尾形修一の紫陽花(あじさい)通信

教員免許更新制に反対して2011年3月、都立高教員を退職。教育や政治、映画や本を中心に思うことを発信していきます。

熊本県教委の責任

2011年05月08日 23時25分58秒 |  〃 (教員免許更新制)
 教員免許更新制度が始まって、全国最大の9人の免許失効者を出した熊本県。
 熊本県教育委員会の驚くべき無責任な対応が明らかになってきました。
 9人の中で公立は6人。高校で2人の失職がいる他、いまだ校種、職名不明者がいるようです。また、退職を選んだ方もいるようで、事実上の「失職者」はもっといるのではないかと思います。

 教員免許更新制度では、「35歳、45歳、55歳」時に、「更新講習を受け、合格」or「講習免除にあたる」or「(産休、海外派遣等の事情で)有効期間を延長する」、以上いずれの場合も、免許管理者(都道府県教委)に「申請」を行うことになっています。従って、免除になるべき人も申請し忘れたら失効します。もっと言うと、大学等で講習を受けても、最後に申請をしなければ失効します

 僕のように制度自体に反対で講習を受けなかった場合はともかく、講習を受けたり有効期間が延期になるべき人でも、申請しなければ失効するのです。そして、今回の熊本県の事例は、いずれも制度自体に反対で意図的に申請しなかったわけではなく、何らかの事情で「申請」がなされなかったということのようです。

 これは、はっきり言ってしまえば、県教委の重大な過失です。教員免許は個人の資格ですべて個人でやるということになっているから、申請しなかった本人が悪いというならば、それは間違いです。自動車免許の更新じゃないんだから、教員免許は単なる個人の資格ではありません。突然教師が「失職」してしまえば、次年度の学校体制が変わってしまいます。授業はもちろん、クラス担任、生活指導、部活動などに大きな影響があります。どこの県でも、12月までには転勤の希望を校長が把握し、新年になれば異動の事務作業を行っているはずです。その時点で、免許失効の可能性がある教員を教育委員会、および各校の管理職が確認し「早く申請するように」と指導していれば、この事態は防げています。

 他のどこの都道府県でも、恐らく1月の時点でチェックがあったはずです。それを「1月末まで」の申請期限まで何の連絡もせず、2月になってから突然「退職か失職か」を迫ったのが熊本県教委でした。これは人の人生を何と思っているのか、あまりにも無責任な対応で、常識的に考えておかしいですが、法的にも行政上の責任がありそうです。

 僕は前から、この制度は「頑張っている先生ほどバカを見る」と主張してきましたが、それがまさに証明されてしまったことにがく然としています。僕はわざと申請しない人はいるかもしれないと思いましたが、申請しなかったミスが起こるとは思っていませんでした。中には1月末に校務多忙で申請に行けなかった人もいるのではないでしょうか。教員免許更新制度とは、教師は学校で頑張るより、事務的な手続きの方が大切なんだという制度です。それが目的なんでしょうか?
コメント
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