きんちゃんのぷらっとドライブ&写真撮影

「しんぶん赤旗」の記事を中心に、政治・経済・労働問題などを個人的に発信。
日本共産党兵庫県委員会で働いています。

スポーツ界の今を考える 改革の道のり② 大事なのは三つの「F」

2018-11-22 11:09:35 | スポーツ・運動について
スポーツ界の今を考える 改革の道のり② 大事なのは三つの「F」
日本トップリーグ連携機構 市原則之専務理事
いちはら・のりゆき=1941年10月30日、広島市生まれ、77歳。ハンドボールの元日本代表選手、監督。日本ハンドボール協会副会長、同リーグ機構会長、JOC副会長、専務理事などを歴任。現在は、団体ボール競技のリーグを束ねる日本トップリーグ連携機構の専務理事。広島山陽高等学校理事長

暴力指導やパワーハラスメントは、日本のスポーツ界の奥深いところにある問題です。
日本オリンピック委員会(JOC)専務理事だった2013年1月、柔道の女子15選手が私のところに訴えにきました。
代表監督らの暴力指導の中身はひどいものでした。これが社会問題になり、日本のスポーツ界は暴力指導に正面から向き合うことになりました。

暴力の克服へ
スポーツ団体が共同で「暴力行為根絶宣言」を出しました。「フェアプレーの精神やヒューマニティーの尊重を根幹とするスポーツの価値とそれらを否定する暴力とは互いに相いれない」と。しかし、私たちはこの問題を克服できていません。
そもそもスポーツ界の暴力は、軍隊的な指導の名残でもあります。欧米に比べ日本人は体格やパワー、筋力で劣ります。
それを昔は持久力や精神力、根性で克服しようと過酷な練習で心身ともに選手を追い込みました。
しかし、選手の人権を認めないところにスポーツ指導は成り立ちません。何より指導者の意識の転換が求められます。
JOCは1996年アトランタ五輪の成績不振を機に「ゴールドプラン」(2001年)という競技力向上戦略をつくりました。柱の一つは指導者養成です。各競技の代表チームの指導者の資格制度をつくり、科学的で国際的な視野を持った指導者を輩出するためです。



平昌五輪の選手村で食事をする選手たち=2月6日(AFP時事)

人間性を育む
私たちはただ強い、メダルを取れる選手を育成すればいいと考えているわけではありません。コーチ、指導者は素晴らしい人間性を育む人でなくてはなりません。
私はスポーツには三つの「F」が大事だとよく話します。一つはファイティングスピリット。常に全力を尽くす。第二はフェアプレー。スポーツの公平・公正な精神を培う。三つ目はフレンドシップ。友情を育むこと。この三つは五輪の「選手村」の精神です。
貧しい環境の国、そうでない国の選手も同じ食事や生活をし、同じ条件でたたかう。そして選手村に帰って「よく頑張った」と交流し合う。この精神を指導者も選手も身につけることが大事だと思います。
スポーツには人々に勇気や夢を与え、元気にする力があります。私はロンドン五輪(12年)で改めて実感しました。
このときJOCは東日本大震災で被災した20人の子どもたちを招待しました。両親やきょうだいらを亡くした子たちです。日に日に表情が生き生きと変わるのがわかりましたが、一人だけ変わらない子がいたのです。
競技を見ていても一人ポツンとして、お世話係のオリンピアンが「連れてこない方がよかったかな」と嘆くほど。ところが、最後の女子サッカーの準決勝のときに変わりました。競技が進むにつれて、みんなのそばに寄ってきて、日本が勝った瞬間は輪の中心でともに喜び合ったのです。
私はそれを見て、子どもの心を変えられるスポーツは、すごいなと改めて。指導者も選手もこのスポーツの持つ力を自覚すべきです。

1人でも告発
5年前、柔道の女子選手は勇気をもって15人で暴力を告発しました。いまは1人でも告発する選手が出てきています。これは変化であり一つの光です。選手が自立し、暴力を憎む気持ち、人権意識が育っている証しです。
「指導者は学ぶことをやめたら、教えることをやめなくてはいけない」
サッカーの元フランス代表監督の言葉です。選手を真ん中におきながら、ともに成長できる、真摯(しんし)な監督、コーチを増やすことが、スポーツ界を変える力になる。私はそう確信しています。(和泉民郎)(つづく)

「しんぶん赤旗」日刊紙 2018年11月18日付掲載


日本のスポーツ界にとって、暴力問題は根深い。欧米との体格の差を、持久力や根性で克服しようした時代があった。その名残りが暴力にも。
3つの「F」とは、ファイティングスピリット、フェアプレー、フレンドシップ。