きんちゃんのぷらっとドライブ&写真撮影

「しんぶん赤旗」の記事を中心に、政治・経済・労働問題などを個人的に発信。
日本共産党兵庫県委員会で働いています。

不安定さ増す金融市場① 同時株安 背景にバブル

2018-11-03 08:15:38 | 経済・産業・中小企業対策など
不安定さ増す金融市場① 同時株安 背景にバブル
群馬大名誉教授 山田博文さん

同時株安など世界の金融市場が不安定さを増しています。群馬大学名誉教授、山田博文さんが背景を解説します。

10月第2週に世界同時株安が発生し、翌週から乱高下を繰り返しています。近年、世界の株式市場で連動しながら乱高下する株価の動向は、一過性のものでなく、その背景は、現代の寄生的・腐朽的なバブル経済にあるようです。
1990年代からほぼ10年前後の周期で、日本株バブルの崩壊、アメリカのIT(情報技術)バブル崩壊、住宅バブル崩壊とリーマン・ショック、と続きました。そして、歴史上最高値に達したアメリカの株価を前に、「トランプ・バブル」の崩壊が予測されています。
額に汗して社会に有用な財やサービスを生産するのではなく、目前の金銭的利益だけを追求するバブル経済は、膨張によって、大企業・金融機関・投資家・富裕層など1%の「持てる者」の資産を拡大しました。崩壊によって99%の「持たざる者」の生計を破壊し、貧困と格差を拡大してきました。



10月23日、ニューヨーク証券取引所で株価を見るトレーダー(ロイター)

あふれるマネー
アメリカのダウ平均株価や日本の日経平均株価のような巨大株式市場の株価が短時間で大きく乱高下するのは、株式投資に運用されている世界のマネーがそれだけ巨額だからです。
米欧、日本、中国の中央銀行は、リーマン・ショック対策で一斉に大規模な量的金融緩和(QE)に踏みだし、この10年間で約5倍の緩和マネーを供給してきました。しかし、世界全体の国内総生産(GDP)は1・2倍しか増えていないので、余剰な緩和マネーは目前の利益を求め、世界中の株式、債券、通貨、不動産、原油などへ投機的に運用されてきました。
株価がトランポリンのように短時間で乱高下するのは、巨額の売買が1秒間に1000回から1万回の超高速取引(HFT)で行われ、日米の株式・債券市場で60~70%のシェアを占めるに至ったからです。市場はコンピューター・プログラムに主導され、飽くことなく利益を追求する野蛮な資本の論理が貫かれます。相場は乱高下し、世界の金融市場は不安定化します。
あふれる緩和マネーは、もちろん利益が期待できれば世界中の実体経済に流入していたため、欧米や新興国、特にアメリカでは、バブル景気とインフレ懸念が表面化してきました。

米利上げで転機
このような事態を前に、欧米の中央銀行は行きすぎた金融緩和政策からの出口を模索し、量的緩和を縮小したり、政策金利を引き上げたりしてきました。
今回の世界同時株安を誘発し、新興国から米国ヘマネーを還流させたきっかけは最近の米連邦準備制度理事会(FRB)の利上げでした。金利が上がれば、リスクの高い株式や新興国投資からマネーを引き揚げ、より安全な国の銀行預金や国債などへ移し替えます。そこで安定した利益が追求されるからです。
世界株安の被害は投資家だけに限定されません。各国の金融危機や経済不安を誘発してきました。マネーが流出した新興国では、経済停滞と通貨安を誘発し、深刻な被害が発生します。
そのうえ、「アメリカ・ファースト」を掲げたトランプ政権による米中貿易戦争は、世界経済の足を引っ張っています。経済協力開発機構(OECD)によれば、関税で貿易コストが10%上昇すると、世界のGDPを1・4%押し下げるようです。世界の景気は冷え込み、高い関税は、国家には税収をもたらしますが、課税分を転嫁された高い商品を買わされる各国の国民には生活苦をもたらします。(つづく)(2回連載です)

「しんぶん赤旗」日刊紙 2018年11月2日付掲載


欧米諸国は、行き過ぎた金融緩和を改めて、政策金利を引き上げたりしている。
それはそれで順当なことなんですが、株価などに影響を及ぼす。
それだからこそ、実際経済を、国民の生活を支えることが大事。