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「しんぶん赤旗」の記事を中心に、政治・経済・労働問題などを個人的に発信。
日本共産党兵庫県委員会で働いています。

スポーツ界の今を考える 改革の道のり④ 指導者育成し暴力断て

2018-11-24 20:27:00 | スポーツ・運動について
スポーツ界の今を考える 改革の道のり④ 指導者育成し暴力断て
スポーツ問題研究会代表 辻口信良弁護士

つじぐち・のぶよし=1947年、石川県生まれ。関西大学法学部卒。弁護士。日本スポーツ法学会理事、スポーツ問題研究会代表などを務める。龍谷大学、関西大学講師。日本初のスポーツ選手代理人(プロ野球・ヤクルトの古田敦也選手、92年)。著書に『“平和学”としてのスポーツ法入門』(民事法研究会)など

スポーツ界の暴力やパワハラが社会問題として大きく取り上げられています。さまざまな団体が対策を打ち出しているものの、現場の指導者一人一人にまで浸透しているとは言えず、「上滑り」になっていると思わざるを得ません。
2013年、大阪市立高校バスケットボール部の男子生徒が顧問教諭の体罰に耐えかねて自殺するという痛ましい事件が明らかになりました。同年、柔道女子ナショナルチームの15選手が監督らの暴力を告発しました。ぼくは選手たちの代理人を務めました。
これらを機に、いくつかの競技団体が暴力根絶宣言を発表するなど、改革に足を踏み出しました。しかし、その趣旨が多くの指導者にきちんと伝わっていないと感じます。
スポーツ指導の場における「愛のムチ」、暴力の連鎖は根深いものがあります。
講師を務めている大学でアンケートを取った結果、いわゆる体育会系の学生は、過去に指導者から暴力を受けた経験が多々あることがわかりました。中には「泣きながら僕を殴ってくれて、感動しました」という衝撃的なフレーズもありました。
体操女子の宮川紗江選手と、コーチだった速見佑斗氏の関係も同じです。たたかれていた宮川選手はパワハラだと考えていないと言います。速見氏も選手時代から指導者の暴力を当然のこととして受け止めていたようです。



体操女子・宮川紗江選手への暴力行為について記者会見を終え、深々と頭を下げる速水佑斗コーチ=9月5日(共同)

戦前教育に根
問題の起源は、日本の教育制度の成り立ちにあると思います。
明治維新の後、近代の教育制度がスタートしました。政府が「富国強兵」「殖産興業」を掲げ、国のために役立つ人材を早く育成するのが至上命令という時代です。悠長なことは言っていられないと、「考えさせる」より「結論を教える」ことが優先されました。国策として体育に取り入れられたスポーツでも、指導者に命じられたとおりにやる、上意下達になりました。しかも、軍隊の介入などで、内容の合理性・科学性を問うことなく、逆らえない体制になっていきました。
日本国憲法が制定されてからも、「軍隊式」のやり方は残りました。スポーツの根源ともいえる遊びや楽しみ、公平性の要素が抜け落ちたままになってしまいました。
これでは選手の自主性や判断力は培われません。事のよしあしを考え行動する、スポーツで最も大切な「自立した個人」を育てられません。
日本の選手は決められたことを能率よくこなすのが得意な半面、判断を委ねられた途端に方向感覚を失ってしまうという傾向があります。高校野球の甲子園大会では、走者が出ると打者が一球ごとに監督のサインを確認する場面をよく目にします。
例えば、子ども同士で十分に議論をさせたうえで「こうやったらどう?」と提示したり、手本を見せたりするといった働きかけが必要です。地道で根気のいる作業ですが、それがあるべき姿だと思います。

国の予算増を
問題の解決には指導者も選手も自覚を高めていく取り組みが求められますが、急務なのは、「指導者を指導する」育成システムの構築です。
日本サッカー協会は指導者のライセンス制度を採り入れ、系統的な育成を行っています。一方で、競技によっては現役引退直後に監督に就くケースもあります。指導者としての訓練をまったく受けていないのなら、自らの体験をよりどころにするしかありません。暴力の連鎖を生む一因になっています。
中小の競技団体は指導者の担い手が少ないうえに、予算も限られています。指導者育成を進めるために、国が思い切ってお金をかけるべきです。
2020年の東京五輪・パラリンピックに向けてスポーツ予算が増えているとはいえ、5兆円の軍事費と比べればあまりにも少ない額です。1機あたり約150億円というF35戦闘機の購入を2機減らすだけで、今のスポーツ予算分くらいの財源が捻出できます。
スポーツは「創る平和」に寄与するというのがぼくの考えで、スポーツの「平和創造機能」を訴え続けています。スポーツは暴力とも深く関係するのですが、なぜ暴力やパワハラが起きるのか、どうすれば解決できるのか。スポーツに関わる全ての人が粘り強く考えていかなくてはなりません。
(佐藤恭輔)(おわり)

「しんぶん赤旗」日刊紙 2018年11月20日付掲載


スポーツ界に残っている暴力の根源は、明治維新時の「富国強兵」「殖産興業」ですか。いま、「西郷どん」でやっていることですね。
競技能力を高めるには、以前の根性や忍耐ではなくて、人体工学・科学技術的なものが導入されています。
しかし、指導者を育成することも残されているんですね。