毎日のように映画を見てるけど、古い映画のことをいちいち書いてても仕方ない。これは新作。
「キラー・インサイド・ミー」。原作ジム・トンプスン、監督マイケル・ウィンターボトム、主演ケイシー・アフラック、ジェシカ・アルバ、ケイト・ハドソン。みんな無名の人ではないんだけど、まあ、一般的には、誰それ?でしょうか。
僕は原作が大好きなので見た。1990年に河出文庫で「内なる殺人者」として翻訳。その年の「このミステリーがすごい」に入選した。その後「ポップ1280」が「このミス」1位になった年もある。現在は扶桑社ミステリー文庫から「おれの中の殺し屋」の題名で出てる。ジム・トンプスンはほとんど扶桑社が出しており、扶桑社はあまり買いたくないわけだが、ジム・トンプスンとあれば致し方ない。
原作者は50年代からアメリカのペーパーバックでミステリーを量産し、そのまま忘れられていた。その後再評価が進み、「ダイムストアのドストエフスキー」と言われたりする。ダイムストアというのは、ダイム(10セント)で支払える程度の安雑貨店のことらしい。昔は、映画化された「ゲッタウェイ」ぐらいしか翻訳されてなかったが、90年以後に日本でも紹介が始まった。その中でもこの「内なる殺人者」(という題名で読んだので、そう記す)は極めつけの傑作だ。スティーヴン・キングは「白鯨」「ハックルベリー・フィンの冒険」と肩を並べる作品と言ってるらしい。そりゃあ、ほめ過ぎだよ。
なんせ、暴力あり、セックスありのB級エンターテインメントである。しかし、読後に人間とは深いぜというザラザラとした感触が永久に残り続ける。そういうB級のテイストがこの映画には満ちていて、冒頭のタイトルバックからたまらん。西テキサスの油井しかないような町の保安官助手。運命の女と出会い、転落への道をたどっていく。原作が好きな人には完璧に満足できる出来だ。乾いた風土を写し撮る撮影もいい。主役も悪くないが、なんといってもバッドガール役のジェシカ・アルバが素晴らしい。
監督のマイケル・ウィンターボトムはイギリス人だが、よくアメリカの田舎のムードを出してる。グアンタナモやボスニア戦争を描く社会派みたいなのも作りながら、「ひかりのまち」「24アワー・パーティ・ピープル」とか何でも作れちゃう監督。これじゃ、器用貧乏で個性がなくなるが、だからこそB級にしてディープなこういう映画を作れるなんだろう。東京「ヒューマントラストシネマ渋谷」他で公開中。
ついでに書くと、ジム・トンプソンと表記すると、1967年にマレーシア・カメロン高原で謎の失踪をとげたタイのシルク王である。松本清張「熱い絹」のモデル。
「キラー・インサイド・ミー」。原作ジム・トンプスン、監督マイケル・ウィンターボトム、主演ケイシー・アフラック、ジェシカ・アルバ、ケイト・ハドソン。みんな無名の人ではないんだけど、まあ、一般的には、誰それ?でしょうか。
僕は原作が大好きなので見た。1990年に河出文庫で「内なる殺人者」として翻訳。その年の「このミステリーがすごい」に入選した。その後「ポップ1280」が「このミス」1位になった年もある。現在は扶桑社ミステリー文庫から「おれの中の殺し屋」の題名で出てる。ジム・トンプスンはほとんど扶桑社が出しており、扶桑社はあまり買いたくないわけだが、ジム・トンプスンとあれば致し方ない。
原作者は50年代からアメリカのペーパーバックでミステリーを量産し、そのまま忘れられていた。その後再評価が進み、「ダイムストアのドストエフスキー」と言われたりする。ダイムストアというのは、ダイム(10セント)で支払える程度の安雑貨店のことらしい。昔は、映画化された「ゲッタウェイ」ぐらいしか翻訳されてなかったが、90年以後に日本でも紹介が始まった。その中でもこの「内なる殺人者」(という題名で読んだので、そう記す)は極めつけの傑作だ。スティーヴン・キングは「白鯨」「ハックルベリー・フィンの冒険」と肩を並べる作品と言ってるらしい。そりゃあ、ほめ過ぎだよ。
なんせ、暴力あり、セックスありのB級エンターテインメントである。しかし、読後に人間とは深いぜというザラザラとした感触が永久に残り続ける。そういうB級のテイストがこの映画には満ちていて、冒頭のタイトルバックからたまらん。西テキサスの油井しかないような町の保安官助手。運命の女と出会い、転落への道をたどっていく。原作が好きな人には完璧に満足できる出来だ。乾いた風土を写し撮る撮影もいい。主役も悪くないが、なんといってもバッドガール役のジェシカ・アルバが素晴らしい。
監督のマイケル・ウィンターボトムはイギリス人だが、よくアメリカの田舎のムードを出してる。グアンタナモやボスニア戦争を描く社会派みたいなのも作りながら、「ひかりのまち」「24アワー・パーティ・ピープル」とか何でも作れちゃう監督。これじゃ、器用貧乏で個性がなくなるが、だからこそB級にしてディープなこういう映画を作れるなんだろう。東京「ヒューマントラストシネマ渋谷」他で公開中。
ついでに書くと、ジム・トンプソンと表記すると、1967年にマレーシア・カメロン高原で謎の失踪をとげたタイのシルク王である。松本清張「熱い絹」のモデル。