核兵器廃絶 焦点と課題は 国連総会の議論から② 追いつめられる核保有国
核保有国とその同盟国は、核兵器禁止条約の流れに追いつめられています。
強い圧力示す発言
アメリカ代表は第1委員会の討論で「(核兵器禁止条約は)核軍縮を強要する」と非難し、フランスも「核軍縮を核保有国に命じることはできない」などと反発しました。署名もしていない国に、条約が何かを「強要」できるはずはありません。核保有国がいかに強い圧力を感じているかを示す発言です。
核保有国は「巻き返し」をはかろうとしています。アメリカは新たに「核軍縮のための条件創造」(CCND)なるものを持ち出しました。こうした「条件づくり」は「ハードワークであるが、重要な仕事」とし、それをしない核兵器禁止条約は「非現実的で、非生産的な近道」と非難したのです。これは、情勢の改善が先だとして、核兵器の禁止と廃絶を先送りする主張に他なりません。核保有国などはこれまでも、核廃絶は「究極の課題」で、段階的にやるべき(「ステップ・バイ・ステップ」)だと言って、核兵器禁止・廃絶をいますぐ交渉することに反対してきました。今回の「条件づくりが先」という主張は、こうした従来の主張からも後退したものです。
830万人のヒバクシャ国際署名を国連第1委員会のイオン・ジンガ議長(左から2人目)に届けた日本被団協の木戸季市事務局長(中央)、濱住治郎事務局次長(右から2人目)=10月10日、ニューヨークの国連本部(池田晋撮影)
五大国の共同声明
米英仏ロ中の核保有五大国は10月22日、核兵器禁止条約に反対する共同声明を発表しました。中国とロシアも参加した5カ国そろっての声明は禁止条約成立後初めてです。声明は「核兵器のない世界」を「究極」目標として先送りし、「核軍縮をさらに前進させられる国際環境づくりをすすめる」としています。つまり、アメリカの主張に英仏のみならず、中ロも足並みをそろえた格好です。
5カ国は声明で、核兵器禁止条約を「支持も、署名も、批准もしない」とあらためて拒否する姿勢を示しました。そして、禁止条約は核不拡散条約(NPT)を害するものであり、「1個の核兵器も削減できない」し、国家間の分断を深め、結果として核軍縮を困難にする、と非難します。
しかし、国際情勢を悪化させているのは、アメリカをはじめ軍事力を誇示する核保有大国の覇権主義的な政策に他なりません。禁止条約は「情緒的だ」(フランス)などと、感情的な悪罵をあびせ、対話・交渉を拒否する核保有国こそ、対立を助長しています。
声明で、五大国は条約に「拘束されない」し、「新たな基準や規範を設けるものではない」と述べています。しかし、これは、条約が、核保有国に「拘束」を感じさせる「新たな規範」となりつつあることを示すものです。
声明は、トランプ政権が中距離核戦力(INF)全廃条約を離脱すると表明したわずか2日後に発表されました。離脱をめぐってアメリカとロシアや中国は互いに非難をし合いました。
しかし、核兵器禁止条約に対抗する「大目標」のためには、五大国はさまざまな矛盾をはらみながらも、「結束」しています。核保有国は一致して禁止条約の流れを妨害しようとしている。ここに、基本的な対立構図があります。(つづく)
「しんぶん赤旗」日刊紙 2018年11月21日付掲載
核保有大国は、表向きは核兵器廃絶反対とは言えず、「段階的に廃絶するんだ」と言ってきました。核兵器禁止条約が採択されてからは、その「段階的廃絶」も「条件づくり」が必要だと後退。追いつめられた結果です。
核保有国とその同盟国は、核兵器禁止条約の流れに追いつめられています。
強い圧力示す発言
アメリカ代表は第1委員会の討論で「(核兵器禁止条約は)核軍縮を強要する」と非難し、フランスも「核軍縮を核保有国に命じることはできない」などと反発しました。署名もしていない国に、条約が何かを「強要」できるはずはありません。核保有国がいかに強い圧力を感じているかを示す発言です。
核保有国は「巻き返し」をはかろうとしています。アメリカは新たに「核軍縮のための条件創造」(CCND)なるものを持ち出しました。こうした「条件づくり」は「ハードワークであるが、重要な仕事」とし、それをしない核兵器禁止条約は「非現実的で、非生産的な近道」と非難したのです。これは、情勢の改善が先だとして、核兵器の禁止と廃絶を先送りする主張に他なりません。核保有国などはこれまでも、核廃絶は「究極の課題」で、段階的にやるべき(「ステップ・バイ・ステップ」)だと言って、核兵器禁止・廃絶をいますぐ交渉することに反対してきました。今回の「条件づくりが先」という主張は、こうした従来の主張からも後退したものです。
830万人のヒバクシャ国際署名を国連第1委員会のイオン・ジンガ議長(左から2人目)に届けた日本被団協の木戸季市事務局長(中央)、濱住治郎事務局次長(右から2人目)=10月10日、ニューヨークの国連本部(池田晋撮影)
五大国の共同声明
米英仏ロ中の核保有五大国は10月22日、核兵器禁止条約に反対する共同声明を発表しました。中国とロシアも参加した5カ国そろっての声明は禁止条約成立後初めてです。声明は「核兵器のない世界」を「究極」目標として先送りし、「核軍縮をさらに前進させられる国際環境づくりをすすめる」としています。つまり、アメリカの主張に英仏のみならず、中ロも足並みをそろえた格好です。
5カ国は声明で、核兵器禁止条約を「支持も、署名も、批准もしない」とあらためて拒否する姿勢を示しました。そして、禁止条約は核不拡散条約(NPT)を害するものであり、「1個の核兵器も削減できない」し、国家間の分断を深め、結果として核軍縮を困難にする、と非難します。
しかし、国際情勢を悪化させているのは、アメリカをはじめ軍事力を誇示する核保有大国の覇権主義的な政策に他なりません。禁止条約は「情緒的だ」(フランス)などと、感情的な悪罵をあびせ、対話・交渉を拒否する核保有国こそ、対立を助長しています。
声明で、五大国は条約に「拘束されない」し、「新たな基準や規範を設けるものではない」と述べています。しかし、これは、条約が、核保有国に「拘束」を感じさせる「新たな規範」となりつつあることを示すものです。
声明は、トランプ政権が中距離核戦力(INF)全廃条約を離脱すると表明したわずか2日後に発表されました。離脱をめぐってアメリカとロシアや中国は互いに非難をし合いました。
しかし、核兵器禁止条約に対抗する「大目標」のためには、五大国はさまざまな矛盾をはらみながらも、「結束」しています。核保有国は一致して禁止条約の流れを妨害しようとしている。ここに、基本的な対立構図があります。(つづく)
「しんぶん赤旗」日刊紙 2018年11月21日付掲載
核保有大国は、表向きは核兵器廃絶反対とは言えず、「段階的に廃絶するんだ」と言ってきました。核兵器禁止条約が採択されてからは、その「段階的廃絶」も「条件づくり」が必要だと後退。追いつめられた結果です。