きんちゃんのぷらっとドライブ&写真撮影

「しんぶん赤旗」の記事を中心に、政治・経済・労働問題などを個人的に発信。
日本共産党兵庫県委員会で働いています。

けいざい四季報2021① 世界経済 原油高 物価抑制へシフト

2021-12-22 09:04:06 | 経済・産業・中小企業対策など
けいざい四季報2021① 世界経済 原油高 物価抑制へシフト
新型コロナウイルス禍からの経済回復に伴って、世界的に資源・エネルギー需要が拡大し、原油価格も上昇しました。インフレ高進を憂慮する米国は金融政策の軸足を物価抑制へシフトしました。中国では、不動産大手の経営危機の波及が懸念されています。

ポイント
① 米国が緩和終了時期を前倒し、ゼロ金利を来年解除の方針。物価抑制ヘシフト
② コロナ禍からの回復に伴い、原油価格が上昇。消費国は備蓄を協調放出の構え
③ 格付け大手が中国恒大を一部デフォルトと認定。IMFは市場への影響を警告


緩和を早期終了
米連邦準備制度理事会(FRB)は12月15日、連邦公開市場委員会(FOMC)で、量的金融緩和の縮小ペースを月300億ドルと従来の2倍に加速し、終了時期の想定を22年6月から3月へ前倒しする方針を決めました。政策金利見通しでは、22年中に事実上のゼロ金利政策を解除し、3回利上げするシナリオが示されました。
FOMC後の声明では、「高インフレは一時的」としてきたこれまでの文言を削除し、物価高への警戒感を強めました。12月10日公表された11月の米消費者物価指数(CPI)上昇率は前年同月比6・8%と、第2次オイルショック後の1982年以来約39年ぶりの高水準となりました。物価高は、エネルギーや中古車だけでなく、家賃や衣料品など広範囲に及んでいます。
FRBは、新型コロナウイルス危機を受けて20年に導入した量的緩和の縮小を11月に始めたばかり。物価上昇圧力が強まる中、量的緩和を早期に終え、利上げに踏み切る構えです。



ニューヨーク証券取引所のスクリーンに映し出されたパウエルFRB議長の記者会見=12月15日(ロイター)

世界経済の主な出来事(10~12月)
10/12IMF報告書、中国恒大について「債務不履行の懸念」を指摘
10/13G20財務相・中銀総裁会議、新国際課税ルールを支持
10/26WTI先物が1バレル=84.65ドルと2014年10月以来7年ぶりの高値
11/3FRB、量的金融緩和策の縮小を11月中に開始と決定
11/23米大統領、主要消費国と協調した備蓄石油の放出を発表
12/2OPECプラス、2020年1月も小幅増産の方針を決定
12/9格付け大手フィッチ、中国恒大が「一部債務不履行」と認定
12/10米労働省、11月の消費者物価指数が前年比6.8%上昇と発表
12/15FRB、量的緩和策終了を2022年3月に前倒しする方針を決定
12/16英イングランド銀、政策金利を0.15%引き上げ


7年ぶりの高値
ニューヨーク商業取引所(NYMEX)で10月26日、米国産標準油種WTI先物が1バレル=84・65ドルと、14年10月以来7年ぶりの高値を付けました。コロナ禍からの経済回復に伴い、世界的に資源やエネルギーの需要が拡大し、原油価格も上昇に転じました。
22年の中間選挙を前に、インフレ高進を憂慮するバイデン米大統領は11月23日、原油高対策として、主要消費国の日本、中国、インド、英国、韓国と協調して石油備蓄を放出すると発表しました。中国は「自国の需要に基づいて石油備蓄を放出する」と表明。
一方、石油輸出国機構(OPEC)加盟・非加盟の産油国で構成するOPECプラスは8月以降、小幅増産を継続。足元の需要増より、その後の需要減を考慮しているとされます。その後、新しい変異株のオミクロン株が出現すると、再び需要減の予想から、原油価格が下落しています。

一部債務不履
格付け大手のフィッチ・レーティングスが12月9日、経営危機の中国不動産開発大手、中国恒大集団が「一部債務不履行(デフォルト)」に陥ったと認定しました。部分的ながらデフォルトとしたのは、格付け大手では初めて。中国企業で過去最大のデフォルトになる可能性があります。
恒大は11月に支払期日があった子会社発行のドル建て社債の利息8250万ドル(約93億円)について、30日間の猶予期間の最終日である米東部時間12月6日(日本時間7日)までに支払う必要がありました。しかし、欧米メディアは債権者が利払いを受けていないと報じていました。
国際通貨基金(IMF)は10月12日、世界の金融システムの安定度を分析した報告書を発表。中国恒大集団について「デフォルトへの懸念が市場で高まっている」と指摘し、中国経済をけん引してきた不動産業界全体に危機が波及すれば「世界の資本市場に影響を及ぼす」と警告していました。
(つづく)(4回連載です)

「しんぶん赤旗」日刊紙 2021年12月21日付掲載


米国が緩和終了時期を前倒し、ゼロ金利を来年解除の方針。日本は明らかに後れをとってる。
コロナ禍からの経済回復に伴い、世界的に資源やエネルギーの需要が拡大し、原油価格も上昇に。日本では、運輸業界、農業や漁業での燃料高騰に圧迫されています。
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公立小学校教員 「超勤訴訟」を考える② 支援事務局の思い 労働基準法での勝負でつながりたい 教員の働き方 変える希望

2021-12-21 07:11:49 | 働く権利・賃金・雇用問題について
公立小学校教員 「超勤訴訟」を考える② 支援事務局の思い 労働基準法での勝負でつながりたい 教員の働き方 変える希望
埼玉県公立小学校教員の田中まさおさん(仮名)の超勤訴訟を支える事務局メンバーのうち、2人に思いを聞きました。(堤由紀子)

労働基準法での勝負でつながりたい
大学院生 佐野良介さん(24
田中まさおさんとの出会いは2019年3月、埼玉大学でのイベントでした。その前年にできた教員を助ける団体「TeaCher Aide(ティーチャーエイド)」と出合い、教員をめざす学生や、高橋哲先生とも、奇跡のように集った。そこからの関わりです。相手を尊重して意見を言う対等平等の関係。共同するってこういうことなんだと感じています。

「怒り」の理由
あえて「画期的な判決」と“旗出し”したのは、「不当判決」と出してしまうと、意味のない裁判にされてしまうからです。なのに「不当判決」という報道が一人歩きしています。
判決を聞いた時、やはり最初はぼーっとしてしまいました。現状のまま変わらないと思う自分と、変えなきゃという2人の自分がいる。でも、ここであきらめたら、かけがえのない教員として頑張ろうとしている友達の思いが消えてしまう。その思いを知ってしまったことが、ある種のハングリーさにつながっているかもしれません。
怒りがあるというのは、まだ自分がこうありたいと思える状態です。そんな中で、声を出せない人の声をどう伝えるか。抜け落ちてしまう声もたくさんあります。
でも、「先生たちも声あげろよ」というのには反対します。“弱者”に声をあげうというのには、強者がどこまでも権力をふるっている形になるし、そういうことを求める自分たちが権力をもっていることになります。それが大嫌いなんです。

学生を媒介に
学生は、社会と教員の間に立つ媒介みたいな役割ができると思うんです。できないことの方が多いし、お金持っているわけでもない。ほぼ無力かもしれないけれど、1%ぐらいはできることがあるんじゃないかと。
公立学校教員の給与を定める「給特法」の是非を前面に出すと、せっかくつながれる人たちの中で分断が生まれないか心配です。そうではなくて「あくまでも労働基準法で勝負しているんだよ」と伝えて、つながりたいです。



判決後、「教員の働き方改革へ前進!」と掲げる五十嵐さん(右端)と、「画期的な判決」と掲げる佐野さん(右から3人目)=10月1日、さいたま地裁前(佐野さん提供)

教員の働き方 変える希望
大学生 五十嵐 悠真さん(22)
高校生の時、過労死の労災認定を求める裁判の傍聴に行きました。そこでのご遺族の表情が忘れられず、労災認定を求める裁判や、国や自治体を訴えるという労力のかかる構造に、問題を感じていました。
その後、Teacher Aideの活動の中で裁判を知り、支援事務局を立ち上げるという連絡を聞き、支援に関わろうと思いました。裁判の傍聴に行き、そこで田中先生にお会いしました。

悩ませる原因
若者の進路選択は基本的に18歳とか22歳の時。その時に知っている職業から選ぶとなると、全員が知っているのが教員。それなのに採用倍率が低くなっているのは、かなり不自然です。教員になるかどうか悩ませる原因として、労働問題があると思います。
僕たちが支えているという感覚ではなくて、むしろ田中先生が裁判を通じて「教員の働き方は変えられる」という希望をかなえるチャンスをくれた。感謝しかありません。
教員をめざす学生自身が思いを発信するのは、本当に難しいんです。裁判は起こせないし、署名活動といっても、教員になりたい人ほどめちゃめちゃ勉強していて忙しい。教員採用試験の倍率が低いと騒がれますが、たとえ1・1倍でも自分が落ちるかもしれないと必死です。いい教員になるための勉強もです。

前向きの判決
「不当判決」という報道で、絶望を感じた教員が多くいます。でも一番伝えたいのは、今まで認められなかった時間外労働が労働時間として認められた、本当に前向きで希望ある判決だということです。署名も4万4000筆ほど集まっています。行政府にも働きかけながら「おかしい」という声をもっと広げて、裁判官も認めざるを得ないような世論形成ができれば、大きく変わる可能性があります。
田中先生はお金がほしいわけじゃありません。労働時間を認めてもらうには裁判しかなかったし、若い世代のためにたたかっている。僕もこんな60歳になりたいです。

「しんぶん赤旗」日刊紙 2021年12月18日付掲載


教員を目指している学生や大学院生が、教員の働き方やまともな労働条件を確立していくことに関わるって素敵です。
若者の進路選択は基本的に18歳とか22歳の時。その時に知っている職業から選ぶとなると、全員が知っているのが教員。それなのに採用倍率が低くなっているのは、かなり不自然です。教員になるかどうか悩ませる原因として、労働問題がある。
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公立小学校教員 「超勤訴訟」を考える① 労働時間外に及ぶ専門職 常態化は労基法32条違反

2021-12-20 07:02:46 | 働く権利・賃金・雇用問題について
公立小学校教員 「超勤訴訟」を考える① 労働時間外に及ぶ専門職 常態化は労基法32条違反
教員の深刻な長時間過密労働。改善のきざしはなかなか見えません。埼玉県の公立小学校教員、田中まさおさん(仮名)が、県を相手取った訴訟の判決が10月、さいたま地裁から出されました。原告の請求そのものは棄却されましたが、今後に生かせる画期的な内容も少なくありません。判決の意義や支援者の思いを2回に分けて紹介します。今回は埼玉大学准教授(教育法学)の高橋哲さんです。(堤由紀子)

埼玉大学准教授(教育法学) 高橋哲さん



争点は何なのか
労働基準法32条では、週40時間、1日8時間という労働時間が定められています。今回の裁判で争われた重要な点は、大きくいって二つです。
一つは、「公立の義務教育諸学校等の教育職員の給与等に関する特別措置法(給特法)」のもとで発生した時間外労働が、労基法上の労働時間に該当するかということです。これまでは、給特法のもと「超勤4項目」(別項参照)以外の時間外労働は自発的な労働とされ、労働時間ではないとされてきました。
二つ目は、労働時間に該当するならば労基法32条違反になり、労基法37条の超勤手当の対象になるか、少なくとも、違法な働かせ方なので国家賠償法の対象になる、と追及しました。
私たちが一番恐れていたのは、32条を超える違反があっても給特法のもとで許された労働なんだ、と門前払いにされることでした。


給特法が例外的に時間外業務として認めている「超勤4項目」
① 生徒の実習に関する業務
② 学校行事に関する業務
③ 職員会議に関する業務
④ 非常災害等やむを得ない場合に必要な業務

田中さんの裁判とは…
田中さんは、教員の時間外労働に残業代が支払われないのは違法だとして2018年9月25日、さいたま地裁に提訴しました。公立学校の教員には給特法のもと、給料月額4%に相当する「教職調整額」が支給される代わりに、超勤手当は支給されていません。田中さんは、月約60時間超が「ただ働き」とされていると主張。労基法37条にもとつく割増賃金の請求を行うとともに、国家賠償請求を行いました。今年10月1日、同地裁は原告の訴えを棄却。田中さんは控訴してたたかっています。

画期的な判決に
ところが、二つの点で画期的な判決でした。
第一が、今まで労働時間として認められてこなかった時間外労働が、労基法上の労働時間にあたり、32条が定めている上限規制に収まっていなければいけない時間だと認められたことです。
判決では授業準備について「1コマ5分」しか認められなかった、と落胆する必要はありません。原告は「時間外で翌日の授業準備をするために、最低30分は必要だ」と主張しました。つまり、1日6コマと考えると1コマ最低限5分、という「最低限」の時間を判決が認めたのです。
さらに、校長の命令がなくても、職員会議を通じて担うことになった労働は労働時間だと認められました。こういう判決のメッセージは正確に受け取ってほしいです。
第二が、労働時間と認められて、それが常態化している場合、労基法32条に違反したものとして国賠法上の違法にもなり得るとされた点です。その結果、給特法のもとでも、どれだけ働いても給料の上乗せは調整額4%分しか認めない、いわゆる「定額働かせ放題」ではないことが、明確になりました。
実はこれは、文部科学省の「学校の働き方改革」にも釘をさす判示です。文科省は教員の時間外労働に上限指針を設けて、原則月45時間、年間360時間、特別な事情があった時は月100時間、年間720時間までは合法としています。今回の判決は、時間外労働が月45~100時間あった場合に、損害賠償の対象となり得ることを示しました。文科省の上限指針の枠組み自体を否定した。これも画期的です。

正規の時間内で
今回は、教員の業務が時間外に行われたものとして認めるかどうかがポイントでした。でも、教材研究も保護者対応も丸付け業務も、教員の専門性に関わる部分です。本来は正規の労働時間に入っていなければいけないものです。教員はこれを重視しているため、時間外でもやらざるを得ないのです。
例えば、アメリカのニューヨーク市では、教員組合との協約に次のようなことが定められています。正規の労働時間内で教員の研修時間を週75分、専門的活動や保護者対応の時間を85分、さらに週あたり少なくとも5コマの授業準備時間を確保するということです。
教員にとって不可欠な業務を、時間外にやるのかやらないのか。控訴審を通じて、そんな選択を教員が迫られる事態を変えたいと思います。
(つづく)

「しんぶん赤旗」日刊紙 2021年12月17日付掲載


小学校教員の翌日の授業のための準備時間、毎日最低30分は必要だと。1カ月20日間の授業だとわずか10時間。でも、実際は60時間に及ぶ超過勤務が。
給料月額4%に相当する「教職調整額」が支払われているが、いわゆるみなし労働で実態に合っていない。
判決が画期的だというのは、第一が、今まで労働時間として認められてこなかった時間外労働が、労基法上の労働時間にあたり、32条が定めている上限規制に収まっていなければいけない時間だと認められたこと。
第二が、労働時間と認められて、それが常態化している場合、労基法32条に違反したものとして国賠法上の違法にもなり得るとされた点。
本来なら、超過勤務しなくていいように教員の増員を図るべきですが、その一歩手前でも超過勤務手当を支給すべき。
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社会保障と新自由主義④ 「新規まき直し」の好機

2021-12-19 07:00:10 | 予算・税金・消費税・社会保障など
社会保障と新自由主義④ 「新規まき直し」の好機
神戸大学名誉教授 二宮厚美さん

―岸田文雄政権の社会保障政策は新自由主義の枠内で展開されるとみますか。
コロナ禍で新自由主義の破綻があらわになり、野党共闘勢力が政策転換を掲げて攻め込んでいたために、岸田首相は総選挙に向けて「新自由主義の転換」というポーズをとらざるをえませんでした。野党の攻勢をかわす狙いだったといえます。
しかし、岸田政権は「応益負担」「水平的所得再分配」「共助・連帯としての社会保障」といった新自由主義の枠組みを何一つ変えようとしていません。こうした新自由主義の枠組みを踏襲し、強化しようとしているのが、自民党、公明党、日本維新の会などの政治勢力です。国民民主党もほとんどそちらの方へ軸足を移しています。
新自由主義からの転換を進めるには、野党共闘による政権交代を実現するほかありません。一方で、自民・公明・維新などは来年の参院選で3分の2の議席を占めることを狙い、挫折しかけた改憲・新自由主義路線を立て直す野望をあらわにしています。せめぎ合いが強まるでしょう。



「石炭火力発電をやめて」「政府は今すぐ行動を」などとアピールするFFF(フライデーズ・フォー・フユーチャー)東京の若者たち=11月12日、国会正門前

民衆の怒り爆発
―世界では新自由主義の転換をめざす動きが起きています。
新自由主義派は、富裕層と大企業に課税すると「国外に逃げる」という理屈で、累進所得税制の無効化を宣言しました。富裕層と大企業への減税を繰り返し、自ら税制を空洞化させながら、財政危機を理由に社会保障給付を圧縮してきました。
ところが、この身勝手な対応に対して民衆の怒りが爆発しました。「1%対99%」の運動、緊縮財政の転換を求める運動、「富裕層と大企業だけが租税回避地に資金を移して課税を逃れる経済構造は不公正だ」と告発する運動が沸き起こりました。
富裕層と大企業への減税を進めてきた先進諸国は軒並み、財政が火の車になりました。コロナ禍に対応できない危機的状況に陥る国も出ました。民衆の運動に押されて法人課税や累進課税を見直す動きが強まり、世界共通の最低法人税率を定めるなどの対策が進んできました。米国でも、バイデン政権が法人課税や金融所得課税を強化しようとしています。
新自由主義的なグローバル化は、税制上・財政上の危機を呼び起こし、支配階級の中からも見直しの動きが出る時代にさしかかったのです。富裕層と大企業に公平な負担を求める草の根運動を強め、新自由主義的な社会保障改革を転換させていくチャンスです。
―コロナ禍の下で医療や介護や保育の現場で働く人々に注目が集まりました。
全世界的に新たな声が起こりました。「看護師、保健師、介護職員、保育士はエッセンシャル・ワーク(人間の生活に必要不可欠な労働)に従事しているのだから、もっと大切にしなければいけない」という声です。エッセンシャル・ワークという耳慣れない言葉が日本でも流行語になるくらいに、日常的に使われる用語になってきました。
医療や介護や保育の現場で働く人たちの頑張りがあったからこそコロナ禍が社会崩壊に至らなかったことを、みんなが知っています。これは新しい国民的合意です。「エッセンシャル・ワーク・ニューディール」と呼ぶにふさわしい出来事です。
ニューディール(新規まき直し)はもともと、トランプで1回のゲームを終えてカードをまき直すことを意味し、1930年代の大恐慌時代にルーズベルト米大統領が「新規まき直し政治」に着手したときに使った用語です。新時代の始まりにはニューディール政治が求められます。

運動広げる若者
コロナ禍の中で生活物資を運んだ非正規の労働者たちを含め、エッセンシャル・ワーカーは低賃金で働き、正当に評価されてきませんでした。こういう人々の要求を束ねて処遇改善の運動を広げていくチャンスの時期が来ています。
コロナ禍の下では同時に、自然環境の重要性を気候変動危機と結びつけて認識し、人間と自然の関係を見直そうという「グリーン・ニューディール」運動が若者を中心にうねりのように広がりました。エッセンシャル・ワーク・ニューディールとグリーン・ニューディールの連合は、新自由主義への現代的な対抗路線になるでしょう。
(おわり)

「しんぶん赤旗」日刊紙 2021年12月18日付掲載


民衆の運動に押されて法人課税や累進課税を見直す動きが強まり、世界共通の最低法人税率を定めるなどの対策が進んできました。米国でも、バイデン政権が法人課税や金融所得課税を強化しようとしています。
「看護師、保健師、介護職員、保育士はエッセンシャル・ワーク(人間の生活に必要不可欠な労働)に従事しているのだから、もっと大切にしなければいけない」
気候危機のもと再生可能エネルギーへの転換の運動も。
エッセンシャル・ワーク・ニューディールとグリーン・ニューディールの連合は、新自由主義への現代的な対抗路線に。
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社会保障と新自由主義③ 呪文のように「自助共助」

2021-12-18 07:18:47 | 予算・税金・消費税・社会保障など
社会保障と新自由主義③ 呪文のように「自助共助」
神戸大学名誉教授 二宮厚美さん

―社会保障を支える財源の面でも新自由主義的な「改革」が進められてきました。
公共財源についても憲法の原則は明確です。支払い能力に応じて負担を課す応能負担です。すべての所得を合算し、総所得に応じて税率を上げる総合累進課税が本来の姿です。
ところが新自由主義的なグローバル化の中で、この応能負担原則が崩されてきました。高利潤の大企業や高所得の富裕層は、高い税率を課す国を逃れて、低税率の地域に資金を移す自由を手に入れたからです。
この間題は2010年代前半の欧州債務危機の時期にあらわになりました。フランスの政権が所得税の最高税率を上げようとしたら、高所得者らの「国外脱出」が相次いだのです。各国の大企業も同様に「高い税金をとるなら海外に逃げるぞ」と脅しをかけ、法人税率の軽減を迫ってきました。過去20~30年の間に所得税の最高税率と法人税率が全世界的に引き下げられ、税制が空洞化しました。



「消費税の5%への減税を」と宣伝する消費税廃止各界連絡会の人たち=4月1日、東京・新宿駅西口

ヨコ型の基幹税
新自由主義派は、富裕層と大企業に逃げられないために、別の財源に頼るしかないと主張します。それが消費税の基幹税化です。
日本では1989年の消費税導入以来、個人・法人所得税の減税と消費税の増税を基本とする税制改革が進められました。安倍晋三政権は法人実効税率(国・地方の法定税率)を37%から29・74%へ下げ、消費税率を5%から10%に上げました。基幹税としての所得税を骨抜きにし、消費税を基幹税にすえることが、新自由主義の税制改革戦略です。
この戦略は、税・財政の所得再分配構造に重大な転換を呼び起こします。憲法の応能負担原則に基づく税・財政構造は、基幹税としての所得・資産税を財源とし、社会保障給付などを通じて、垂直的な所得再分配を行うものでした。すなわち所得の上層から下層へと、タテ型の再分配を行うということです。
しかし消費税は所得の低い人ほど負担率が高い逆進的な大衆課税です。消費税を財源にした所得再分配はとうてい垂直的とはいえません。大衆内部で右からとって左に流す、ヨコ型の水平的所得再分配にとどまります。
新自由主義的税制改革によって、税・社会保障による所得再分配の構造が変質してしまう。これが貧困と格差の重大要因となります。
―現在、日本の新自由主義派が掲げている社会保障の理念はどんなものですか。
現代日本の新自由主義的改革は「権利としての社会保障」を「共助・連帯としての社会保障」に転換します。それを定式化したのが「全世代型社会保障」です。2013年8月の社会保障国民会議「最終報告」に最初に現れ、安倍晋三政権が定式化しました。「自助・共助・公助」の3層構造を社会保障の指導理念と定めたのです。この指導理念を、菅義偉前首相は呪文のように繰り返し口にしました。岸田文雄首相もそのまま受け継いでいます。

給付抑える圧力
本音は自助だけど、憲法があるから自助だけで通すことはできない。そこで「共助、連帯、相互扶助」のような、権利性が不明確な理念への転換を図る。具体的には「『自助の共同化』としての社会保険制度が基本」だとして、保険主義の強化を打ち出しています。
保険料が足りない場合、人権保障型の社会保障なら税金を費やして給付を保障しなければなりません。ところが助け合いの保険主義ではそうなりません。
ここでは、保険原理で言う財政の収支均等原則が重視されます。顧客からとる保険料の総額と、顧客に払う保険金の総額を均等にする原則です。これが社会保険に持ち込まれています。
例えば介護保険は、保険給付の一定割合(約5割)しか税金を投入せず、残りを介護保険料で支える枠組みになっています。収支均等の原則に従い、給付が増えれば保険料が自動的に上がります。
この仕組みは給付を抑える強い圧力として働きます。給料の改善を求める看護師や介護職員の声は、保険料が上がってしまうという壁に阻まれています。
「共助・連帯」の保険原理によって権利性を後退させ、給付を圧縮するのが新自由主義版の社会保障なのです。
(つづく)

「しんぶん赤旗」日刊紙 2021年12月17日付掲載


公共財源についても憲法の原則は明確です。支払い能力に応じて負担を課す応能負担です。すべての所得を合算し、総所得に応じて税率を上げる総合累進課税が本来の姿。
日本では1989年の消費税導入以来、個人・法人所得税の減税と消費税の増税を基本とする税制改革が進められました。所得の再分配の真逆をいく税制です。
医療費や介護料が増えれば、本来なら税金で補てんすべきところを保険料アップで対応する。自己責任の導入。許されません。
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