不要不急の大型公共事業が中心です。首都圏空港に305億円、地方空港に397億円の整備費を計上。整備新幹線の推進に755億円を盛り込みました。国が民間事業者に低利で融資する財政投融資(財投)には3兆8524億円を計上。16年度第2次補正予算案と合わせて計3兆円をJR東海への融資に充て、45年予定のリニア中央新幹線全線開業を、最大8年の前倒しを図るとしています。
防衛省の軍事費は米軍再編関連経費を含め、総額5兆1685億円に達し、過去最大を更新しました。第2次安倍政権発足後、5年連続の軍拡です。「ミサイル防衛」網を大幅に拡大するとして、能力向上型の迎撃ミサイル(PAC3MSE)導入などのためのシステム改修やミサイルの取得に1056億円を計上するなど、北朝鮮などの動向を念頭に置いた軍拡を進めます。
厚生労働省は医療・年金などの自然増分を昨年比200億円減の6400億円としました。年末の予算編成に向けて5000億円にまで抑え込む構えです。一方、消費税増税分を充てるとしていた社会保障の拡充は、年金受給資格の短縮(25年から10年へ)だけにとどめ、低年金者への上乗せ給付(5千円)などは掲げていません。医療では、後期高齢者保険料の「特例軽減」を打ち切る計画で、保険料は2~10倍に跳ね上がります。
「優先枠」を設置
17年度予算には大企業優遇の「成長戦略」を進めるための「優先課題推進枠」を設けます。「優先課題推進枠」への要望の総額は上限の3・9兆円に迫る3兆8135億円まで積み上がりました。他方、各省庁が政策によって柔軟に縮減できる裁量的経費を1割削減し、人件費など法律によって定められ支出規模を任意に変更できない義務的経費も「抜本的見直し」で削減するとしています。
各省庁から予算概算要求とともに17年度税制「改正」要望も出されました。
16年度税制「改正」では、国と地方を合わせた法人実効税率が32・11%から29・97%まで引き下げられました。17年度も29・97%を維持し、18年度には29・74%まで引き下げます。政府税調では、専業主婦やパートタイムで働く妻がいる世帯の税負担を軽減する「配偶者控除」の見直しが議論されます。企業や個人の国際的な課税逃れへの対策も議論する方針です。
(つづく)(9回連載です)
「しんぶん赤旗」日刊紙 2016年9月13日付掲載
公共事業は国が負担しなくてもよいリニアも予算化。それに引き換え社会保障は必要なものも削る血も涙もない冷たさ。
2017年度予算編成に向けた各省庁からの概算要求が8月末に出そろいました。第2次安倍晋三内閣成立以降、概算要求段階から予算編成を行うのは4度目です。その特徴をみます。
一般会計総額は過去最大の101兆4707億円となりました。概算要求の総額が100兆円を超えるのは3年連続です。安倍政権が17年4月に実施を狙っていた10%への消費税率引き上げを先延ばしした結果、20年度の基礎的財政収支の黒字化という安倍政権の財政「健全化」目標の達成はほぼ不可能になりました。加えて19年10月に消費税率を10%に引き上げることによる税収増を当て込んで、歳出の増加に歯止めがかからなくなっています。
2017年度予算概算要求基準に関する政府与党政策懇談会に出席した安倍首相=8月2日、首相官邸(首相官邸ホームページから)
公共事業が中心
要求額を最も増やしたのは国土交通省で、16年度当初予算比9011億円増の6兆8188億円でした。うち公共事業費は16・2%増の6兆183億円です。不要不急の大型公共事業が中心です。首都圏空港に305億円、地方空港に397億円の整備費を計上。整備新幹線の推進に755億円を盛り込みました。国が民間事業者に低利で融資する財政投融資(財投)には3兆8524億円を計上。16年度第2次補正予算案と合わせて計3兆円をJR東海への融資に充て、45年予定のリニア中央新幹線全線開業を、最大8年の前倒しを図るとしています。
防衛省の軍事費は米軍再編関連経費を含め、総額5兆1685億円に達し、過去最大を更新しました。第2次安倍政権発足後、5年連続の軍拡です。「ミサイル防衛」網を大幅に拡大するとして、能力向上型の迎撃ミサイル(PAC3MSE)導入などのためのシステム改修やミサイルの取得に1056億円を計上するなど、北朝鮮などの動向を念頭に置いた軍拡を進めます。
厚生労働省は医療・年金などの自然増分を昨年比200億円減の6400億円としました。年末の予算編成に向けて5000億円にまで抑え込む構えです。一方、消費税増税分を充てるとしていた社会保障の拡充は、年金受給資格の短縮(25年から10年へ)だけにとどめ、低年金者への上乗せ給付(5千円)などは掲げていません。医療では、後期高齢者保険料の「特例軽減」を打ち切る計画で、保険料は2~10倍に跳ね上がります。
「優先枠」を設置
17年度予算には大企業優遇の「成長戦略」を進めるための「優先課題推進枠」を設けます。「優先課題推進枠」への要望の総額は上限の3・9兆円に迫る3兆8135億円まで積み上がりました。他方、各省庁が政策によって柔軟に縮減できる裁量的経費を1割削減し、人件費など法律によって定められ支出規模を任意に変更できない義務的経費も「抜本的見直し」で削減するとしています。
各省庁から予算概算要求とともに17年度税制「改正」要望も出されました。
16年度税制「改正」では、国と地方を合わせた法人実効税率が32・11%から29・97%まで引き下げられました。17年度も29・97%を維持し、18年度には29・74%まで引き下げます。政府税調では、専業主婦やパートタイムで働く妻がいる世帯の税負担を軽減する「配偶者控除」の見直しが議論されます。企業や個人の国際的な課税逃れへの対策も議論する方針です。
(つづく)(9回連載です)
「しんぶん赤旗」日刊紙 2016年9月13日付掲載
公共事業は国が負担しなくてもよいリニアも予算化。それに引き換え社会保障は必要なものも削る血も涙もない冷たさ。