きんちゃんのぷらっとドライブ&写真撮影

「しんぶん赤旗」の記事を中心に、政治・経済・労働問題などを個人的に発信。
日本共産党兵庫県委員会で働いています。

核兵器禁止条約と世界そして日本③ 被爆国政府の責任

2017-07-14 13:44:22 | 平和・憲法・歴史問題について
核兵器禁止条約と世界そして日本③ 被爆国政府の責任

「我が国の対応は全く変わっていない。ぶれてはならないと考えている」。岸田文雄外相は11日の閣議後記者会見でこう述べ、核兵器禁止条約の成立後に、別所浩郎国連大使が「日本は署名しない」と述べたことについて、政府の態度を正式に表明しました。

核保有国に同調 国内外から批判
被爆地・広島選出の岸田外相は昨年10月28日の記者会見で、「交渉に積極的に参加し、唯一の被爆国として主張すべきことはしっかり主張したい」と表明していました。
その後、米国で核兵器増強を打ち出すトランプ政権が誕生。「核抑止力に影響が及ぶ」として交渉不参加を求めるなど、同盟諸国に圧力をかけました。
米国の圧力に屈する形で、日本政府は会議への不参加を決定。米ニューヨークで3月に交渉会議が始まった際には、高見沢将林軍縮大使が「国際社会の分断を一層深め、核兵器のない世界を遠ざける」と述べ、交渉への不参加を宣言しました。
条約成立後も、核保有国と足並みをそろえ「署名しない」と表明した政府に対し、被爆者をはじめ、国内外から失望や強い批判の声が上がりました。
被爆者の田中煕巳氏は「アメリカに唯々諾々と従う日本政府の姿勢は大変情けない。同盟国というより属国のような感じさえします」と批判。フランス平和委員会のロラン・ガルディアン会長は「(被爆国政府としての)責任を放り出し、強者を傷つけまいとおびえている」と厳しく指摘しました。
一方でロラン氏は、日本政府は「核廃絶を目指す国際条約が圧倒的多数で成立した事実を無視することはできないだろう」と指摘します。
岸田外相は11日の記者会見でかたくなな姿勢を崩さない一方、条約の背景について「核軍縮の進展の遅さに対する非核兵器国による不満、あるいは早急に実質的な進展を得たいという願いがあると受け止めている」と述べ、“理解”も示しています。
ある政府関係者は核兵器禁止条約交渉会議に参加した日本共産党の代表団にこう話しました。「条約ができてしまったので、これからどうするかなんです」



空席の日本政府代表席に置かれた2羽の折り鶴=6月19日、ニューヨーク(池田晋撮影)

条約調印の政府 世論高め樹立へ
核兵器禁止条約は、非締約国もオブザーバーとして締約国会議に参加できるようになっています。さらに、非締約国への条約参加を促します。
核兵器廃絶に向けて世界が本気で取り組み、核兵器禁止条約が122力国もの賛成で成立した今、日本政府は唯一の戦争被爆国として条約参加を決断する責任があります。
国内で条約への参加を求める運動を発展させ、核兵器完全廃絶を目指す世論を多数にして、条約に調印する政府をつくるたたかいが重要です。
(つづく)

「しんぶん赤旗」日刊紙 2017年7月12日付掲載


国連の、核兵器禁止条約を採択した会議は、核保有国と核の傘の国の参加をいつでも歓迎しているんです。

核兵器禁止条約と世界そして日本② 歴史的展望で見る

2017-07-13 17:40:11 | 平和・憲法・歴史問題について
核兵器禁止条約と世界そして日本② 歴史的展望で見る

「このイニシアチブは、国際的な安全保障環境の現実を明らかに無視している」
核兵器禁止条約の採択からほどなくして、核保有国の米英仏は共同声明を発表。署名も批准もするつもりはないとし、「(3国の)法的義務に何も変化は生じない」と強く反発しました。

交渉開始決定の決議上回る賛成
条約に入らない限り、その国には法的拘束力は生じないものの、国際条約として制定されたことを完全無視することがいかに難しいか、核固執勢力の反応は示しています。
条約の条文がほぼ固まった7月に入ってから、何カ国の支持を得られるかがもう一つの注目点に浮上。核保有国からの圧力によって、最終日に欠席する国が出るとの情報も飛び交いました。
しかし、採決結果は、交渉開始を決めた国連総会決議の113力国を上回り、122力国が賛成。後戻りすることのない世界の大勢を示しました。
南アフリカ代表は「『参加するな』との信じられないような大きな圧力にもかかわらず、アフリカ諸国が役割を果たしたことに感謝する」と述べました。
「米英仏の声明にどう応えるのか」「保有国をどう条約に参加させるのか」―。採択後、条約を推進してきた各国大使やホワイト議長に、質問が記者から集中しました。
ホワイト議長は「現在の国際情勢だけを考えるなら、『行動しない』と選ぶことは常に可能だ」と指摘。一方で、歴史を振り返るなら、今では191カ国・地域が参加する核不拡散条約(NPT)も、発効当初はここまで普遍化するとは誰も想像しえなかったとし、「世界は変わる」と歴史的展望で見ることの重要性を強調しました。



記者会見する核兵器禁止条約国連会議のホワイト議長=7月6日、ニューヨーク(池田晋撮影)

禁止範囲めぐり各国真剣な議論
条約交渉が何の障害もなく進展したわけではありません。禁止範囲をより明示的にする立場と、保有国が入った場合に条約の履行を確実なものにする立場で議論は分かれました。
条約交渉に参加した各国は、禁止すべき項目やその範囲などをめぐって真剣な議論を繰り広げました。そして、採択された条約は、画期的な内容を含むものとなりました。
前文では、核兵器の非人道性を詳しく展開し、その使用が国際法や国際人道法に違反するものであることを厳粛に宣言。禁止する内容を明示し、条約の「心臓部」(議長)である第1条では、核兵器の開発、実験、生産、製造、保有、使用とともに「使用の威嚇」まで含まれ、核兵器による威嚇に依存した安全保障論、核抑止力論を明確に否定しています。他国の核兵器の配置・配備の「許可」を禁じ、核兵器の持ち込みなどの「抜け穴」も許さない内容が盛り込まれています。
閉幕にあたり、ホワイト議長は出席者や国連スタッフ、家族へ感謝の言葉を並べ、「今日、ついに私たちは核兵器禁止条約を手にしたと世界に伝えることができる」と宣言しました。議場には、涙をぬぐう外交官らの姿がありました。
(つづく)

「しんぶん赤旗」日刊紙 2017年7月11日付掲載


核兵器禁止条約の第1条。製造や保有はもちろん、「使用の威嚇」まで禁止される。
また、条約に入らなくても、核保有国は条約の存在を無視できない。

核兵器禁止条約と世界そして日本① 「希望のともしび」

2017-07-12 23:14:40 | 平和・憲法・歴史問題について
核兵器禁止条約と世界そして日本① 「希望のともしび」

7月7日午前10時46分、ニューヨーク国連本部第1会議室のスクリーンに賛成122、反対1、棄権1の採決結果が示されました。自らの生存をも脅かす核兵器を、人類が初めて禁止する法規範を手にした瞬間です。
鳴りやまない拍手の中、握手を交わし、採決結果を自らの携帯電話におさめる外交官ら。市民も歓声をあげ、喜びを分かち合いました。



閉幕を迎え、肩を抱き合うホワイト議長と国連の中満泉軍縮担当上級代表=7月7日、ニューヨーク(池田晋撮影)

歴史的な達成に 市民社会が貢献
そこに日本政府の姿はありません。しかし、市民社会の代表席では、亡くなっていった犠牲者の分まで見届けた被爆者サーロー節子さん(85)と日本原水爆被害者団体協議会の藤森俊希事務局次長が握手を交わします。壇上ではホワイト議長と日本人女性として初めて同ポストに就任した中満(なかみつ)泉軍縮担当上級代表が肩を抱き合っていました。日本の政党として唯一参加した日本共産党の代表団も大きな拍手を送りました。
最初の原爆投下から70年余り。確かに、議場には唯一の戦争被爆国としての責務と役割を果たしてきた日本人の姿がありました。
昨年12月の国連総会決議で、核兵器禁止条約の交渉開始と早期締結の要請を受け、3月27~31日、6月15日~7月7日の二つの会期にわたり、半年余りの交渉を続けてきた国連会議。最終日には、参加国、市民社会、議長、国連事務局の間にいくつかの明確な共通認識がつくりあげられていました。
各国代表は採択後の態度説明で、この条約採択が核軍縮分野の「歴史的な達成」であることを口々に表明するとともに、市民社会の貢献なしにはここまで到達しえなかったと、惜しみない賛辞を送りました。

「世界を変える」運動の道しるべ
そして、多くの政府代表が市民社会の中でもとりわけ広島、長崎の被爆者らが、核兵器の非人道性に対する認識の広がりに果たしてきた役割に言及。南アフリカ代表は「彼らヒバクシャがいてこそ条約が可能になった」と述べました。
中満氏も演説で、条約に「ヒバクシャの言葉にできない苦難と、たゆみない努力が多国間の核軍縮条約に初めて刻まれた」と言及。この条約は、「核なき世界の追求へ生涯をささげてきた全ての人々にとり、希望のともしびとみなされるべきものだ」と述べ、核廃絶に向けた運動の道しるべとしての意義を強調しました。
同時に、議場で共有されていたのは条約の採択が最終ゴールではなく、核兵器の完全廃絶に向けた新たな出発点だということです。
サーロー節子さんは、演説の最後をこう締めくくりました。「一緒に前へ進み、世界を変えましょう」
会議終了後、日本共産党の志位和夫委員長はホワイト議長と握手、「条約が採択されたことを日本国民を代表して歓迎します」と述べました。
(つづく)

「しんぶん赤旗」日刊紙 2017年7月10日付掲載


「核兵器禁止条約」の源流に「ヒバクシャ」の地道な運動がある。まさに、「希望のともしび」です。

近づくG20サミット 断層④ 税逃れの対策にも暗雲

2017-07-10 12:26:44 | 国際政治
近づくG20サミット 断層④ 税逃れの対策にも暗雲

経済協力開発機構(OECD)がとりまとめる多国籍企業の税逃れ(BEPS)対策は、20力国・地域(G20)の後押しで進んできました。税逃れの被害を最も深刻に受ける途上国が参加し、世界規模で対策を実施する画期的な枠組みがつくられてきました。
しかしトランプ米政権の登場で暗雲が垂れこめています。米国が世界最大・最悪のタックスヘイブン(租税回避地)になる危険が生じています。

多国間条約に米国署名せず
6月7日、BEPS対策の一環である多国間条約の署名式がパリで行われました。多国籍企業が税逃れに悪用する租税条約の抜け穴を、多国間の条約で一挙にふさぐ目的です。
署名したのは日本を含む67力国・地域です。ところが米国は署名を見送りました。
パリでの署名式は、主要7力国(G7)財務相・中央銀行総裁会議(5月)が「期待する」と表明していたものです。そのG7の中で、米国だけが署名を見送る異常事態です。米国との間で各国が結んでいる租税条約の抜け穴をふさがなければ、アマゾンなど米国企業の大規模な税逃れが放置されます。
今回のG20の目玉の一つに、税逃れ対策の「ブラックリスト」(要注意対象の一覧)があります。税情報の交換に非協力的な国・地域のリストを承認し、対策を検討するのです。しかしこれにも疑問符が付いています。
すでにリストは公表されています(6月28日)。基準を満たさず「ブラックリスト」に載るのは中米の小国トリニダード・トバコだけ、という内容です。
「基準が甘すぎる」
そう指摘するのは、国際民間団体タックス・ジャスティス・ネットワーク(TJN)です。特に問題視するのが米国です。
G20は、非居住者の金融口座情報を各国の税務当局が自動的に交換する制度を推進してきました。外国口座を使った脱税を防ぐためです。米国はこの制度に参加しようとしません。自国の法律(外国口座税務コンプライアンス法=FATCA)で対応する姿勢です。
FATCAは一方的な制度です。他国の金融機関に米国への情報提供を義務付けながら、米国の金融機関には他国への情報提供を義務付けないのです。
TJNは痛烈に批判しています。
「もし一つの国だけをブラックリストに載せるとすれば、それはカリブ海の小さな島ではない。タックスヘイブンの米国になるであろう」

資金流入狙うトランプ政権
トランプ政権は法人税率を「世界最低水準に引き下げる」といいます。海外子会社から米国の親会社への配当を無税にし、米国企業が過去に海外で蓄えた資金を自国に還流させる際の税率を下げるとも表明しています。
例えば米国企業アップルは20兆円を超す利益を海外に蓄えているといわれます。外国での販売利益をタックスヘイブンのアイルランドに移し、課税を逃れた結果です。そうした膨大な資金を丸ごと米国内に取り込むのがトランプ政権の狙いです。
米国企業の他国での税逃れは放任され、資金はもっぱら世界最大のタックスヘイブン米国に流入する―。
「米国第一を掲げるトランプ政権の一連の動きの先に、不穏な末路が見え始めています。米国に本拠を置く多国籍企業と米国自身の利益だけを追求する利己的な戦略を黙って見過ごすなら、世界各国の税収入はますます空洞化し、格差が拡大します。
税逃れ対策のためには米国の身勝手を許さない取り組みが不可欠です。G20で実質的な議論が行われるかどうか。注目されます。
(おわり)(金子豊弘、杉本恒如が担当しました)

「しんぶん赤旗」日刊紙 2017年7月7日付掲載


タックスヘイブン対策とかいってみても、結局は一番のタックスヘイブンはアメリカだったりして…
アメリカひとり駄々をこねても、それが許されない世界になってきています。

近づくG20サミット 断層③ 温暖化対策の前進へ試練

2017-07-07 15:46:26 | 国際政治
近づくG20サミット 断層③ 温暖化対策の前進へ試練

地球温暖化対策の新たな枠組みである「パリ協定」から離脱するというトランプ米大統領の表明が世界に衝撃を与えています。

トランプ政権 再交渉を要求
パリ協定は2015年12月の国連気候変動枠組み条約第21回締約国会議(COP21)で採択されました。温室効果ガス削減のための京都議定書(1997年採択)に代わる20年以降の枠組みです。世界の気温上昇を産業革命以前から「2度未満」に抑える長期目標を設定。今世紀後半に温室効果ガスの排出を実質ゼロにすることをめざします。歴史上初めて、すべての国が参加する合意となりました。
16年9月の20力国・地域首脳会議(G20サミット)に先立ち、パリ協定の批准を発表したのがオバマ米大統領でした。中国の習近平国家主席との共同発表でした。温室効果ガスの二大排出国の批准で機運が高まり、パリ協定は同年11月にスピード発効したのでした。
ところが、温暖化に懐疑的なトランプ政権の誕生で事態は急変しました。亀裂は今年5月に開かれた主要7力国(G7)首脳会議で表面化しました。気候変動の問題で米国が「コンセンサスに参加する立場にない」と、首脳宣言に書かざるをえなかったのです。
6月1日、トランプ大統領はパリ協定から離脱し、米国に有利になるよう再交渉を求める意向を正式に表明しました。
トランプ氏は「パリ協定は米国にとってこの上なく不公平だ」と主張。中国やインドが石炭の生産を拡大できるのに、米国は炭鉱を閉めなければならないとして、次のように述べました。
「私はパリの市民ではなく、(鉄鋼業の拠点)ピッツバーグの市民を代表するために選出されたのだ」



パリ協定からの離脱を表明するトランプ米大統領=6月1日、ワシントン(ロイター)

米国内外から批判噴き出す
こうしたトランプ氏の言動に対し、米国内外から一斉に批判が噴き出しています。
ピッツバーグのペドゥート市長はツイッターで反論しました。
「私たちは、市民、経済と未来のためにパリ協定のガイドラインに従う。ピッツバーグは世界を支持し協定を守る」
米国の経済界からもパリ協定への残留を強く求める声が出ています。「低炭素の米国を支持するビジネス界」キャンペーンにはインテルやナイキなど1000以上の企業・投資家が賛同。温暖化対策のメリットを強調しています。「いま正しい行動をとれば、雇用が創出され、米国の競争力を押し上げるだろう」
多くの市民団体が「暴挙」「背信行為」と離脱表明に強く抗議する声明を発表しています。地球環境市民会議(CASA)は指摘します。「地球温暖化問題での最大の『不公平』は、先進国といわれる国々の排出した温室効果ガスによって後発開発途上国などの人々がその影響を最も強く受けることである」
メルケル独首相は連邦議会での演説(6月29日)でG20に向けた決意を述べました。
「(パリ協定での)意見の対立は明らかであり、うわべだけとりつくろうのは不誠実だ。私は決してそんなことはしない」
トランプ政権の「米国第一主義」という試練にどう立ち向かうのか。G20の大きな焦点になりそうです。
世界第5位の温室効果ガス排出国である日本政府の姿勢も問われます。安倍晋三政権が決めた30年の削減目標は1990年比で18%という不十分なものです。石炭火力発電の増設など逆行する政策も進めています。
WWFジャパンは「積極的な解決策をもって、アメリカに対してパリ協定体制参画の意義を示していくことが必要である」と強調しています。
(つづく)

「しんぶん赤旗」日刊紙 2017年7月6日付掲載


トランプ氏は、「米国経済の発展のためにはパリ協定から撤退しないといけない」という事だが、米経済界は意外にも一概にそれを支持しない路線のようだ。